写真を利用する場合の著作権やその他権利に関する処理についてのメモ
著作物
写真は著作権法の第10条1項8号で『写真の著作物』として例示されている。撮影テクニックの巧拙に関わらず、第2条1項1号の『思想又は感情を創作的に表現したもの』の範疇のものは著作物である。
著作物とならない例
- 証明書用スピード写真は著作物とはみなされない : ライティングやアングルが同一で機械的に撮影しているものは、「思想または感情を創作的に表現したもの」に該当しないとされる。
- イラストや絵画を撮影(複写)したものは著作物とはみなされない
著作権
著作権には著作財産権と著作者人格権があり、通常財産権のほうを指し、著作物を排他的に利用する権利である。著作物が誕生した瞬間に発生し、著作物の所有権を移転しても、著作権はその契約に明示されない限り自動的に移転することは無い。
著作権に含まれる権利は次の通り。
- 複製権(著作権法第21条)
- 上演権及び演奏権(著作権法第22条)、上映権(著作権法第23条)、展示権(著作権法第25条)
- 公衆送信権等(著作権法第24条): インターネットなどで著作物を自動的に公衆に送信し得る状態に置くことも、送信可能化権を犯しているとされる。
- 口述権(著作権法第26条)
- 譲渡権(著作権法第26条の2): 著作権は財産権のため譲渡可能
- 貸与権(著作権法第26条の3): 著作物を公開のため貸与する権利
- 翻案権(著作権法第27条): 著作物を変形、脚色等する権利。著作者人格権の同一性保持権との対立に注意。
- 二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(著作権法第28条):一時著作物の著作権保有者は、二次著作物の著作者と同一の権利を持つ
著作権の譲渡
著作権は財産権であるため、第三者に譲渡可能である。複製権の譲渡が一般的であるが、全ての著作権を譲渡する場合もある。
著作権譲渡契約の例
- 著作物の全ての著作権(著作権法第27条、第28条に定める権利を含む)の譲渡と記述
- 著作者人格権を行使しない
- 著作物の所有権の移転時期の明示(CDメディアの引渡し時等)
- 契約書には印紙が必要(メール契約・電子保存の場合は印紙不要)
著作物利用許諾契約の例
- 条件(著作物の特定、利用期間や回数、利用エリア、独占・非独占の別)
- 利用期間経過後の自動延長条項(1年間、○日前までに申し出ない場合、更に○年間延長 等)
- 類似著作物作成禁止条項
著作者人格権
著作者人格権は著作物が誕生した瞬間に発生し、著作者が一身専属的に保有する。第三者に移転することは出来ない。著作権法第17条に定められている。
著作者人格権で行使できる権利は次の通り
- 公表権(著作権法第18条) : 公表の時期や方法を選択できる。一旦公表した後は権利は消滅する。
- 氏名表示権(著作権法第19条) : 著作者の氏名を表示・非表示を選択できる。どちらかの意思表示をしていない場合は、表示と解する。
- 同一性保持権(著作権法第20条) : 意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けない権利。
- 名誉声望保持権(著作権法第113条6項) : 著作物の改変を伴わなくても、利用態様によっては表現が著作者の意図と異なる意図を持つような利用方法をさせない権利。
被写体に働いている他の権利
写真自体の著作権が解決しても、写真中に写りこんでいる個々の被写体に働く諸権利を処理しない限り、写真の商用利用時にリスクを抱える可能性がある。権利処理できない場合は、画像処理にてぼかしたり、差し替えたりする必要がある。
- 写真中に存在する他の著作物 : 部屋の中に飾られている美術品、絵画等に注意。ただし、公道に面して屋外に展示されている彫像やモニュメントには著作権は働かないとされている。
- 一般の人物 : 個人を特定できる形で写っているのであれば肖像権(人格権・プライバシー権)の処理が必要。顔が写っていなくても、体型や服装、身振りで個人を特定できる場合も注意が必要。
- 著名人 : 個人を特定できるのであれば、財産権(パブリシティ権)の処理が必要。
- 顧客吸引力のある物 : 著名な建築物(東京タワー等)や製品(自動車や船等)など顧客吸引力のある物の場合、物のパブリシティ権は認められないとされる(2004年の最高裁判決)が、そのブランドイメージにフリーライドしていると認められれば不正競争防止法に抵触する可能性がある。背景に溶け込んで、ほとんど気にならないくらいであれば、問題無いと言われている。なお、神社仏閣や、城砦などは利用上問題無いと言われている。
- 撮影場所 : 写真撮影禁止の場所内で撮影したり、断り無く私有地に立ち入って撮影した写真については、所有権からクレームがつく場合がある。
- ポスター、カレンダー、書籍、看板、テレビ等 : 内容が明確に視認できる場合、各素材が持つ商標権、著作権、肖像権、財産権等の処理が必要。
- 美術的鑑賞が目的ではない工業製品 : 実用品は特に権利処理しなくても、背景としてなら問題なく利用できるといわれている。ただし、ブランド物の小物やファッション製品は、フリーライドしているとみなされれば不正競争防止法に抵触する可能性がある。
- キャラクター製品 : ぬいぐるみや、キャラクターがプリントされた服を着た人などは、美術の著作物に当たる場合や、商標権等で問題になる。また、不正競争防止法に抵触する可能性もある。
- 国旗(他国のものも含む): 商標法と不正競争防止法で制限されるほか、外交関係上問題になることもある(係争地等)。
- 赤十字マーク、身障者マーク : 主題として撮影されている場合、各種法規で制限される。
- 道路標識 : 政令により作成されたものは著作権が働かない。