アルプスから地中海、ブルターニュからベルギー 旅日記
   : ジュネーブ - ユングフラウ

June 15, 2002 (Saturday)

Geneva - SWITZERLAND (ジュネーブ - スイス)

20時50分、日暮れ直後のジュネーブ空港に到着。なんだか小さい空港である。今乗ってきた飛行機以外には、スイス航空(倒産して名前が変わったかも?)の小型航空機が数機いるだけの小ぢんまりした空港だ。
入国審査は、パスポートをチラッと見てそれでおしまい。(スタンプは免除された。)
バックパックをピックアップして、駅へ。ほとんどの客は観光バス(団体観光客)かタクシー乗り場へ向かっているので、国鉄駅は寂れている。切符売り場の窓口は閉まり、すでに無人駅状態。自動券売機らしきものがあったが、今ATMで出金したばかりの20CHFでは買えない(硬貨かICクレジットカードのみ)。その上、ジュネーブ中央駅の表示自体を出すことすら出来ない。いわゆる長距離用の券売機だろう。

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ジュネーブ・コルナヴァン駅に到着した EN311列車
EN311 arrives at Geneva Cornavin station

列車の行き先表示も、えらく遠くの地名ばかりで、肝心のジュネーブ市内に行くにはどの列車なのかすら分からない。目の前に有る2台のエスカレーターの左側を降りてみる。列車が停まっていたので、掃除している係官に聞いてみると、となりのプラットホームらしい。全く英語が通じないのにもこれまた驚く。(フランス語のみ)
その、隣のプラットホームに行くと、ローマ・テルミニ駅行きの列車が停まっている。ちょうど車掌がやってきたので、この20CHFで切符を売って欲しいと頼むと、暫く鞄の中を探した後、(お釣りが無いのか?)無料で乗っていけといわれる。21時09分に空港を出発した列車は、超スロースピードで走り、5分ほどでジュネーブ中央駅(Gare Cornavin)に到着。すぐ横にはSNCF(フランス国鉄)のTGVが停まっている。

今日はユースホステルを(IBN:インターネット)予約してきた。住所のみ分かっている。住所は「30 rue Rothschild」。駅構内の地図を見てもこの通りは発見できない。予約票には駅の北東の方向1km程の所にあるとの情報だけが得られてので、コンパスを頼りにそちらの方向に向かう。(列車の進行方向、向かって右側の駅正面出口を出て、左方向に歩いてゆく) 途中で、何人かの住民と思われる人物に道を尋ねながら、 20分程度で到着。まだ、21時前というのに、活気がぜんぜん感じられない街だ。何はともあれ、チェックイン。ロビーの自販機のコーラの値段がべらぼうに高い(確か2.5SFr程度だったと思う)のを見て、げんなり。貧しい旅になりそうな予感。シャワーを浴びて、寝る。

June 16, 2002 (Sunday)

Geneva - SWITZERLAND (ジュネーブ - スイス)

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早朝のため誰も歩いていない 市庁舎前通り
Rue de l'Hotel de Ville , early in the morning

床の音がギシギシいっているのが気になったのか、時差の加減か、眠りはとても浅かった。(NOAAデータでは、最低気温 18℃)5時30分起床。6時ごろ、外に出てみる。空はどんより曇り空。所々にうろこ雲のような間から、朝焼けがのぞいている。ユースホステルのすぐ横のバス停を通り越して、公園を抜けて少し行くとレマン湖 (Lake Leman) のほとりに出る。湖をはさんだ向こう側に雪を抱いた山並みがはるか彼方に見える。モンブラン(?)だろうか。(方向的にはあっている。) 6時30分にユースホステルに戻り、朝食を食べる。何人かの韓国人の女の子を見かける。そういえば、韓国の大学生は、もう夏休みの時期だ。ユースホステルをチェックアウトし、バックパックを背負って、再び湖畔の道 (Quai W.Wilson) へ。南(旧市街や駅のある方向)に向かう。ちらほらとジョギングをする人や、早起きの観光客が歩いている。20分程度歩くと、島に続く橋のようなものが有る。料金所らしきものがあるが、早朝のため勝手に入ることが出来る。(橋を渡って、先端近くまで行ったが、特に何があるというわけでもなさそうだ) さらに南下すると、大きな道路が湖の出口の川を横切っている。名前を「モンブラン橋 (Pont du Mont Blanc) 」。たいそうな名前である。橋を渡り、人っ子一人歩いていない旧市街へ。軒を連ねているファッション関連の店は、全てシャッターを下ろしている。こんな物価の高い国に来て買い物する人なんて居るのかねぇ。(まあ、いるんだろうな)

坂道を登ってゆくと、教会の尖塔が見える。サン・ピエール大聖堂(Cathédrale St. Pierre)だ。坂道を登っていくと、逆に教会から遠ざかっていく。たどり着いてみると、大聖堂という割には小ぢんまりしている。
7時30分、カーン と教会の鐘が鳴る。早朝で中には入れないので、そのまま坂を下り、無人の繁華街へ。無人のトラムが、ガタゴト音を立ててゆっくりと通り過ぎてゆく。モンブラン橋を再び渡る。湖と反対側にROVSSEAV (?) の坐像がある。有名人か? この場合、V は U に読み替えると ROUSSEAU。そう、あのJean-Jacques Rousseau (哲学者 ジャン・ジャック・ルソー 1712 - 1778)。フランス人じゃなかったかな。

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ローヌ川の起点にある ジャン・ジャック・ルソーの像
Statue of Jean-Jacques Rousseau

橋を渡りきると、今度はモンブラン通り。駅まで歩いてゆく。

切符売り場へ行き、Half Fare Travel Card (切符に書かれている名称は Abonnement 1/2 Prix/Preis) と Interlaken Ost (インターラーケン・オスト)行きのチケットを買う。前者が99CHF、後者が31.5CHF。
8時30分発のSt. Gallen 行き IC715に乗る。2階建てのきれいな列車だ。暫く走ると、雲が切れ、所々から晴れ間が出てくる。車窓は、軽工業の工場や住宅、ブドウ畑が交互に現れる。湖の向こう岸もはっきり見える。欧州地図によれば、向こう岸にエヴィアン=レ=バン(Évian-les-Bains)という気になる名前の町がある。ミネラルウォーターのEvianの生産地だろうか。(実際、そうらしい。Wikipediaの記事) しかしながら、アルプスの水を標榜している割には、湖の向こう岸に見える山々はそんなに高くは無いぞ。ローザンヌ(Lausanne)を過ぎて暫くすると、ドイツ語圏に突入。車窓に見える工場の看板も、○○○ AG. と、ドイツ風になり、アパートの建て方も、フランス風からドイツ風にがらっと変わる。同じ国の中で、なかなかおもしろい現象だ。

Bern - SWITZERLAND (ベルン - スイス)

10時13分、ベルン(Bern)駅到着。出発案内の掲示板(黄色い方)で、次の列車を確認する。11時26分が次のインターラーケン行きだ。(確実に、 1時間に1本走っているので、スイスは旅行しやすい) 出口表示が分かりにくく、駐車場に迷い込んだ末、外へ。かんかん照りの蒸し暑い天気だ。およそ、スイスの気温とは思えない。(NOAAデータでは 最高気温 29℃)
あらかじめ、掲示板(なぜか2ちゃんねる)で収集していた情報をもとに、駅から ニューデック橋に至るメインストリート沿いに観光し、大聖堂を見ようと思う。バックパックを背負たフル装備で観光。さすがに、疲れが倍増という感じだ。

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ベルンの目抜き通り 「クラム通り」 。通りの中央に噴水が点在
Main Street "Kramgasse"

もう10時だというのに、メインストリートは、ジュネーブの時と同じく、ほとんど無人。(日曜日なので、全ての店が閉まっている) 道を塞ぐような門を通り抜け、旧市街の中心部を目指して、10分ほど歩く。有名な時計塔(Zeitglockenturm) は修復作業真っ盛り。半分ほど足場とシートに覆われている。大きさや、豪華さでは、プラハの時計塔に負けている。時計塔の下を通り抜けると、世界遺産のアーケード街。これのどこが世界遺産? という感じだ。単なる、観光客向けの店や高級品店が軒を連ねる通りと言うだけなのだが。 まあ、道の真ん中に、所々に置かれている噴水のことだろうか?

アインシュタインの家(Einstein Haus)を見つける。特殊相対性理論の生みの親というか、熱核爆弾の生みの親というか... まあ、物理学の神のアインシュタインが特許局に勤めていた頃の家ということらしい。
ニューデック橋(Nydeggbrücke)の近くまで行って(渡らなかったことを後悔...)、1本南側のユンケル通り(Junkern-gasse)を駅のほうに戻る。途中、Cathedral (カテドラル)を見る。尖塔の高さは、なんと100mらしい。正面の門はしっかり閉められており、中には入れないようだ。広場の片隅に、モーセの像(出エジプトのプタハ・モーセ)。

さて、列車の発車まで、残すところ20分。途中のマクドナルドに寄り、昼食を購入して駅へ急ぐ。列車はまだ来ていなかった。ベンチに座って、ハンバーガーを食べて、さてフレンチフライを食べようかと思った瞬間、列車が到着。急いで乗り込む。

Interlaken - SWITZERLAND (インターラーケン - スイス)

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インターラーケン市街地からユングフラウ連山がチラッと見えた

ジュネーブ 〜 ベルン の IC と違い、満員。階段付近に、席を見つける。(ほとんどの客は、Spiez までに下車していく) 11時26分出発した列車は、12時10分、インターラーケン西駅(Interlaken West)に停車。私の乗っていた車両の私以外の乗客は全て下車。列車は、超スロースピードで走り、コバルトブルーの川を渡り、インターラーケン東駅(Interlaken Ost)に到着。ここまで来ても、まだ蒸し暑い。(NOAAデータでは、最高気温28℃) さすが、熱波(Heat Wave)が来襲している異常気象だけは有る。

ここで、ユングフラウ鉄道パス(Jungfrau-bahnen-pass)を 120 CHFで購入。これで、全ての山岳鉄道とリフト類が乗り放題! さぁ、乗りまくるぞ(謎)。
12時35分のグリンデルワルト行きの列車を見送って、インターラーケンの町を少し見て歩く。West駅の方へ向かって行くと、友好の庭(大津市長山田豊三郎)と書かれた碑のある日本風庭園がある。背後に小さな教会の尖塔が見える辺りが、のどかなスイスらしい。少し行ったところに、巨大な芝生の広場がある。南側には、雪を頂いた高山が見えている。これから登るベルナー・オーバーランドの山々だ。山の方向は半分ほど雲に覆われている。これは、まずい事態かもしれない。

駅に戻るが、まだ30分以上時間が余っている。駅の反対側の出口を出ると、船着場。桟橋の屋根の上に、なぜか、巨大な牛の模型。謎である。川は、列車から見たとおりコバルトブルー。川に沿って、ぶらぶら歩く。

Grindelwald - SWITZERLAND (グリンデルヴァルト - スイス)

列車は、13時35分に定刻どおり出発。前半分がラウターブルネン(Lauterbrunnen)行きで、後ろ半分がグリンデルワルト(Grindelwald)行き。平地はかなりのスピードで走ってゆくが、2駅目のZweilutschinen駅からはのろのろ運転になる。(一部ラックレール) 最初曇っていた天気も、吹き降りの雨となる。山を見に来て、吹き降りの雨とは最悪のパターンとなりそうな予感。14時10分、グリンデルワルト駅(Grindelwald)に到着。外は、小雨。寒くも無ければ、暑くも無い、ちょうどいい気温だ。コインロッカーにバックパックを預けて(3CHF)、次の行動を考える。駅舎内に設置されているライブカメラで、山頂の風景を眺めていると、全域で雨が降っているわけではなさそうだ。
当初の計画どおり、メンリッヒェン山(Männlichen)に登ることにする。(ロープウェーで)

Mt. Männlichen 2,343m - SWITZERLAND (メンリッヒェン山 2,343m - スイス)

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メンリッヒェン行きのゴンドラ (ふもとのグリンデルワルトが見えている)
Gondel-bahn to Männlichen . (village over there is Grindelwald)

14時19分のクライネ・シャイデック(Kleine Scheidegg)行きに乗り、次のグルント(Grund)というスイッチバックの駅で降りる。外の雨もやみつつある。ゴンドラ・リフト (Gondel-bahn) の駅へ。巨大な駐車場にはほとんど車が停まっていない。すいてそうな予感。ゴンドラに乗り込む。前後のゴンドラには、客は乗っていない。かなりの勢いで、ゴンドラは上へと登ってゆく。グリンデルワルトの村が急速に遠ざかってゆく。空が晴れてきた。時折、コロン・コロンと牛か羊の鈴の音が響いてくる。牧草地と杉林を抜けて、山岳地帯へ。まだ、雪が所々に残っている。付近には、業務用の短距離のゴンドラが並行して走っている。(が、動いてはいない)

14時40分に出発したゴンドラは、15時10分に終着駅に到着。さすが、ヨーロッパ最長のゴンドラだけは有る。6.2kmあるらしい。標高差は1283m (2225m - 942m)。さすがに、下界の「熱波」はここまでは感じられず、気持ちよい涼しさだ。

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メンリッヒェンの登山道沿いには一面に小さな花が咲いている
Many flower alongside toward Männlichen peak

日本人団体客10人程度が、ゴンドラ駅の横のレストランにたむろしているのと、ほんの数人のヨーロッパ人らしき人がいるだけ。やはり、山はこのようにすいていないと雰囲気が出ない。
東に少し歩くと、スイス国旗が立っている絶壁の上に出る。遥か下には、ヴェンゲン(Wengen)の町が見える。そこに向かって、傍らのロープウェーの駅から、まるで落下するようにゴンドラが下ってゆく。まるで、エレベーターのようだ。さて、すぐ南側に見える丘(Männlichen-Gipfel 山頂。標高2343m)に登ろうと出発。緩やかな道の先には、ほんの数人の登山客がいるだけ。草原に生える高山植物の花を撮影したり、下界の写真を撮影しながら、のんびりと山頂を目指す。約20分で標高差118mを登り、山頂に到着。
ベルナー・オーバーランドの代表的3山であるアイガー(Eiger , 3970m)、メンヒ(Mönch , 4099m)、ユングフラウ (Jungfrau , 4158m) がすぐそこに見える。すぐそこといっても、最も近いアイガーまででも、6.8km程ある。(ユングフラウは手前のTschuggen (2520m) と Lauberhorn (2472m) にほとんど隠れているが...)

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メンリッヒェンから望む アイガー(左)、メンヒ(中央)、ユングフラウ(右)
手前の黒い山はチュッゲン(左)、ラウバーホルン(右)とゴンドラ駅
Eiger (3970) , Mönch (4109) , Jungfrau (4158) from Männlichen

さて、山頂で暫く休憩した後、下山。向こうから犬が走ってきて、傍らを駆け抜けて(坂道のため、歩き抜けて?)行く。さすがスイス人、犬の散歩もアルプスということか。その辺に糞を撒き散らすんじゃないぞと思ってみたりする。

帰りは、Grindelwald (グリンデルワルト) と反対側のヴェンゲン(Wengen)へ向かうロープウェー (ルフト・ザイルバーン Luft-seilbahn)に乗って降りる。こちらは、ゴンドラで無いので発車時刻を待つ必要がある。時刻表では15分おきに出ているようである。ロープウェーはまるで谷底に吸い込まれるように、まっさかさまにヴェンゲンの町目指して下ってゆく。標高差 約 930m を約7分ほどで下ってしまった。降下速度 130m/min。これは、中層ビルに採用されている中速度エレベータに相当する。

Wengen - SWITZERLAND (ヴェンゲン - スイス)

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ヴェンゲン駅に入ってきたクライネ・シャイデックからの列車
Train from Kleine-Scheidegg at Wengen station

登山電車の駅へ行ってみると、列車は出たばかり。暇つぶしに町をぐるっと巡ってみるが、ホテルや飲食店が駅の周辺に集まっている以外、特に何かあるというわけではない小さな町。駅の売店でアイスキャンデー(2.7CHF)を買って、ベンチに座って列車を待つ。16時30分発の列車で、クライネ・シャイデック(Kleine Scheidegg)へ向かう。車内は、おばあさんが1人と私の2人だけ。この路線は、クライネシャイデックまで全てアプト式(ラック・レールで登る方式)だ。歯車が噛みあう「グォロ・グォロ」という低いうなり音を立てて、快調に山を登ってゆく。車窓には、草原の中に家がぽつぽつと建っている典型的な「スイス的景色」。のどかだ。途中、数駅停車したが、乗降は無かった。

17時00分、クライネ・シャイデック(Kleine Scheidegg)に到着。グリンデルワルト方面へ下る列車や、ユングフラウ方面へ登る列車の乗換駅。目の前にアイガー、メンヒ、ユングフラウの3山が迫っている。何編成かの登山列車が、のろりのろりと、ユングフラウ目指して登ってゆくのが見える。列車ごとに、デザインが全く違うのはどこか変だ。
同じプラットホームの、グリンデルワルト寄りに停まっている列車に乗り込む。列車は、満員。すぐに発車。アイガーの絶壁のすぐ下を、どんどん下ってゆく。さすがに落石やなだれが多いのか、かなりの区間が防雪トンネルで覆われている。暫くすると、杉林に入る。17時40分、グルントでスイッチバックし、グリンデルワルト(Grindelwald)に17時45分に到着。
昼過ぎに到着したときは、小雨が降っていたが、今はすっかり晴れている。

Grindelwald - SWITZERLAND (グリンデルヴァルト - スイス)

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夕日に染まるアイガー北壁 , グリンデルワルトのYHより撮影
Eiger North Wall turned red by sunset , view from Grindelwald YH

コインロッカーから荷物をピックアップし、ユースホステルへ。駅前にYHを示す矢印が出ている。そちらの方向に暫く(下り坂を)歩いてゆく。5分くらい行くと、民宿の壁に、山の方向を指した看板が再び出ている。道をどんどん登ってゆくと、本当の山道に。本当にこれであっているのか、心配になるが、すぐ先に再び小さな矢印看板が... すごいところに有るYHのようだ。
息を切らせて、汗びっしょりになり(その辺りの農家や民家と同じような建物の)YHの裏口に到着。インターネットで予約した番号を伝え、チェックインする。部屋に入ると、窓からはアイガー北壁が目の前に見える。すばらしい景色だ。
のどが渇いたので、洗面所の水をペットボトルに移し替えて飲む。さすが、アルプスの水だけはある。氷のように冷たくおいしい。(夕食にも、この水道水に炭酸を加えたものが出てきた)

June 17, 2002 (Monday)

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カシミール3D + USGS GTOPO30 データによるシミュレーション
上の地図の左上あたりの上空から見た場合

First, Bachalpsee - SWITZERLAND (フィルスト、バッハアルプ湖 - スイス)

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グリンデルヴァルトからフィルストへ向かうゴンドラ
Gondel-bahn to First

6時起床。開け放した窓の外を見ると、アイガーの頂上に朝日が当たり始める。昨日は、雲がまとわりついていた ヴェッターホルン(Wetterhorn , 3701m) の周りを含め、空には雲ひとつ無い。(Wetterhorn が雲に覆われていないことは、めったに無いらしい)7時15分、朝食を食べ外へ。YHの職員に、フィルスト行きのゴンドラ乗り場への近道を聞き、テラッセンヴェッグ(Terassenweg)沿いに行く。かなりアップダウンの激しい道だが、自転車に乗っている小学生には驚く。実用性あるのかな?
20分程度、民家や農家の間を抜けて歩くと、ゴンドラのワイヤーの下に出る。ゴンドラは、まだ動いていない。草原の中に道を見つけ、下っていくと、ゴンドラの架線から離れてゆく。適当に農家の軒先などを迂回して、何とかゴンドラの駅に到着。

8時35分、動き出したばかりのゴンドラに乗る。客はまだいない。

ゴンドラは、ゆっくりと草原と杉林の上を通り過ぎてゆく。所々に、牛や羊が放牧されているのが見える。こういう牧草だけを食べているところでは、狂牛病は起こらないのだろうか?

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フィルストから見たアイガー稜線、ユングフラウ、シルトホルン
Eiger North Wall, Jungfrau, Schilthorn , view from First

昨日から、鼻と目が「むずむずと」すると思ったら、通り過ぎてゆく杉をよく見ると、"花粉全開"である。さすが、高原の国。日本とはスギ花粉の飛散時期が違うのである。
途中、2箇所の中継駅(セクション)を通り過ぎる。冬は、ここで降りて、スキーをする人もいるのだろう。今は、Nicht Unsteigen と書かれている。(日本語でも書かれているところが、情けない。) 2箇所目の中継駅の Grindel の脇には、人工降雪機が数台ひっそりと置かれている。こんなところで、人口降雪? そこまでして、スキーする価値あるのか?

2箇所目の中継駅を過ぎると、急傾斜を登り始める。眼下に見える滝の真上を通過して、9時、終点(2167m)に到着。所要時間も、標高もメンリッヒェンのゴンドラとほぼ同じ。駅の建物を出ると、数人のハイキング客がいるくらい。全ての人が、下りの道(Grose Scheidegg 方面)を進んでゆく。と、いうことで、人気の無い上への道(Bachsee 方面)へ向かう。老夫婦が、標識も無い道を降りてゆくが、その方向に何かあるのだろうか?

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氷結したバッハゼーの向こうに見えるシュレックホルン (左中央)
フィンスターアールホルン(中央右奥)
Schreckhorn (right) , Finsteraarhorn (Center Behind) from Bachsee

しばらく行くと、所々に残雪が道に迫ってきている。標識では バッハ・ゼー(Bachsee)まで歩いて 50分掛かると書いてある。こんな、山岳地帯に、池か湖が本当にあるのだろうか。(ユングフラウ鉄道のパンフレットには、きれいな湖の写真が載っているので、それを期待している...)
道が二股に分かれる。傍らに、「wonderweg」と書かれた小さい標識を発見。標識のほうへ進む。崖沿いの、半分崩れかけた道から転落しないように注意して進む。(下の景色はきれい)さらに行くと、とうとう、道が残雪に覆われている。足跡がぽつぽつとあるので、それに沿って進むと、大き目の砂利道に出る。まだ、雪解けから間もないのか、この辺りの草は、茶色く枯れているところがほとんどだ。残雪から遠いところには、緑の草原も所々にあり、黄色や紫の花が咲いている。時折、巨大なねずみのような動物が、さっと道を横切る。人間に対して危害を加えるようなものではなさそうだ。
中間地点のギュミーヒュッテ(Gummihutte) (2247m) を通過し、約40分で、2265m地点のバッハ・ゼー(Bachsee)に到着する。(日本のガイドブックなどでは、バッハアルプゼーと書かれている)

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フィルスト から バッハゼー へ至る道。左上の山はレーティ山
Path from First to Bachsee , mountain at left is Reeti

さすがに、誰一人観光客が来ていないはずだけはある。湖は、ほぼ完全に凍っている。ほんの一部分、青緑の泥水のように溶けているところもある。40分も山道を歩いて、がっくり観光地である。
今回、持ってきている唯一のスイスガイドブックである、「Lonely Planet Walking in Switzerland」の「コピー」では、ここから、さらに1時間の「登山」でFaulhorn (2680m)に登るコースが書かれいてる。そこまで登っていると、昼からユングフラウに登る予定が狂ってしまう。緊急避難用の山小屋の前の石に座って、YHでペットボトルに詰めてきた水を飲み、元来た道を引き返す。

Mt. Jungfrau - SWITZERLAND (ユングフラウ山 4,182m - スイス)

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クライネシャイデックに登ってゆくWABの列車 BDeh 4/4 型
Train from Grindelwald to Kleine Scheidegg

フィルスト(First) のゴンドラ乗り場に到着。向こうから、日本人団体観光客が集団で歩いて来る。10時30分、ゴンドラに乗り下山。途中、1分ほどなぜかゴンドラが停止する。調子でも悪いのか? 11時、グリンデルワルト(Grindelwald)着。町の大通りを通って、鉄道駅へ。山沿いのTerassenwegを来た時は感じなかったが、鉄道駅とゴンドラ駅はそれなりに離れている。

11時19分発のクライネ・シャイデック(Kleine Scheidegg)行き列車に乗る。Grund を過ぎて、山を登り始めると、右手に昨日登った メンリッヒェン山(Mannlichen)がよく見える。周りの山と比べると、「丘」程度の低い山だ。列車は3編成が団子運転のようにしてクライネ・シャイデックを目指す。(単線なので、輸送力を確保するためにこうしているのだろう) 列車に乗らずに、歩いて下ってきている観光客もいる。グルント(Grund)まででも、かなりの距離だろう。11時54分、クライネ・シャイデック(Kleine Scheidegg , 2061m)に到着。

草原に出て、列車の写真を撮り、慌ててユングフラウ行きの列車に飛び乗る。12時04分発。こちらの列車は(立ち席なしの)超満員。欧州各国、北米、南アジアと各国からの観光客がひしめいている。(日本人は、どうも私一人) なぜか、停車駅案内に、日本語や中国語、韓国語がある。のろのろと、草原を登って行って、10分ほどで アイガーグレッチャー駅(Eigergletscher)に停車。ここから先は、鉄道パスが効かない別料金区間。往復で48CHF。すぐにトンネルに突入。
急勾配のトンネルの中を、かなりのスピード感で走り、12時25分、アイガーヴァント駅(Eigerwand)に停車。5分ほど停車するらしい。標高 2865mのアイガー北壁のすぐ内側にある駅。その北壁に窓が3つほど開けられている。YHから夜間見えた「光」はこの駅の照明だそうだ。とんでもない場所に駅を作ったものである。窓から、真下を見下ろす。約1000m下から、ほぼ垂直に立ち上がっている。こんなところ、よく登る人がいるもんだと、つくづく尊敬というか、感心する。

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Eigerwand (2865m)に到着した列車

再び列車に乗り、すぐに次の駅 アイスメア(Eismeer , 3160m)に 12時37分に到着。この駅は、東方向の展望窓があり、名前のとおり「氷河の海」が見える。単に一面の、ひび割れた雪原といえば、それまでである。
再び列車に乗り、暫く走ると、終点 ユングフラウヨッホ駅(Jungfraujoch Top of Europe) (3454m)に到着する。12時53分。何編成かの列車がまとめて到着するので、構内は観光客でごった返す。駅に隣接した巨大な建物(Jungfraujoch Complex, よくこんな建物を、3500mの高地に造ったものだ)には、みやげ物屋やレストランがある。(が、私には全く関係ないので、無視) エレベーターに乗り、外 (Plateau) に出る。かなり寒いかと覚悟したが、全く寒くない。この日の最高気温は、なんと 10.7℃(NOAAより得たSphinx 天文台の観測値)。(ちなみに、前日の最高気温は 3.9℃。6月の平均的な最高気温は0℃程度。これから考えると、今回の「熱波」の影響がいかに凄いかが分かる)

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スフィンクス天文台より ロッタルホルン(左)、ユングフラウ(右)
Rottalhorn (left) , Jungfrau (right) from Spinx

すぐ上の雪山の頂きに、スフィンクス(Sphinx)天文台が見える。案内図によると、あそこにも登れるはずである。再びエレベーターで駅に戻り、反対側へ向かう通路をどんどん行くと、別のエレベーターがある。3571mの(お手軽に行ける)最高地点に到着。天文台といっても、周りの通路が開放されているだけで、観測施設へのアクセスは、許されていない。ここからの眺めは、すばらしい。南には、アレッチ氷河(Aletsch-gletscher)が一面の雪原のように見えている。逆光で、向こうの方は光っていて全く見えない。南側には、クライネ・シャイデック方面のふもとの草原がきれいに見えている。すぐ西には、完全に雪に覆われたように見えるユングフラウ山の頂上が見えている。ユースホステルからは、チラッとこの頂上が見えていたが、近くで見ると、そのなめらかな(他の山は、ごつごつとした岩山の頂上)表面がきれいだ。

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岩山の左上にスフィンクス天文台が見える
Sphinx observatory deck is left top of mountain

こんな高いところにも、鳥がたくさんいる。黒い(カラスを一回り小さくしたような)鳥が、天文台のフェンスの接続部に1羽ずつとまっている。誰かが餌をやるのか? あるいは、ふもとの草原から上昇気流に乗って飛んできてしまったのか? 天文台の通路に現在の気温 3.6℃、風速 47km/h と出ている。(この後、7℃程さらに上昇したことになる)
エレベーターで通路に戻り、さらに進んでゆくと外に出る。ここも一面の雪。特に、何かがあるわけではないが、雪の上を歩けるという事くらいだろうか。駅に戻る途中、(日本の円形の旧式の)郵便ポストを発見。まさか、郵政省管轄ではないだろうし、何のためにこんなものを置いたのか、謎が多いユングフラウの建物だ。

14時の列車で下山。14時50分、クライネ・シャイデック(Kleine Scheidegg)到着。駅の屋外カフェでサンドイッチとジュースを食べる。20.8CHF。さすが山岳料金といいたいところだが、グリンデルワルトのレストランでもこんなものらしい。(スイスでは、この食事を除いて、YHかマクドナルドしか利用しなかったため、適正価格は分からない)

15時32分の列車に乗り、グリンデルワルトへ。私の足元に、巨大な犬が...。足を舐められる。犬にも、この眺めの良さは分かっているのだろうか? まあ、近くしか見てないだろうね。 16時15分、グリンデルワルト(Grindelwald)に到着。ユースホステルに戻り、休憩。

Grindelwald - SWITZERLAND (グリンデルヴァルト - スイス)

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グリンデルヴァルト近くの滝

YHのテレビのある部屋で休んでいるとき、スイス人の若い夫婦と「サッカーのワールドカップ」のことで話した。奥さんの方が、「日本はトルコを こてんぱんに打ちのめす(英語で ブラ〜〜スト! と表現)だろうね」と言っていた。韓国とイタリアはどうかな?と聞いたら、「イタリアは歴史も実力もあるので、負けるはず無い」そうだ。(結果は、18日の旅日記にて...) しかしながら、彼らドイツ系は 「トルコ」 嫌いですね。やはり、移民問題は結構深刻なのだろう。
それから、YHで「サイクリング・マン」と「こそっと」話題になっていたアメリカから来た老人に、日本人の知り合いと連絡が撮りたいので、メールを送って欲しい。と頼まれた。何でも、世界横断している日本人の久保さんという人で、ホームページを拝見すると、「すごい人」のようである。YHに置いてあるパソコンから、メールを送る。
夕食時刻をはるかに過ぎた時間にチェックインしてきた、韓国人大学生もすごかった。食費を浮かすため、数十個のインスタント・ラーメン(袋入り)を持っていた。ここ、グリンデルワルトにも1泊だけして、明日ユングフラウに登り、あわただしく次の町に移動するそうだ。1ヶ月で、西ヨーロッパの全ての国を回るために、経路上のYHの予約を全て取ってから旅行しているそうだ。ドイツ人顔負けの、凄い緻密な計画性と、忙しさ。

しかしながら、グリンデルワルトの宿泊は、ユースホステルが一番いいんじゃないかな。環境・景色・値段設定の全ての面で、駅近くの「高級な」ホテルに勝っていると思う。