日本の戦後処理 各国との関係の簡単なまとめ


日本の戦後補償条約一覧(Wikipedia)に掲載されている中より、近隣主要国との主な戦後補償について簡単にまとめてみた。

目次

連合国

日本は、1951年の「サンフランシスコ講和条約(平和条約)」を締結し、戦争状態が終了した。

第1章では「日本国と各連合国との間戦争状態は、第二十三条の定めるところによりこの条約が日本国と当該連合国との間に効力を生ずる日に終了する。」と終戦を定義している。

また、第3章では「連合国としては、日本国が主権国として国際連合憲章第五十一条に掲げる個別的又は集団的自衛の固有の権利を有すること及び日本国が集団的安全保障取極を自発的に締結することができることを承認する。」 として、集団的自衛権の行使を認めている。

さらに、第4章では「日本国は、極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の裁判を受諾し、…」として、日本は国際法廷を受け入れている。

戦争賠償については、第5章で 「日本国によつて損害を与えられた連合国が希望するときは、生産、沈船引揚げその他の作業における日本人の役務を当該連合国の利用に供することによつて、与えた損害を修復する費用をこれらの国に補償することに資するために、当該連合国とすみやかに交渉を開始するものとする。」 「この条約に別段の定がある場合を除き、連合国は、連合国のすべての賠償請求権、戦争の遂行中に日本国及びその国民がとつた行動から生じた連合国及びその国民の他の請求権並びに占領の直接軍事費に関する連合国の請求権を放棄する。」 として、損害の修復役務の供与は2国間交渉で取り決めるが、戦争賠償は不要であると規定している。

また、日本国が海外の占領地・植民地に有していた資産は全て連合国に接収され、その接収金額の一部は国際赤十字を通して、戦時捕虜に対する個人補償金として支払われた。(29,000円相当を1956年と1961年の2回に分けて支払われたらしい。)

ただし、中国と朝鮮については 「この条約の第二十五条の規定にかかわらず、中国は、第十条及び第十四条(a)2の利益を受ける権利を有し、朝鮮は、この条約の第二条、第四条、第九条及び第十二条の利益を受ける権利を有する。」と記され、この条約では規定されなかった。

賠償の請求権については、戦時賠償は請求権を放棄、物的被害補償については2国間条約で決着するという決定方法が示されている。

サンフランシスコ講和条約 (全文)
右派による講和条約の解説

アメリカ合衆国(連合国)

アメリカ合衆国とは、サンフランシスコ講和条約にて解決ずみという両政府の立場が一致している。(戦時賠償は放棄)

参考資料

中華民国(連合国)

中華民国とは1952年の「日華平和条約」により、戦争状態が終結した。また、1952年の「日華平和条約議定書」により、「中華民国は,日本国民に対する寛厚と善意の表徴として,サン・フランシスコ条約第十四条(a)1に基き日本国が提供すべき役務の利益を自発的に放棄する。」となっており、損害賠償についても請求権を放棄している。

日華平和条約および同議定書 (全文)

また、1978年の「日中共同宣言」において、「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」と宣言した。

中華人民共和国

中華人民共和国とは1978年の 「日中平和友好条約」により、戦争状態が終結した。 また、賠償請求権については、同じく1978年の「日中共同声明」により、「日本国と中華人民共和国との間のこれまでの不正常な状態は、この共同声明が発出される日に終了する。」と宣言し、「中華人民共和国政府は、中日両国国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する。」とした。

日中平和友好条約(全文)
日中共同声明(全文)

大韓民国

韓国とは、1965年の 「日韓基本条約の関係諸協定,日韓請求権並びに経済協力協定」において、賠償額を定義している。「千八十億円(一◯八,◯◯◯,◯◯◯,◯◯◯円)に換算される三億合衆国ドル(三◯◯,◯◯◯,◯◯◯ドル)に等しい円の価値を有する日本国の生産物及び日本人の役務を,この協定の効力発生の日から十年の期間にわたつて無償で供与するものとする。」 「七百二十億円(七二,◯◯◯,◯◯◯,◯◯◯円)に換算される二億合衆国ドル(二◯◯,◯◯◯,◯◯◯ドル)に等しい円の額に達するまでの長期低利の貸付け」を行うことを取り決めた。

また、「両締約国は,両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産,権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が,千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第四条(a)に規定されたものを含めて,完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する。」として、全ての賠償請求権が決着したことが定義された。

日韓基本条約の関係諸協定,日韓請求権並びに経済協力協定 (全文)

朝鮮民主主義人民共和国

国交なし。

フィリピン

1956年「日本国とフィリピン共和国との間の賠償協定」により、賠償金1,980億円、経済援助900億円を20年間で支払うことを約束。

インドネシア

1958年「日本国とインドネシア共和国との間の賠償協定」により、賠償金803億円、経済援助1,440億円を12年間で支払うことを約束。

マレーシア

1967年「日本国とマレイシアとの間の千九百六十七年九月二十一日の協定」により、賠償金29.4億円、および貨物千2隻を支払うことを約束。

シンガポール

1967年「日本国とシンガポール共和国との間の千九百六十七年九月二十一日の協定」により、賠償金29.4億円、通信基地の建設などを支払うことを約束。

ビルマ

1955年「日本国とビルマ連邦との間の賠償及び経済協力に関する協定」により、賠償金72億円、経済援助18億円を10年間で支払うことを約束。

ベトナム

1960年「日本国とヴィエトナム共和国との間の賠償協定」により、賠償金140億円を5年間で支払うことを約束。

また、1960年当時、分裂状態にあった北ベトナムに対する賠償として、1972年に経済援助85億円相当を追加することを約束。

その他参考資料