AutoCADをとりあえず動かしてみる
(このページ内容の最終更新:2004年10月)
私は『製図を専門的に行う人』ではありません。普段使っているのは、オープンソースソフトの Inkscape(ベクトル画像編集ソフト)ですので、専門的にAutoCADを用いているのではありません。しかし、Inkscapeでは座標を正確に定めて図形を作図できないので、きっちりとした作図をするならAutoCADは便利ですね。
たまにAutoCADを使うはめになって、○○するコマンド何だったっけ? というようなと時のための個人的リファレンスとしてこのページを作っています。
このページを作成した時の対象ソフトはAutoCAD 2000です。現行のAutoCADでも基本的なコマンド体系は同じですので、どのようなバージョンであれ知識は流用出来るはずということで、このページを削除せずに残しています。
参考資料
Google検索しても色々なページが見つかりますが、参考にしたホームページなど...
AutoCAD 実践的使い方研究
AutoCAD LT 入門者の自習室
AutoCAD LT95 の使い方
CAD・測量講習会目次
ツールバーの説明
よく使われるツールバーと幾つかのボタンについての説明
ボタンの機能についてはアイコンから推測できますし、マウスを上に持っていくとツールチップが表示されます
標準ツールバー (Standard Toolbar)
オブジェクト属性ツールバー (Object Properties Toolbar)
スケール(寸法線)ツールバー (Dimension Toolbar)
描画ツールバー (Draw Toolbar) |
編集ツールバー (Modify Toolbar) |
ステータスバー (Status Bar)
新規図面作成
テンプレートを使うことも出来ますが、ここでは"まっさらの"状態からはじめます。
「ファイル File」メニューの「新規作成 New」を選ぶと「AutoCAD Today」という画面が表示される。
ここから「図面を作成 Create Drawings」タブの「ゼロからスタート Start from Scratch」で新規ドキュメントを開く
(単位系を Metric か English Feet and Inches から選択。今回は Metric)
ドキュメントの下部にあるタブには「Model」(モデル空間)と「Layout1 , Layout2」(ペーパー空間)の3つのタブが作成されている。
ツールバーの「Layer」(レイヤ)リストボックスには「0」という名前の「Defpoint」レイヤーがひとつ作成されている。(← このレイヤーには作図しないほうがいい)
※ ペーパー空間についての説明は、この文書の最後のほうの「印刷」セクションで説明
作図領域の決定
モデル空間は(演算が許す限りの)無限遠までの座標があるが、グリッドなどの表示は「仮想的な作図限界」まで。(zoom all コマンドで表示される領域)
なお、モデル空間に縮尺は存在しない。常に 1:1 の作図となる。
たとえば、A1 用紙(826mm × 554mm)を作図作業領域と仮定し、縮尺を考慮して作業領域を決定する。
縮尺 | この縮尺での参考用途 | コマンド |
---|---|---|
10:1 (10倍) | 電子部品の製図 | limits 0,0 82.6,55.4 |
1:10(1/10) | 機械類の製図 | limits 0,0 8260,5540 |
1:50(1/50) | 工場の平面図 | limits 0,0 41300,27700 |
以上のコマンドは、コマンドラインに直接入力する。(「Format - Drawing Limits」でも数値はコマンドライン入力となる)
スペース文字と改行文字は同じ意味合いとなる。
Command: limits[ENTER キー] Reset Model space limits: Specify lower left corner or [ON/OFF] <0.0000,0.0000>:[ENTER キー] Specify upper right corner <420.0000,297.0000>: 82.6,55.4[ENTER キー] Command:
※ この作業は、行わなくても致命的なミスとはならない。が、あとあと便利な設定なようだ。
視点の移動(画面のスクロール)、拡大縮小
作図領域がどれくらいのものなのか、確認する。マウスのスクロールボタンで拡大縮小できる。適当なところまで縮小表示して、ステータスバーの「GRID」表示を押すと、作業領域にグリッドが表示される。
コマンド | |
---|---|
zoom all | 作業領域全体を表示 |
zoom 10 | 画面上で10 倍に拡大 |
zoom 10x | 現在の表示の10倍に拡大(相対拡大) |
zoom 10xp | ペーパー空間で10倍に拡大 |
zoom 1/50xp | ペーパー空間で 1/50に縮小 |
画面の一部分の拡大は、「zoom」とコマンドラインに入力し Enter を押し、マウスで拡大したい領域を選択する。
視点を左右に移したい場合は、スクロールバーも使えるが、「標準ツールバー」の「Pan Realtime」ボタンを押してぐりぐり移動したほうが楽。
レイヤーの定義、ラインスタイル、フォントスタイル、寸法スタイルの定義
レイヤー(画層) LAYER
レイヤーは「形式 Format - 画層管理 Layer」で適当に作成する。「オブジェクト属性ツールバー」のレイヤーを示すドロップダウンリストでのアイコンの意味合いは次のとおり。
- 電球 VISIBLE - 可視・不可視 (← 見えていないだけで存在します)
- 球 FREEZE - 有効・無効 (← 無効にすると、何も存在しなくなります)
- 球と四角 - 現在のLayout 内で有効・無効
- 鍵 LOCK - ロック・アンロック (編集できなくなります)
線種の設定 DEFINE LINE STYLE
デフォルトのラインスタイルで問題がある場合、ラインスタイルを再定義する必要があります。
「形式 Format - 線種設定 Linetype」でラインタイプ・マネジャーを開きます。点線や一点鎖線を使う場合は「Load」ボタンを押して線種を読み込みます。必要に応じて CENTER とか DASHD という線種を読み込みます。
モデリング空間で一度線を引き、点線の間隔がおかしい場合はラインタイプ・マネジャーで間隔を再設定します。「Global Scale Factor」を次のように設定すると見やすいようです。
- 1:1の図 → 0.4
- 1:100の図 → 40
文字スタイルの設定 DEFINE TEXT STYLE
デフォルトの文字スタイルで問題がある場合、文字スタイルも再定義する必要があります。
「形式 Format - 文字スタイル管理 Text Style」で現在のスタイルを編集するか、新規スタイルを作成します。なお、日本語・中国語等を入力したい場合は「Use Big Font」にチェックを入れ、「bigfont.shx」を選択します。文字の高さ Height も忘れず設定してください。(モデリング空間での実高さ)
ここで設定していないフォントは、TEXTコマンドや寸法線で使えません。
寸法線スタイルの設定 DEFINE DIMENSION STYLE
デフォルトの寸法線で問題がある場合、これも再定義する必要があります。
「形式 Format - 寸法スタイル管理 Dimension Style」で設定します。
Lines and Arrows の Arrow Size と、Text の Text Style が重要な設定ポイントとなります。矢印のサイズはモデリング空間での実サイズとなります。
線、四角、円、文字を描く
線 LINE , STROKE
line コマンドで引きます。マウスだけで引くことも、座標を指定することもできます。
絶対座標で線分を引くときは次のようにします。
Command: line[ENTER キー] Specify first point: 100,100[ENTER キー](←絶対座標 100,100) Specify next point or [Undo]: 150,150[ENTER キー](←絶対座標 150,150) Specify next point or [Undo]: [ENTER キー] Command:
これは、相対座標(先頭に@マーク)をつけて、次のようにあらわしても同じ意味です。
Command: line[ENTER キー] Specify first point: 100,100[ENTER キー](←絶対座標 100,100) Specify next point or [Undo]: @50,50[ENTER キー](←@マークは相対距離を意味する) Specify next point or [Undo]: [ENTER キー] Command:
角度と長さを指定した線分の引き方は次のようにします
Command: line[ENTER キー] Specify first point:[長方形の左上をクリック](←座標指定はマウスクリックでも可) Specify next point or [Undo]: @10<45[ENTER キー](←長さ10、角度45) Specify next point or [Undo]: [ENTER キー] Command:
「オブジェクトにスナップ」をONにしておくと、長方形の左上にカーソルを近づけると自動的にスナップ(吸い付くこと)します。
長方形・四角形 RECTANGLE
rectangle コマンドで描きます。
Command: rectangle[ENTER キー] Specify first corner point or [Chamfer/Elevation/Fillet/Thickness/Width]: 100,100[ENTER キー] Specify other corner point or [Dimensions]: 150,150[ENTER キー] Command:
「@」マークを使って、長方形の大きさを「@50,50」としても同じ意味になります。
円 CIRCLE
circle コマンドで描きます。
中心指定でも、2点指定、3点指定、接円などができます。中心点以外のモードは、コマンドラインから指定します。
接円の描き方は、接する2線と半径を指定します。
Command: circle[ENTER キー] Specify center point for circle or [3P/2P/Ttr (tan tan radius)]: t[ENTER キー] Specify point on object for first tangent of circle: [接する線・円弧などをクリック] Specify point on object for second tangent of circle: [接する線・円弧などをクリック] Specify radius of circle: 10[ENTER キー] Command:
文字 TEXT
text コマンドで1行テキストが書けます。複数行テキストはmtext です。
text コマンドで コマンドラインよりstyle を最初に設定できます。(最初に s を入力)
Command: text[ENTER キー] Current text style: "Standard" Text height: 2.5000 (←現在のテキストスタイルが表示される) Specify start point of text or [Justify/Style]: s [ENTER キー] Enter style name or [?] <Standard>: 1-100[ENTER キー] (←1-100テキストスタイルを使用) Current text style: "1-100" Text height: 15.0000 (←このテキストスタイルを使う) Specify start point of text or [Justify/Style]:[ENTER キー] Specify rotation angle of text <0>:[ENTER キー] (←角度を指定する場合はここで指定。マウス可) Enter text: Hello World[ENTER キー] Enter text: [ENTER キー] Command:
コピー、切り取り、延長
コピー COPY OBJECT
コピーは copy コマンドで行います。
オブジェクトを選択して、相対距離を入力します。
Command: copy[ENTER キー] Select objects: [オブジェクトを選択] 1 found (←オブジェクトが1個選択された) Select objects:[ENTER キー] (←複数選択する場合は、上の操作を繰り返す) Specify base point or displacement, or [Multiple]: 100,0[ENTER キー] (←@を付けなくても相対距離を意味する) Specify second point of displacement or <use first point as displacement>: [ENTER キー] Command:
別のオブジェクトを指標にしてコピーする場合 (displacement)
四角形1と四角形2があり、「円弧と四角形1の相対位置関係」と「コピー先の円弧と四角形2の相対位置関係」が同じになるように円弧をコピーする場合
Command: copy[ENTER キー] Select objects: [円弧を選択] 1 found (←選択された円弧が点線表示されている) Select objects:[ENTER キー] Specify base point or displacement, or [Multiple]: [四角形1の右上①をクリック] Specify second point of displacement or <use first point as displacement>: [四角形2の右上②をクリック] Command:
次のような等間隔の連続コピーには array コマンドを使います。
移動 MOVE OBJECT
移動は move コマンドです。
Command: move[ENTER キー] Select objects: [オブジェクトを選択] 1 found (←オブジェクトが1個選択された) Select objects:[ENTER キー] (←複数選択する場合は、上の操作を繰り返す) Specify base point or displacement: 100,0[ENTER キー] (←@を付けなくても相対距離を意味する) Specify second point of displacement or <use first point as displacement>: [ENTER キー] Command:
コピーのときと同じく displacement の手法も使える。
線分・円弧の長さ変更 CHANGE STROKE LENGTH
次のように指定長さだけ延長する場合
Command: lengthen[ENTER キー] Select an object or [DElta/Percent/Total/DYnamic]: [オブジェクトをクリック] (←ここで指定しなくてもいい) Current length: 100.0000 (←選択されたオブジェクトの長さが表示される) Select an object or [DElta/Percent/Total/DYnamic]: de[ENTER キー] (←DELTA : 指定長さ延長) Enter delta length or [Angle] >0.0000<: 100[ENTER キー] (←100延長) Select an object or [DElta/Percent/Total/DYnamic]: [オブジェクトの延長側をクリック] (←クリックした側が延長される) Command:
延長長さで 「Enter delta length or [Angle]」と聞かれるのは、円弧の場合は延長「角度」を指定するため。
DElta の他にも、Total(トータル長さ指定)やPercent(パーセント指定)などもある。
既存線に接するまで延長
既存線(または既存線を延長した場合に交差する予定地まで)まで延長する場合
Command: extend[ENTER キー] Current settings: Projection=None, Edge=Extend Select boundary edges ... Select objects: [①の基準線をクリック]1 found (←最初にクリックするのは基準線) Select objects:[ENTER キー] Select object to extend or shift-select to trim or [Project/Edge/Undo]: [②の延長したい線をクリック] Select object to extend or shift-select to trim or [Project/Edge/Undo]: [ENTER キー] (←平行線を連続延長する場合などはここで連続クリック) Command:
既存線で切断(トリム) TRIM STROKE
extendと同じく、最初に基準線を指定してから、切りたい線(切断対象)を指定する。
Command: trim[ENTER キー] Current settings: Projection=None, Edge=Extend Select cutting edges ... Select objects: [基準線をクリック]1 found (←最初にクリックするのは基準線) Select objects:[ENTER キー] Select object to trim or shift-select to extend or [Project/Edge/Undo]: [切断したい線の切断側をクリック] Select object to trim or shift-select to extend or [Project/Edge/Undo]: [ENTER キー] (←平行線を連続切断する場合などはここで連続クリック) Command:
trim と extend はどちらのコマンドを入力したとしても、[SHIFT]キーを押しながら対象オブジェクトをクリックするともう一方の機能となります。
(対象オブジェクトを選択するメッセージをよく見てください...)
線分の中間を切断 CUT STROKE
線分のまんなかに、空隙を作る場合は次のようにします
※ONSNAP(スナップ・モード)はOFFで利用したほうがいいようです。
Command: break[ENTER キー] Select object:[ENTER キー] Specify second break point or [First point]: f Specify first break point: [1点目をクリック] Specify second break point: [2点目をクリック] Command:
f を入力しなかった場合は、その位置で線分が切断されます。(空隙は作られない)
オブジェクトを分解 BREAK APART OBJECT
explode コマンドを使います。ポリラインやハッチングも直線に分解されます。
他のソフトに渡す DXF ファイルを作る場合などは、かならずオブジェクトを分解してから作りましょう。
変形(フィット・ポイントを使う)
直線を折り曲げるときは、break コマンドで折り曲げたい点で直線を2つに切断します。2本の直線となるので、変形する場合は両方の直線を選択してフィット・ポイントを移動させる必要があります。
なお、2分割された直線を1つのオブジェクトにまとめるのは、ポリラインの結合を使います。
Command: pedit[ENTER キー] Select polyline or [Multiple]:[オブジェクトをクリック] Object selected is not a polyline Do you want to turn it into one? <Y>[ENTER キー] Enter an option [Close/Join/Width/Edit vertex/Fit/Spline/Decurve/Ltypegen/Undo]: j[ENTER キー] Select objects: [結合したいオブジェクトをクリック]1 found Select objects:[ENTER キー] 1 segments added to polyline Enter an option [Close/Join/Width/Edit vertex/Fit/Spline/Decurve/Ltypegen/Undo]:[ENTER キー] Command:
印刷出力
「レイアウト」タブをここで利用します。
作図を行ってきた「モデリング空間 (Model Space)」は縮尺が存在しない1:1の空間でしたので印刷には向きません。
また、平面・断面など複数のページに分けて印刷するといったことも含めて、「レイアウト」を使います。
「レイアウト」で使われているのは「ペーパー空間(Paper Space)」で、縮尺という概念が存在します。(無理やり存在させている...)
レイアウト・タブをはじめてクリックしたときや、レイアウトタブを右クリックして表示する「ページ設定」でプリンタや用紙、小さい用紙への縮小コピー率などを設定します。
とりあえず最終出力を行うプリンタと用紙サイズを選択してください。
テスト印刷などで小さな用紙に印刷する場合は、次のダイアログで「楕円で囲んだところ」を変更してください。
A1用紙で設定した図面を、A3に印刷する場合は、「1 = 2」となるように設定すれば、1/2に縮小印刷されます。
レイアウト画面は、次のような表示となっています。
黒の領域が「用紙の領域」。
そのすぐ内側の白の破線が「印刷可能領域」。
さらにその内側にある白い四角の領域が「VIEWPORT」。
VIEWPORT(ビューポート)の内部にモデリング空間で描かれている図形が投影されています。
現在の状態は、存在する図形がすべて収まる縮尺のはずです。
10:1(10倍に拡大)の図面を描くには、ビューポート内のズーム率を10:1に切り替えてやる必要があります。
Command: mspace[ENTER キー] (←モデル空間を表示するという命令) Command: zoom[ENTER キー] Specify corner of window, enter a scale factor (nX or nXP), or [All/Center/Dynamic/Extents/Previous/Scale/Window] >real time<: 10xp[ENTER キー] Command: pspace[ENTER キー] (←ペーパー空間を表示するという命令) Command:
専門家の作った製作図などには、タイトルや縮尺比率・部品表などがかかれた欄があったりします。これらは「ペーパー空間」に作成します。
簡単にこれらのタイトル類を作りたい場合は、「モデル空間」タブを右クリックして、「From Template ... テンプレートから作成」を実行してください。様々な用紙レイアウト(タイトル付)が自動的に作成されます。
ユーザ定義のビューポートの作成 MAKE ORIGINAL VIEWPORT
-vports コマンドで任意の形状のビューポートを作成できる。
(先頭のマイナス線を忘れないこと。)
四角形のビューポートは、オプションなしで範囲指定するだけで作成できる。
直線で囲まれた領域のビューポートを作る場合は Polygonal を指定してから、範囲を指定します。(閉じた領域。最後の点まで描いたら、ENTER キーを押して終了する)
ビューポートの変形 CONFIGURE VIEWPORT SHAPE
ペーパー空間でVIEWPORTの四角を選択すると、ツールバンドが表示されます。これを変形すれば任意のVIEWPORT形状とすることができます。
変形点(フィット・ポイント)を増やすには、break コマンドで VIEWPORT 構成要素の直線を切断することで可能になります。