住民票や戸籍に掲載されていて”生きている”はずの人が、実はすでに死亡していた。最近そのような報道[1][2]が激増しています。江戸時代に生まれた人がまだ生きていることになっているなど、国民がどこに居るのか、生きているのか死んでいるのかすら市役所では把握出来ていないようです。
身元不明死者(行旅死亡人)も日本では年間千人[3]ほど発見されますが、そのうち10%しか身元を判明出来ていません[4]。先進国ではほぼ100%判明させている国も多い中で、日本人は政府から見捨てられているとしか言いようがありません。
大阪では今年になって児童虐待の事実が次々と報道されますが、児童相談所に何度も通報が有りながらも、幼い姉弟がマンションの一室に閉じ込められたまま餓死するという事件には涙しました。児童相談所の職員が現地に駆けつけたのが通報後48時間とか、どうなってるのでしょうか。治安が日本で最も悪い大阪で、年間3000件の児童虐待通報があるにもかかわらず、児童相談所の職員がたったの47人とか…[5]。『専門職員を昨年度5人、今年度4人と増員し』と首長がインタビューで強調しても、議員からは『焼け石に水』と言われている始末です。
地籍簿も日本では国土の半分すら作成出来ていません。先進国では100%確定していることが当たり前で、軍の専門部署が管理するドイツなどの例[6]が示すように、領域確定は国家として必要なことでしょう。大阪では、なんと4%しか地籍が確定していないということですが、これでは外国企業も日本に進出して事業をしようなどとは思えないでしょう。土地の私有権が海外諸国に比べて異様に強い日本では、要らぬ紛争に巻き込まれる危険があります。
国境の島も防衛できないですが、国内の土地の持ち主も分からない、山林に至っては面積すら不明で固定資産税すら徴収出来て居ない…。
どれも、私有財産、個人情報(プライバシー)という究極の権利に割って入り仲裁することが必要なため、公務員しか出来ない特殊な権力業務です。で、その部門の人員が圧倒的に足りていない、ということらしいですが、財政難のこの時代に公務員数を増やすというのもなかなか難しいかと…。
でも、ちょっと待ってください !
大阪市の例で言えば、職員数47,470人のうち、上下水道・道路・港湾などの公共施設管理や地下鉄やごみ収集などの公営事業に携わる職員数が全体の49%、病院・消防・教育機関や税務署といった公権力を伴う可能性のある行政機関の職員が51%ということです[7]。この調査を行った国の資料には、今後の課題として”民営化や民間委託化”と並行して職員の”職種職域転換”を行うとなっています。
公務員数を増やせないのであれば、時代の流れで”不要となった”職種から、”必要とされている”職種へ定員を振り替えればよいはずです。大阪市のホームページによれば、事務(行政職)や社会福祉(児童相談所など)、消防士のほか、土木・建築・機械・電気・化学・造園といった”技術職”が募集されているようです[8]。これら施設の建設・管理をする”技術職”は工事や施設補修などの発注利権で守られているのかもしれませんが、民間でもできる”施設管理”にただでさえ貴重な公務員定数を割いて、国家の三要素である「領域・人民・権力」を疎かにすることは良くないのではないでしょうか。
さきほどの大阪の例で、児童相談所の職員を年間4〜5名採用しているとありましたが、採用試験情報によれば、施設管理のための土木・建築・電気・機械といった職種で19名を採用[9]しているのでは、人よりコンクリートと謗りを受けてもおかしくはないでしょうね。
このように、モノを所有し運営するという単なる手段が重要だと勘違いしてリソースの振り分けがおかしくなっている例は官民を問わず転がっている。 モノに固執する思想がどれ程ダメなのかは、また次回…