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2011年2月、大阪である防災ダム計画が建設途中で中止された。その時に報道された情報に基づいて、ダム・河川改修・移住についてコスト比較を行なってみる。
建設業界ニュース[1]によれば『ダム建設継続は、総事業費128億円で58億円が執行済み。残事業費は70億円(ダム本体47億円、付け替え道路23億円)。対して、河床掘削は総事業費110億円(執行済みのダム事業64億5,000万円含む)』とのことである。このダムの経緯は産経新聞[2]によれば『ダム計画が持ち上がったのは、流域の約530戸が浸水した昭和57年の洪水がきっかけ』とのことである。
さて、政官業 プラス マスコミも含めて検討対象は「土建施設」を造ることを前提としているのだが、移住というのも検討すべきではないだろうか。
そこで、移住費用を試算するにあたって、この地区(大阪府和泉市)の2LDK賃貸住宅の平均賃料は、goo賃貸マンションの家賃相場[3]によれば5.7万円とのことである。また、世帯主に生活保護給付で手を打つ場合は、その費用はWikipedia[4]によれば5.5万円となっている。
これらのデータを元にまとめたのが上の図なのだが、ここには土建施設の場合の維持費が含まれていない。維持費を含めれば違う数字になるだろう。
現代ビジネス[5][6]によれば近い将来、防災のための土建施設だけではなく道路や鉄道などの輸送インフラ、上下水道インフラから学校から病院まで、全てが維持できなくなると予想されている。
そこで欧米で実践されつつあるのが、上の図で示したようなコンパクト・シティという考えだそうだ。
消費税を20%に引き上げれば出来るんじゃないかなどという妄想は、多分通用しないだろう。というのは、JPモルガン証券の北野氏の試算[7]によれば近い将来、老齢給付のための租税負担率が(例えば所得の)3分の2にも達するとされている。
もちろん、防災を含め各種インフラの維持コストは、この租税負担率に上乗せされる。現状と同じレベルで過剰インフラ建設と、過剰レベルの維持管理をしていると、租税負担率が100%に接近していくことは明らかで、ラッファー曲線[8]を持ち出すまでもなく急速に破綻する。
この記事の結論として、防災施設を建設し維持するより、地域から撤退すべきだとする。防災施設が近い将来維持できなくなる経済的な理由と共に、人口密度を上げ無駄な交通や流通を削減する効果も合わせて大幅なエコ(省エネ)が実現できるということがある。
例として取り上げた大阪のダムの例だが、このダム、あるいは河川改修の目的とされている浸水を防ぐべき家屋数は、自民党 小西議員の議会答弁[9]によれば、『浸水家屋31戸、護岸崩壊26箇所などの被害があったとの記録があると聞いているが、上流部では、家屋等の浸水の公式記録がないとされている。もし、上流部の浸水がなかったとしたら、これまで検討されてきた50ミリ対策が必要なのか疑問が生じる。』とのことである。救うべきは最大30軒の家屋、もしかするとその記録すら怪しいとのことだ。
防災は土建利権を維持するための方便とは、まさにこのことだ。