シベリア鉄道でロシア横断 旅日記 : シベリア鉄道の車両

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車内の様子

乗降口デッキは喫煙可能だ。停車時には、乗降口に2段の階段が出るようになっている。内装は白又は薄い水色のペンキ塗装となっている。

デッキを通って車内通路に入ると、内装は木目調合成樹脂板 (いわゆる阪急電鉄の内装) だ。左側にトイレがあるが、車掌が鍵をかけている場合もあるので使えない場合が多い。その横に車掌室がある。車掌室には机・椅子・各種スイッチがついた制御盤の他に、流し台もある。

車掌室の向かい側の白い円筒形の機械は給湯機(サモワール)。通常はボイラーで加熱しているが、電気加熱式に改造されている車両もある。温度計が付いており、90℃くらいの熱湯がいつでも使える

給湯機の前の扉は通常開けた状態で固定されている(夏季)。コンパートメントが並ぶ通路に入る。左側に扉がずらっと並んでいる。扉には窓が付いていないので、通路よりコンパートメント内を覗く事はできない。通路の右側は2重ガラス窓が並んでいる。

扉には「I」〜「IX」までのギリシャ数字で部屋番号が書かれており、扉の横には「1,2,3,4」〜「33,34,35,36」と書かれた座席番号が書かれている。切符などでは「座席番号」が指定されるので、通常「部屋番号」を使う事はない。

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2等車のコンパートメント

コンパートメントの扉はかなり頑丈そうだ。ベッド番号は、窓際にある読書燈の下に書かれている。室内には4つのベッド(1等車では2つのベッド)と 1つの窓がある。ベッドは茶色の合成皮革でできている。始発駅であれば、上段のベッドに、マットレスと毛布が丸めて(あるいはたたんで) 置いてある。欧州の寝台客車のようにシーツは置いてない。シーツは車掌が配りに来る(有料)

コンパートメントの窓際には、比較的大きな白いテーブル(50cm四方くらい)があり、食事の場所となる。下のベッドの下部は荷物置き場となっている。また、通路上部が荷物置き場になっているのは、欧州の寝台客車と同じだ。入り口扉の両脇には、簡易ステップがあり、上部ベッドに乗り移る時に使う。入り口扉の(本来なら)窓のある位置には鏡が付いている。扉はドアノブの下に車掌が外部から操作できる鍵1つと、扉左上に外からは外から操作できない鍵が1つある。その他の室内装飾は欧州の寝台客車とほぼ同じだ。

コンパートメント内部の窓(2重ガラス窓)は固定窓となっており、開けられない。しかし、まれに3等車などで、開く車両もあるようだ。通路側の窓は2か所に1つくらい開くことができる。開く事のできる窓は上部に大きな取っ手が付いている。ただし、空調中の車両の窓は全てロックされていて開かない場合もある。窓のロックは、窓下部の鍵(2か所)で行う。窓は上部30cm位しか開かないが、非常口となる窓は、鍵を開ければ全開(下まで開く)になる。

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2等車の車内通路

通路には絨毯が敷かれているが、その上からタオル地の長い布を敷いてある。絨毯が汚れるのを防ぐためのようだ。通路側窓の間には所々に簡易式の椅子がある。また、窓と窓の間には時刻表や車掌室でできる追加サービス(お茶や薬など)の価格表、車内マナーの文書が貼られている。
窓にはカーテンがかかっている車両もあるが、カーテンの無い車両もある。どちらにしても、日本の電車と同じような遮光シェードが上から下ろせる。(コンパートメント側の窓も同様)

通路の一番奥の扉も開いた状態で固定されており、その向こうに三角形のごみ箱がある。左側にはトイレがある。列車が駅に停車する前後の時間帯は、車掌が鍵をかけてしまうので使えない

トイレには、左側の壁に銀色の洗面器がある。使いにくい水道の蛇口が1つあり、蛇口の下を押すと水が出る。洗面器の少し上にある水と湯の混合量を切り替えるバルブで、湯を出せる車両もまれにある。洗面器の右上には鏡とコップが3つくらい乗る幅の台がある。トイレの右奥に洋式便器がある。便器の下にあるペダルを踏むと、排泄物が線路に落ちるしくみとなっている。トイレに紙が備えられている事はほとんどない。また、長距離列車ではトイレに座って用を足す事は難しい(汚れているため)。まれにトイレで水浴びをする人がおり、トイレの床がべたべたの事もある。

トイレの横にあるドアを開けると、反対側のデッキに出る。ここも喫煙所となっている。このデッキから車外に出るドアは通常使用されない。デッキからドアを開けて連結部に出ると、床板の横より路面が見える。ここは天然「ごみ箱」として使用される事もある。

車外の様子

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2等車の表示 MECT-36

駅に到着すると、車掌がデッキの扉を開けデッキ下部の蓋を横に持ち上げると、デッキ下部にステップ2段が現れる。車掌は外部の手すりをふいた後、乗客をホームに降ろす。

扉の右横には「MECT36」や「MECT18」と書かれたプレートが取り付けられている。欧州のように「1」、「2」と等級表示するのではなく、車両の定員を書く事により間接的に等級が分るようになっている。「MECT36」は「メスト36」と読み、座席数36席の2等コンパートメントを差す。「MECT18」は1等車だ。この表示板のずっと下部の「TAPA55T」の意味は不明。

車体の色は深緑のボディーに黄色または白の横線が一般的。
特別な列車には、特別な塗装となる。ロシア号の一部は、ロシアの国旗をイメージした赤・青・白の3色塗装となっているし、モスクワ〜ペテルブルクを結ぶ列車の一部は暗赤色のボディーに金の横線となっているものもある。
すべての車体に言える事は、表面には光沢が無く、窓は汚れている場合が多い。これは欧州の客車でも同じ事だ。

給湯機の横にある窓には号車表示の紙(厚紙)が掛けてある。列車が揺れてずれてしまっているものも中にはある。号車表示は、1号車から2、3、4...となっているが、まれにぜんぜん違う番号の号車が割り込んでいる場合もあるので、初めて乗り込む場合はあせらない事が肝心だ。
号車表示の紙の上または下に、サボ(列車名および行き先表示)がある事がある。

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ロシア号のサボ

車体の中央付近にサボが取り付けられている。このサボはめったに取り外ししないらしく、固定されているようだ。車両の運用が頻繁に変わる車体では、号車表示の近くに紙でサボが張り出されている事が多い。サボには列車名「ロシア号など」と走行区間「ウラジオストック〜モスクワ」が書かれている。中国に直接乗り入れる列車には北京語でも併記されている「ボストーク号、モスクワ〜北京西」。
窓と屋根の間のスペースに大きく列車名が書かれている車体では、サボに走行区間しか書かれていない場合もある。

サボの上部には、8桁の車体番号と鉄道会社のマークが入っている。ロシア鉄道の場合は2種類のマークがある。また、使用頻度の低い車体や、廃棄された車体には、ソビエト連邦時代の浮き彫りのレリーフが残されているものもある。

車掌室の反対側のデッキの近くの窓の下には給水口がある。駅でゴムホースをつないで給水する。

車体の下部に目を移し車掌室側より見て行く。
まず台車がある。空調機の無い車両では、台車に小さい発電機が付いている。空調機のある車両では、台車横に発電機がある。発電機の周りには、稲妻マークの入った電気機器が入っていると思われる箱がある。車両中央部辺りには、空調機の室外機がある。日本では天井に付いているものが、ロシアでは床下に付いている。その横に給水ポンプとそのモーターがある。給水ポンプの裏側には圧力タンクがある。それより向こう側の台車までの間にあるのは蓄電池(バッテリー) だ。
ちなみに、空調機は冷房時に使用されるもので、これが装備されていない車体でも暖房は効く。暖房は給湯機とデッキの間にある機械室に設置されているボイラーで行うようだ。

客車の機器系統図は車掌室とトイレの間に掲出されているので、興味がある方は見てください。但し全てロシア語表記。

ロシア鉄道の長距離列車の客車は、単独で電気、熱源をまかなう仕組みとなっている。

1等車と2等車の違い

2等車から上段のベッドと、上段用についていた読書燈・小物入れ・フックを取ったものが1等車のコンパートメントだ。壁の材質、ベッドの仕様、窓の仕様などは同一だ。料金は2等のおよそ1.5倍が1等料金となっているようだ。

2等車では、昼間通路にたくさんの乗客が出て景色を眺めたり、小さい子どもを遊ばせている事が多いが、1等車ではこのような事をみかける事はなかった。

3等車

3等車はコンパートメントの構造が根本的に違い、コンパートメントに扉が無い。通路にも2段ベッドが据え付けられており、乗客はすし詰め状態だ。3等車を見に行った人は全て、雰囲気が何だか悪いとこぼしていた。日本の旅行社では3等を予約してくれないので、現地の駅または旅行社で予約しないと乗れないようだ。