モロッコとスペインの旅 : コルドバ

※ 未編集の旅行記です

December 28, 2005 (Wednesday)

Córdoba - Spain (コルドバ - スペイン)

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7時ごろ起床。窓から外を覗くと、曇り空のようだ。インターネットで調べたBBC天気予報では「霧」だったので、午後になり霧が晴れてくれるのを期待するしかない。

8時半ごろ、今日の観光に出かける。まずは、ホテルの近くにあるカフェに入り、朝食のトーストとカフェラテを注文(1.5ユーロ, 204円)。当地の人たちはバターを沢山付けるのか、山盛りのバターが皿に盛られてきた。

この街に来た最大の目的は、メスキータの見物。メスキータはイベリア半島がイスラム王朝により統治されていた時代、後ウマイヤ朝の初代アミール(君主)アブド・アッラフマーン1世(在位 756年 - 788年)の時代に造られたモスクを起源としている。その後、レコンキスタでイスラム勢力がカトリック勢力に破れ、13世紀にコルドバがカトリックのカスティーリャ王国に併合された後は、メスキータはカトリック教会に転用されたそうだ。巨大なイスラム礼拝堂のど真ん中が、カトリックの大聖堂に改築されている。また、ミナレットは鐘楼に転用されて、イスラムとカトリックがミックスされた妙な建造物になっている。

昨日の夕方と同じく、旧市街を囲む古代ローマの城壁沿いを歩き、アルモドバル門(Puerta de Almodóvar)から旧市街の路地をメスキータの鐘楼めがけて真っ直ぐに進む。

鐘楼の横にある免罪の門(Puerta del Perdón)からメスキータの中庭に入る。オレンジの木が植えられている庭だ。かつては、ここがモスクの清めの泉「ウドゥ」があった場所だ。門の内側、中庭に面して入場券売り場があるが閉店している。警備員に聞いてみると、10時までは入場無料だそうだ。入場料6.5ユーロだが、無料なのでちょっと得した気分だ。

建物の中に入ると、かなり薄暗い。無料の時間帯だから電気代をケチっていると思ったが、10時以降になっても薄暗いままだ。独特の色目の石で規則的な模様を描いている列柱の間は、かつての礼拝室だ。屋根を支える円柱は856本あり、25,000人が同時に礼拝を行えたそうだ。建物の突き当り、グアダルキビル川に架かる古代ローマの橋に面した壁面にはミフラーブがある。アラビア半島は東方向のはずだが、なんで南南東を向いているんだろう…。ムスリムが方向を間違えるはずはないので、あの小さな部屋の中に正しい方角に目印でも付けてあるのだろう。

列柱の間の中央部は、むりやり大聖堂に改築されている。たとえばイスタンブールのアヤソフィアは、かつてのカトリック大聖堂の「全体」をモスクに転用している。しかし、ここメスキータの建物は広すぎたので、全体を教会に改築するのではなく、ほんの「一部」だけを改築したのだろうか。まあ、一部だけの改築で済んだから、いまの私達が「モスクの時の姿をみることができる」のでありがたいことだ。

大聖堂の中に入ると、ここがモスクだったという面影は全く無い。モスク時代の列柱・屋根をすべて解体して、そこに新しい大聖堂を立てているからなのだろう。大聖堂として改築された部分の外、イスラムの礼拝堂部分にもカトリックの装飾が所々に取り付けられている。聖母マリアの絵が架かっている柱があったり、偶像がふんだんに散りばめられているチャペルがあったり。クリスマスなので、プレセピオももちろん置かれている。ミサが始まり、司祭の歌うような説教が建物の中に響き渡る。モスクの建物の中で聞く、カトリックの説教。なかなか体験できるものではない。

10時を過ぎて有料の時間帯になってから、団体観光客が次々と入場してきた。殆どが日本人の団体だ。なぜ有料になるのを待って入ってくるのだろう。ガイドに引き連れられ、早口の説明を聞いて、さっさと建物の外に出て行ってしまう。せっかく来たんだから、もっとのんびりしていけばいいのに…。

11時過ぎ、メスキータを出て旧市街をうろつく。次に向かったのは古代ローマ時代の神殿跡。20世紀に行われた市庁舎の拡張工事中に見つかった遺跡だそうだ。1世紀中頃に造られたとされる神殿は、基壇部分とコリント様式の円柱が16本が残っている。立っている円柱は、おそらく足りない部分を複製して完全な円柱として復元したものなのだろう。見どころは、オリジナルと思われる基壇部分のみか…。

ユダヤ人街にある14世紀に裕福なユダヤ人が建てたシナゴーグを見学。ヨーロッパの端まで進出するユダヤ人の生存能力はすごいと感じた。

新市街のカフェで昼食。昼食メニューは12時30分から提供開始で、当地の昼ごはんタイムは日本より遅くから始まるようだ。ウエイターに英語が通じず、メニューも現地語だけのため、適当に昼食セットを注文したらベジタリアン・メニューだった。サラダと、いんげん豆の炒め物、ワイン、パン…。昼定食にワインが着くのも驚きだし、肉全く無しですか。7.5ユーロ(1,020円)。

午後は霧も消え、晴れてくる。旧市街の城壁の脇のビクトリア庭園に、古代ローマの霊廟が復元されている。現代のレンガで円筒形の建物が再建されているが、古代ローマ時代のものは… レンガ壁に埋め込まれている数個の大理石のかけらだけだ。あまりに想像力膨らませ過ぎの復元だ。

グアダルキビル川を渡り、旧市街の対岸へ。川沿いは公園になっていて、ここから見るとメスキータに増築されたカトリックの大聖堂の外観が一望できる。

夕刻、アルカサルに向かう。入場料は4ユーロ(544円)。アル・クサルはアラビア語で「城」という意味だが、この城が建設されたのは、コルドバがカトリック勢力に併合されたレコンキスタ以降の14世紀のことだ。

アルカサルは城(建物)と庭園で構成されていて、入場門を入るとほとんどの客は庭園のほうに向かっている。庭園には噴水のある瀟洒な池があり、その周囲をオレンジや椰子の木が取り囲んでいる。でも、ここの見どころは地味な城の方にあり、中世に女性牢獄だった部分の中庭(Patio de las mujeres)には古代ローマ時代の遺構が残っている。城内の展示室にも、古代ローマのモザイク床が展示されていて、城が古代ローマ時代の建物の上に建てられていることが分かる。

夕食はバーガーキングでワッパー・メニュー(4.8ユーロ, 652円)を食べる。

Hotel
Hotel Riviera
504号室, ツイン 30ユーロ(4,080円)/1泊

December 29, 2005 (Thursday)

昨晩は23時から20分間くらい、夜中の2時から20分間くらい、扉を何度も開け閉めし、廊下で大声で話すバカ家族のせいで寝れなかった。

7時過ぎに起床。8時30分にホテルをチェックアウトして観光に出かける。マドリード行きの列車に乗るのは13時過ぎなので、半日ほど歩き回れるはずだ。

まずは朝食。昨日と同じく、ホテルのそばにあるカフェでトーストとカフェラテ(1.5ユーロ, 204円)。昨日と違い、今朝は快晴なのでメスキータの朝の景色を撮影に出かける。朝焼けに染まる鐘楼は殊更に美しい。ほとんど観光客が来ていない時間帯なので、好きなアングルで写真撮り放題だ。

旧市街の東端に向けてどんどん歩いて行く。ロンリー・プラネットや地球の歩き方の地図の掲載範囲を飛び出してしまうが、GPS地図があるので迷うことはない。観光客が来ることが少ない路地、噴水のある広場、古い教会。地元の人にとっては当たり前の景色も、初めてここを訪れる旅人にとってはすべて見どころになってしまう。

新市街のコロン広場に面したカフェで昼食。ステーキとワインを注文。9.08ユーロ(1,234円)。ステーキの本場なので、この安さで食べることができる。

ポトロ広場の旅館(Posada del Potro)をきょう最後の観光地として見物。15世紀に建てられた旅館は、なんと1972年まで現役で使われていたそうだ。小説「ドン・キホーテ」の話の中にも登場した有名な旅館だそうだ。

ホテルに戻り、預けていた荷物を受け取って駅へ向かう。首都だけでなく、地方の駅でも高速鉄道に乗車するときにはX線の荷物検査を受けないといけない。国内の独立運動でテロが頻発しているので、仕方ないのだろう。

Train
Córdoba(13:43発)→ Madrid, Atocha(15:30着)
AVE, Train A9627, Touristクラス 運賃 27ユーロ(3,672円)

Madrid - Spain (マドリード - スペイン)

コルドバは快晴だったが、マドリードに到着したらどんよりとした曇り空。アトーチャ駅はクリスマス休暇の沢山の乗客で混雑しており、地元のテレビ局がニュース画像を撮影していた。地下鉄に乗り換え、プエルタ・デル・ソル近くにあるインターネットで予約したホテルに向かう。

Metro
Atocha(15:40頃発)→ Sol(16:45頃着)
Metro, Line 1, 回数券10枚 運賃 0.58ユーロ(79円)

地下鉄駅から階段を登りプエルタ・デル・ソルに出る。スペインの道路元標がある国土の中心で、かつ繁華街の中心広場だが、クリスマス休暇の時期なので人通りは極端に少ない。かつてこの広場には、名前が示す通りマドリードの城門の一つ太陽門(Puerta del Sol)があったそうだ。中世には街の中心ではなく、街の境界の城壁のところだったわけだ。だから、道路元標があるのもうなづける。予約したホテルはプエルタ・デル・ソルとマヨール広場の間を結ぶ路地にある。こんなに便利な場所にありながら、1泊45ユーロと格安なのには、部屋がめちゃくちゃ狭いという制約付きだからだ。

荷物を部屋に置いて、日没までの1時間ほど近辺を歩く。ホテルの目の前の道路は、本来は繁華街で沢山のお店があり、多くの人が歩いている場所のはずだ。しかし、クリスマス休暇でほぼ全てのお店が閉まっているので、歩いているのも暇を持て余したガイジン観光客くらいだ。そんな閑古鳥のなく路地で大道芸を披露しようとやって来たパフォーマーが、早速警官に摘発されている。さすがに、誰も居ない道路だと目立ってしまい即検挙だ。

1週間前にこの街に来た時には、クリスマス位置で賑わっていたマヨール広場も、露天が全て撤去されて誰も居ない単なる広い空間になってしまっている。街の中心にある露天市や闘牛が開かれる場所だったところを、16世紀にスペイン王フェリペ3世が再開発して整備した広場だ。だから、広場の中央にフェリペ3世の騎馬像が鎮座している。ただし、現在建っている建物群は、18世紀末の火災後に再建されたものだそうだ。

夕食は、1週間前に入った同じレストランに行き、定食を食べる。レバー・ステーキ、パエーリャ、ワインのハーフボトルがセットで9.08ユーロ(1,235円)。

Hotel
Hostal Tijcal
B2.15号室, 4人部屋ドミトリー 45ユーロ(6,120円)/1泊

December 30, 2005 (Friday)

7時にホテルをチェックアウト。夜中は雨だったようで、道路は濡れている。プエルタ・デル・ソルから地下鉄に乗り、空港を目指す。

Metro
Sol(07:10頃発)→ Príncipe de Vergara → Colombia → Aeropuerto T1-T2-T3(08:10頃着)
Metro, Line 2 → 9 → 8, 回数券10枚 運賃 0.58ユーロ(79円)

空港に地下鉄が走っているといっても、街の中心から1時間掛かるのでは、あまり便利とはいえない。乗り継ぎ駅でのプラットホーム間の距離もあり、なにより空港駅がターミナルビルから1kmくらい離れているのは遠すぎる。しかし、以前のようにコロン広場から空港バスに乗らないといけない時代よりは少しだけマシだ。

マドリードからアムステルダム乗り継ぎで大阪までの便を予約しているが、アムステルダム乗り継ぎの時間が1時間5分。以前、このルートで乗った時にはマドリードで1時間以上遅延したので、今回も遅延に期待が持てる。遅延して当日乗り継ぎ不可になれば、航空会社の負担でアムステルダムに1泊できる特典が付く。遅延することを期待してチェックインの行列に並んでいると、日本人団体客がやって来る。団体が居たら、後の便を遅らせてでも無理やり乗せるので、残念ながら遅延は期待できない。

チェックインし、搭乗券に書かれた搭乗口付近で待つ。ターミナル内の出発案内モニターには、私の乗る便の表示が何故か無い。登場開始時刻になり、いよいよおかしいと思い航空会社の案内カウンターで聞いてみると、全く別の搭乗口に変更になっているようだ。出発案内モニターを見落としたのだろうか…

Alrline
Madrid-Barajas(10:15発)→ Amsterdam Airport Schiphol(13:00着, 14:05発)→ 関西空港(翌日 09:20)
KL 1700 → KL 867, 日本−欧州 往復運賃+諸税 115,350円

マドリードからアムステルダムまでの飛行機は、日本人団体客に囲まれた席。オバハンの拡声器のようにでかい話し声がトラウマになりそうだ。おまけに、隣りに座っている黒人男性が、怪しく体を小刻みに揺すぶっていて、キョロキョロと回りを見回している。最悪だ…。

アムステルダムから関西空港までの飛行機は、今年から新規導入されたB777の新機材。エコノミー席にもパーソナルモニターがついていて、選択肢は少ないが好きな映画を好みのタイミングで見ることができる。ただし、映画は古めだ。新機材にもかかわらず、後部ギャレーの冷蔵庫が壊れたようで、出発前に整備士が通路を行ったり来たりしていた。結局冷蔵庫は修理できず、機長のアナウンスでは「切り離して運用」でお茶を濁したようだ。