2013年 キプロス、イタリア、ポルトガル旅行記 :
  アムステルダム、ラルナカ

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December 16, 2013 (Monday)

Amsterdam - Netherlands (アムステルダム - オランダ)

Airline
大阪 関西空港(11:35発)→ Amsterdam, Schiphol(15:35着)
KLM 868
Bus
Schiphol Plaza(15:55発)→ Amsterdam, De Boelelaan/VU(16:14着)
Connexxion (Schiphol Sternet) Bus 310, 運賃 2.43ユーロ(345円)

KLM機は予定通りの時間にアムステルダムに到着。入国審査を抜けて、空港ターミナルビル前にちょうど到着した310系のバスに乗る。バス専用道路を走る急行バス(Zuidtangent Bus)は、アムステルダム市街地ではなく空港に隣接した南駅の方面へ向かう路線だ。ほとんどの乗客は空港で降りてしまったようで、車内には数人の乗客が残るだけ。日没間際の弱々しい太陽光が、バスの車内をオレンジ色に染めている。夕方の通勤時間帯で道路が少し渋滞していたので、20分ほど掛かってアムステルダム自由大学前の停留書に到着。

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アムステルダム自由大学、本部校舎前

VU University Amsterdam, Main building

大学の本部ビルからは、授業を終えた学生がパラパラと出てきて、トラムの駅や傍らにあるケバブの露天などに向かっている。アムステルフェーン中心部方面へ向かう大通りの真ん中に造られた、地下鉄とトラムの自由大学停留所へ。プラットホームに置いてある券売機で、ICカード(OV-chipkaart)の残額を確認すると2.66ユーロ。乗車時に4ユーロのデポジットが取られるので、このままでは乗車できない。クレジットカードでチャージしてからメトロに乗り込む。沿線の高校も下校時間のようで、チャドルを被ったイスラム系の女子高生が大量に乗車してきて、車内は満員だった。

Metro
De Boelelaan/VU(16:21発)→ Waterlooplein(16:38着)
Metro Line 51, 運賃 1.25ユーロ(177円)
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レンブラント広場のレンブラント像

Rembrandtplein, Rembrandt statue

今夜はアムステルダムに1泊して、明日の午後にキプロス島に行く飛行機に乗る予定だ。KLMから「チェックインできます」というメールが来たが、Webでチェックインしようとしても「最初の便から順にチェックインしてください」という謎のメッセージが出てくる。コードシェアのキプロス航空の便だからWebチェックイン不可能なのだろう。無駄な宣伝メールを連発して送ってくるKLMの顧客システムは、この件を見ても作りこみが甘すぎるように感じる。

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ダム広場とクリスマスツリー

Christmas tree at Dam

アムステルダムは例年より暖かい気温で、夕方でも10℃程度ある。最高気温は12℃だったらしく、気象予報サイトは「記録的な温かさだ」と言っている。確かに、コート着てると汗が出てくるくらい温かい。雲が少しかかっていて、時折雨雲の濃いところが通り過ぎてにわか雨が降る。

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ダムラック通りのクリスマス市

Christmas market (Wintermarkt) at Damrak

いつものごとく、王宮前のダム広場にあるクリスマスツリーを見に行く。ふと、中央駅に続くダムラック通りを見ると、クリスマスマーケットの屋台が延々と並んでいる。以前はこういう屋台は無かったので、近年になって観光客向けに作ったのだろうか。円安になり1ユーロが140円付近だ。去年は100円くらいだったので、4割の減価だ。屋台のドイツ風フランクフルトが6ユーロなので、日本円に直したら850円とべらぼうに高く感じる。

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ニーウマルクト広場付近の路地

near Nieuwmarkt

ダムラック通りから東へ。飾り窓地区を抜けて計量所のあるニーウマルクト広場へ。計量所の改装工事をしているのか、広場のほとんどが工事用のバリケードで囲まれてしまっている。食料品を売る露天が、ちょこんとバリケードの横で店開きをしている。17世紀に市の城壁が取り払われた時に、この場所には市場が開かれる広場が造られた。その市場での取引の公正さを担保するための「計量」を行う公的機関の建物が、計量所だったそうだ。デジタル式のキッチンスケールが1000円以下で売られている現在と違って、昔は重さをごまかす人も多かったのだろう…。

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元 東インド会社の扉に書かれているVOCマーク

計量所からクローフェニールスブルグワル運河に沿って南へ。1分程度歩いたところに、かつてオランダ東インド会社の本社だった建物(Oost-Indisch Huis)が残っている。今はアムステルダム大学の社会科学・行動科学学科の建物となっていて、勝手に中を歩きまわることはできないので外から眺めるだけだ。川沿いの建物の外観や、中庭は東インド会社当時の雰囲気をよく残していると言われていて、中庭の扉の上にはVOCのマーク(Vereenigde Oost-Indische Compagnie=東インド会社)が今でも誇らしく掲げられている。

江戸時代に長崎出島に商館を設け南蛮貿易を独占した、あの東インド会社の本社があったという事で、日本とも深い縁のある場所だ。

December 17, 2013 (Tuesday)

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アムステルダム大学 サービスセンター

University of Amsterdam, Servicecentre

霧雨が降っている。インターネット気象予報サイトのレーダー画面を見てみる。ドーバー海峡に沿って大きな雲があり、オランダの陸地上空では途切れているのだが、ここアムステルダムは霧雨だ。キプロス行き飛行機は午後に出発するので、午前中はアムステルダムの観光地をいくつか巡ることにする。

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元 東インド会社本社

former Oost-Indisch Huis

最初に向かったのは、メトロのワーテルロープレイン駅から運河を渡った所にある、アムステルダム大学Times Higher Educationの大学ランキングでは83位(2013年)と、日本の大学では京大より下・阪大や東工大より上という優秀な大学だ。平日なので授業があるはずだが、朝9時だというのに登校してきている学生はほとんど見かけない。クリスマスの週だから休講措置の授業が多いのだろうか。大学本部の円柱形のガラス張りの建物や、メンザ・アトリウム(学生食堂)の窓から漏れでてくるオレンジ色の照明の光以外は、薄暗い霧雨の朝だ。

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アムステルダム大学 法学部通路

University of Amsterdam, Faculty of Law corridor

昨晩訪れた旧東インド会社の建物の方へ向かう。法学部の通路を歩いていると、南教会の鐘が丁度鳴り出して、学生が大急ぎで校舎に駆け込んでいく。授業がないのではなくて、単にギリギリの時間にしか登校しないのだろう。ギリギリと言っても、数分は遅れて教室に到着するのだろうけど…。

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電気自動車 充電スポット

EV charging stand

運河沿いの道には、所々に電気自動車や電気船用の充電用コンセントの柱が立っている。アムステルダム市役所のホームページによれば、市内には500ヶ所の充電ポイントがあり(2013年末)、料金は0.25ユーロ/kWhとのことだ。チャージに掛かる時間は3〜5時間で、急速充電ではないようだ。技術のウンチクを垂れて理想論を振りかざす日本の役所とは違い、安物でも良いからいち早く大量に増備する当地の人たちの行動力はすごいと思う。(例えば、日本独自のガラパゴス規格CHAdeMOの充電ポイントは、アムステルダムの10倍の人口を擁する東京都内に、たったの110ヶ所。)

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マヘレの跳ね橋

Magere Brug

次に、2009年にオープンしたエルミタージュ美術館のアムステルダム分館に向かう。市庁舎の向かい側のアムステル川沿いにあり、すぐ目の前に有名なマヘレの跳ね橋がある。サンクトペテルブルクにある、ロマノフ朝時代のロシア帝国が作った本家には15年ほど前に行ったことがあるが、こちらに来るのは今回が初めてだ。

なぜアムステルダムに分館… 確か、ピョートル大帝がアムステルダムの隣町のザーンダムに滞在した家の跡があるし、東インド会社で造船技術を学んだともWikipediaには書かれている。エルミタージュのあるサンクトペテルブルクは、このピョートル大帝が18世紀初めにネヴァ川の河口に建設した街だ。縁がないわけではない。

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エルミタージュ美術館 アムステルダム分館

Hermitage Amsterdam

入場料は15ユーロ(2130円)。ロシアの本館から貸し出されている美術品が「少々」展示されている部屋と、美術館に改装される前の内装が残された郷土史館の2本立てだ。本館から来ている絵画は、ゴーギャンなどの名作だったが、それほどたくさんあるわけではない。建物の郷土史と言っても、この建物は18世紀末から21世紀初めまでアムステルホフ老人ホームとして使われていたそうなので、華々しい歴史があるわけではない。建物の角地には老人ホーム時代の管理者の部屋だろうか、質素な家具とタイプライターが置かれたテーブルがある部屋がある。ロシアの本館はロマノフ朝の宮殿を使っているので、ものすごい違いがある。建物の残りは、美術展用の広いスペースで、今回はロシアの現代美術家の展覧会が開かれていた。

15ユーロの入場料は、ちょっと高すぎるんじゃないかな…。

Metro
Waterlooplein(11:13発)→ Zuid(11:24着)
Metro Line 51, 運賃 1.99ユーロ(282円)
Bus
Amsterdam, De Boelelaan/VU(11:44発)→ Schiphol Plaza(12:05着)
Connexxion (Schiphol Sternet) Bus 310, 運賃 1.70ユーロ(241円)
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メトロ 南駅
Metro Zuid station

そろそろ飛行機に乗る時間が近づいたので、空港へ向かう。市役所の地下にあるワーテルロープレイン駅からメトロに乗り、南駅へ。駅を出て、高層ビルの立ち並ぶ金融街を通り抜けて、昨日空港からのバスを降りた自由大学前へ。結局、アムステルダム滞在のほぼ1日の間、太陽が顔を出すことは殆ど無かった。気温は例年になく高く暖かかったのだけが良かった点だろうか。

Airline
Amsterdam, Schiphol(14:35発)→ Larnaca(19:50着)
CY 0499
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キプロス航空 A320-231

ラルナカ行きのキプロス航空の飛行機は、クリスマス休暇の帰省客で満員だ。ざっと見まわしたところ、観光客は皆無のようだ。大量の荷物を抱えた客で、機内の荷物入れに荷物が入らない人が続出。飛行機は10分ほど遅れて出発した。欧州内といっても、フライト時間が4時間あるので割とまともな機内食が出た。トマトソースで煮たミートボールと、味付けされた米の温かいミールだ。チョコレート シュークリームのデザートまで付いていた。

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ラルナカ空港 (バス停より撮影)
Larnaca airport (view from bus stop)

ラルナカ空港には20分ほど遅れて到着。荷物を預けていないので、入国審査を終えてすぐに到着ロビーに出られた。市内へ向かうバス停を探すが、到着ロビーの案内表示にはバスのピクトグラムすら存在しない。そのあたりの人に聞いて、何とかバス停に到着。貼り出されている時刻表によれば、市内行きは毎時20分と50分発で最終便は23:50発。ただし、休日は数時間に1本しかない。今日が平日でよかった…。

Bus
Larnaca Airport(20:20発)→ Foinikoudes(20:35着)
Bus 425, 運賃 1.50ユーロ(213円)

Larnaca/Λάρνακα - Cyprus (ラルナカ - キプロス)

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空港から市内へ向かうバスに乗車したのは私だけ。アムステルダムからの飛行機には150人ほど乗車していたはずだが、地元の人はバスを使わないのだろうか。バスは結構なスピードで走り、時刻表より5分早くラルナカ市街地に到着。海岸沿いのフィニコウデス・プロムナード(アシノン通り)で下車。

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アシノン通り (フィニコウデス・プロムナード)
Athenon street (Foinikoudes Promenade)

砂浜に面した大通りには、10階建てほどのリゾートホテルがずらっと並んで建っている。歩いている人はまばらで、半分くらいの店が閉まっている感じだ。ホテルの窓もほとんどは真っ暗で、宿泊している人も少ないのだろう。かろうじて営業しているファストフード店やバーなどには、観光客なのか地元の人なのかわからないが、若者がそれなりに店に入って楽しんでいるようだ。人口5万人程度の街でなので、オフシーズンはこんなものなのだろう。

それにしても、今年の春に経済破綻して銀行のペイオフが行われた国とは思えない、この「のんびり感」は何なのだろうか…。

ネットで予約したホテルにチェックインする。部屋は、海に面したバルコニーがある5階の部屋。夏の観光シーズンなら、目が飛び出るくらいの宿泊料金を取るのだろう。ホテルのすぐ隣にある小さなスーパーで水(2リットル)とヨーグルトを買い(1.65ユーロ)、ホテルの1階にあるギリシャ系資本のファストフード店Goody'sでGolden Burgerをテイクアウトして夕食とする(3.2ユーロ, 454円)。バーガーキングの巨大バーガーWhopperに匹敵する652kcalの大きさで、値段的にもこんなものかな…。

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キプロスの歴史の流れの概要
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パウロス1世広場と市立ギャラリー
Vasiléfs Pávlos square and Municipal Gallery

オレンジ色の街灯に照らされた海岸沿いのアシノン通りを北へ。エジプト方向から吹いてくる南風が爽やかだ。冬とは思えない暖かさ…。道路沿いのリゾートホテルが途切れたところに、海運倉庫を流用したとみられる市立展示場と、県庁のあるちょっとした広場がある。その、誰も歩いていないパウロス1世広場の中心にはひっそりとクリスマスツリー、県庁の前には哲学者ゼノンの像がある。ストア派哲学の開祖であるゼノンが、紀元前4世紀にこの町で生まれたことを記念したものだろう。「ストア」はゼノンが教えを広めたアテネの古代アゴラにあったストア・ポイキリのことなので、この町で哲学が開祖したというのではないようだ。

2013年3月 キプロス金融危機での資産課税の主な内容は…
  • キプロスで最大のキプロス銀行の預金のうち、10万ユーロ(1420万円)を越える部分の60%を徴税した上、一部を凍結
  • 2番目に大きいライキ銀行を破綻処理し、10万ユーロを越える部分を凍結。(専門家の予想では、破綻処理後に預金者に返還される額はほとんど無い模様)

キプロス共和国は公的債務のGDP比は86.6%(2012年)。日本は230%(2011年)。日経BP Netの記事によれば、日本も1990年代に銀行預金への課徴金を行う予定が、情報が漏れたため急遽中止になったという事案があったそうだ(確か、デノミをするとか何とかいう噂があった)。最近は、インフレ誘導で実質的に国民の資産も国の負債も減価していくという壮大な計画が進行中だが、もしそれに失敗すれば、預金に課税したりハイパーインフレに誘導したりするのだろう。

キプロスの金融危機は、日本人にとっては決して他人ごとではないと思う。

Hotel
Les Palmiers Beach Hotel, 401号室
31.5ユーロ(4473円)