1994年 アメリカ横断旅日記 Across the USA by Train

September 29 〜 October 3, 1994 : Sightseeing in Chicago

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ミシガン通りとウォーター・タワー

Water Tower, North Michigan Ave.

ホテルに着いて荷物を置き、まず初めにしたのが地図の入手。ガイドブックに掲載されているのは方向や距離感がどうもいい加減なので、観光案内所できっちりしたものをもらうほうが良い。ミシガン通り沿いにある100階建てのジョン・ハンコック・センターの隣に観光案内所がある。すぐ横にはまるで灯台のような古めかしい給水塔 シカゴ・ウォーター・タワーが建っている。もらった地図は今年の夏に行われたサッカー・ワールドカップ用のものだ。沢山印刷して余ったのだろう…。

ロックンロール・マクドナルド

シカゴといえば、マクドナルド発祥の地だ。1940年にマクドナルド兄弟が始めた個人経営店を、実業家レイ・クロックが買収してマクドナルドシステム会社を創立し、1955年にその第1号店を開いたのがシカゴ郊外だ。そのため、ショールーム的(テーマパーク的?)なめずらしい店舗が建てられていて、ロックンロール・マクドナルドが世界的に有名らしい。何度か食事に訪れたが、店舗が広いのでのんびりと食事が出来る。

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シカゴ川沿い、リグリー・ビルとトリビューン・タワー

高層建築群

1871年の“シカゴの大火”で消失した市内中心部に、シカゴ派と呼ばれる建築家が設計した高層オフィスビルが次々と建てられた。

シカゴ川沿いにあるトウモロコシ型の駐車場ビルマリーナ・シティや真っ黒なガラス張りビルのIBMプラザはドイツのバウハウス様式。20世紀初頭に建てられたトリビューン・タワーやリグレー・ビルも有名。
もちろん、超高層建築のシアーズ・タワージョン・ハンコック・センタートゥー・プルーデンシャル・プラザアモコ・ビルディングも市内のあらゆるところから見ることができる。

そのほか、市内中心部にあるシカゴ商品取引所ビルマーチャンダイズマート・ビルも有名。

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シアーズ・タワーからミシガン湖方面の眺め

シアーズ・タワー

地上110階、高さ442mで、ニューヨークの世界貿易センタービルに次ぐ世界第二の超高層ビル。シアーズはアメリカやカナダで沢山のショッピングモールを運営している会社で、このビルが本社だそうだ。入場料は6.5ドル(650円)で、最上階まで登るエレベーターは2階建てだ。

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シカゴ L (地下鉄)

エレベーテッド・トレーン(シカゴ L

市街地中心部の高架橋の上を走る地下鉄。鉄橋には側壁が無いので、カーブの所では電車が落っこちてきそうな感じを受ける。高架橋上にある駅の床面が木造だったり、車両がギシギシと大音響を立てて走るなど、ボロボロ感たっぷり。この街が舞台の映画やテレビドラマでは、必ずと言ってよいほどこの鉄道が出てくる。市内中心部の料金は1.5ドル(150円)。

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フィールド自然史博物館

フィールド自然史博物館とグラント・パーク

たくさんの恐竜骨格が吹き抜けの広い館内に展示されている。元素周期表そのまま大きくして、実際に鉱物を全て展示しているものや、エジプトの王の墓をそのまま移築したものなど、スケールの大きな展示が多い。研究者の研究スペースが展示場内にあって、学芸員や研究者が見学者に直接説明していたりする。

グラント・パークからはシカゴ中心部の高層ビル群が一望できる。シカゴ美術館、巨大なバッキンガム噴水、リンカーン像もこの公園の中にある。

October 4, 1994 (Tuesday)

Chicago - USA (シカゴ - アメリカ)

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シカゴ ユニオン駅 コンコースの大階段

Chicago, Union Station Great Hall

デイリー・プラザの南にあるサラダバーで昼食を食べる。隣に座っている女性から、この重たそうな荷物を持って旅してるの?と聞かれる。10kgくらい普通だと思うのだが…。シカゴ最後の昼食を済ませた後、シビック・オペラハウス前の橋を渡り、シアーズタワーの裏手にあるユニオン駅に急ぐ。ユニオン駅の横には旅行保険でおなじみのシグナ保険の巨大なオフィスビルがある。ここで交通事故にあっても、あのオフィスビルにさえたどり着ければ大丈夫だろうなどと考える。

ユニオン駅に入る。映画アンタッチャブルでエリオット・ネス捜査官が銃撃戦を繰り広げた階段がある。乳母車の転がり落ちた、あの階段だ。階段を降りたところが、メトラとアムトラックのコンコースとなっている。巨大な吹き抜けで、立派な大理石風の柱が天井を支えている。駅構内は補修工事の真っ只中で、そこらじゅうが通行止めとなっている。コンコースのテレビには発車時刻案内が映し出されているが、ほとんどはメトラのものだ。メトラ以外でアムトラックも近郊列車を出しているようだ。

寝台車の乗客専用待合室「メトロポリタン・ラウンジ」に向かう。ニューヨークのそれよりも豪華で、広い。シカゴはアムトラックのハブ駅なので、沢山の乗客が待合室でくつろいでいる。

Chicago → Seattle

Train
Chicago, Union Station(15:15発)→ Seattle, King Street Station(+2 day 08:30頃着)
Amtrak, Empire Builder エコノミー寝台料金 320ドル(32,000円) + USA Railpass 218ドル(21,800円)
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エンパイア・ビルダー号

Empire Builder (at Minot Station)

14時45分、乗車開始。ホームに降りると、2階建ての巨大なスーパーライナーの車両が停車している。いままで経験したことのないような大きさの車両だ。0730号車を見つけ1階の14号室に入る。15時15分、発車。シカゴ北部の裕福な住宅街を抜け北上する。時折ミシガン湖が見える。住宅・企業・工場・田園が入り乱れた地域を走り、16時50分頃ミルウォーキーに停車。ミルウォーキーを出発すると、なだらかな丘の続く農場地帯を走る。

ここで部屋の紹介をする。私の乗っているのはエコノミー寝台車だ。部屋には窓が1つあり、ブロードウェー・リミテッド号と同じようなベッドにもなる椅子が左右にある。窓の上には斜向きに持ち上げられている上段のベッドが格納されており、2人部屋だ。部屋の中には洗面所やトイレは付いていない。廊下側にはクローゼットがあり、通路との間にはガラスのような両開きの扉がある。2階建て車両なので天井が心持ち低いような気がする。窓の上部には非常時に窓ガラスを取り外すための赤いレバーが付いているのもブロードウェー・リミテッド号と同じ。

0730号車はカナダ製のダブルデッカー車で、車両中央部に階段がある。隣の車両に行く貫通扉は2階にある。階段よりシアトル側は1、2階とも廊下を挟んでエコノミー寝台室が並ぶ。1階のシカゴ側はシャワールームと洗面所。2階のシカゴ側はデラックス・ベッドルームとなっている。1階の両側の奥はファミリー寝台室という大きな部屋となっている。

0730号車より先頭車両に向かって、隣がドミトリー・コーチ車のクロスシート座席で乗務員の仮眠車両として使用している模様。その前には貨車が2両と、ディーゼル機関車が3両だ。0730号車から最後尾に向かって、隣はコーチ車で、1、2階ともクロスシート座席だ。1階の一部分は貨物室となっているようだ。コーチ車には修道院の修道女の集団が乗っていて、決まった時刻になると讃美歌を歌っている。その他の客もいっしょに歌っている事もある。その後ろは食堂車で、2階がレストランで1階は調理室となっている。その後ろにラウンジ車両。車体には“食堂車”と書かれているが、実際は売店とラウンジとして使っている。中央辺りの売店をはさんで禁煙と喫煙に分かれている。その後ろ2両はコーチ車で、最後尾に0730号車と同じタイプの寝台車がつながれている。13両編成のエンパイア・ビルダー号はどの車両も満員のようだ。

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ウィスコンシン州の車窓

at Wisconsin

車掌が夕食の予約を取りに来る。17時30分、18時15分、19時の3回の時間から好きな時間を選べるそうだ。寝台車の客より座席のクラス順に予約を受け付けるので、コーチ車全員の分まで座席数が無いので、予約できなかった人はラウンジの売店を利用してほしいとの放送がある。寝台車のチケットの威力はかなりなものだ。18時15分の席を予約する。

白黒の牛が放牧されている農場の中を列車は走っている。辺りが夕焼けにつつまれ、小さな町の近くでは家路を急ぐ車が踏切りを待っている。18時10分頃、食堂車へ。ウエイターが座席を割り振って行く。食堂車は相席で全席満員になる。巨大ステーキのセットメニューを食べる。同じテーブルの女性はチキンを頼んでいたが、出てきたチキンが0.5匹分あったので驚いていた。暮れ行く夕日を見ながらの夕食の味は格別だ。食後はラウンジ車に行き20時からの映画の上映を待つ。今夜の映画は「フリント・ストーン」だ。

単線を走る列車は対向列車をやり過ごすために、時折停車する。対向列車は圧倒的に貨物列車が多い。轟音を響かせながら、貨物列車のディーゼル機関車が通過して行く。23時頃部屋に戻り寝る。

October 5, 1994 (Wednesday)

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ノースダコタ州 マイノット駅

at Minot Station

朝目覚めると、列車は牧草畑の中を走っている。刈り取られたところと、休耕地が巨大なストライプ模様となっている。刈り取られてドラム缶のように丸められた牧草が転がっている。想像していた通りの大西部の風景だ。車掌が今朝のUSAトゥデー新聞とジュースを持ってきてくれる。これも寝台料金に含まれているようだ。

7時30分頃、食堂車に朝食を食べに行く。朝食のセットは2種類あり、ベーコンとスクランブルエッグの方を食べる。寝台車の乗客はすべての食事が無料だ。私にとっては、今まで経験した事の無い待遇の良さだ。9時30分頃、マイノット駅に停車。20分くらい停車するので外に出て良いと車内放送がある。小さな駅舎と地面にコンクリートを張っただけのホームがある駅だ。駅前には、商店が数軒と、安宿が数軒ある。この次にいつ車外に出られるか分からないので、大きく深呼吸して車内に戻る。

ラウンジ車に行くと、暇を持て余している人たちが同様に集まっている。車窓の景色を見ながらおしゃべりを楽しむ。ポートランドに里帰りするという精神分析医が、周りの人の悩み事を聞いていたりするし、車窓の風景をエッセイにしているおばあさんもいる。いろんな種類の人が乗り合わせているが、年配の夫婦連れが目だって多い。南側に蛇行して流れるミズーリー川が見えてくる。牧草地や小麦畑の中で、川の周りにだけ樹木が生えている。堤防に囲まれた日本の川に比べ、何と自然な川だろうか。時折、油井の機械が見える。この辺りでは石油が採れるようだ。飛行機から見ると円形にみえる人工的に灌漑している小麦畑が増えてくる。降水量の少ない地域に来たようだ。

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モンタナ州での車窓

at Montana

列車の最後尾の貫通扉の窓から後ろを見る。どこまでも続くまっすぐな線路と起伏の少ない大地が、大陸横断鉄道に乗っている事を実感させる。いつまで見ていても同じ景色が流れ去ってゆくのは感動ものだ。車窓の風景は、牧草地・小麦畑から荒れ地に変わりつつある。時折、放牧されている茶色い牛をみかける。馬を放牧しているところもある。地平線まで山も丘もなく、空の雲も向こうの地平線から同じパターンで縞縞の雲となっている。

16時頃、ハバー駅に停車。小さな駅舎に売店があり、駅舎の横にはグレート・ノーザン鉄道を記念する蒸気機関車#2584号と米加友好モニュメントがある。カナダとアメリカの国旗が翻っていて、列車がカナダとの国境に沿って走っていることを改めて認識する。この駅でディーゼル機関車に燃料を補給している。運転手も交代するようだ。

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ハバー駅、グレート・ノーザン鉄道の蒸気機関車

Great Northern Railway locomotive #2584 at Havre

日も傾く頃となり、なだらかな丘の間を列車は迂回するように走る。丘の谷間は湿地になっているところや、岩がごろごろあるところなどある。カナダの国境の方に、小さい山がぽつぽつ見えては消えて行く。西の空が真っ赤に染まり、太陽が沈んで行く。幻想的な夕日にカメラを向ける人も多い。食堂車で暮れ行く景色を見ながら、横断鉄道最終日の夕食を食べる。日が暮れた20時頃、グレーシャー・パーク駅に停車。このすぐ北側には、アメリカとカナダの共同の国立公園があり、駅名が示すように本当に氷河があると車掌に教わる。停車中に少しだけ外に出ると、かなり寒い。駅のホームの横には残雪が残っている。

列車は大平原から山岳地帯に入る。カーブの多い路線を警笛を鳴らしながら時速80キロくらいでのぼって行く。先頭の機関車に付いているフラッシュがピカピカと森を照らしている。衝突防止用のフラッシュなのだろう。車内放送によると列車の運行が少し遅れているらしい。今夜スピードアップして、明日朝には遅れを取り戻すそうだ。今夜最終の車内放送では、食堂車とラウンジ車の間でシアトル行きとポートランド行きに分割するので、24時にはそれぞれの席に戻るように案内がある。車窓には雪がびっしり積もるようになり、真っ暗なロッキー山脈をどんどん登って行く。

October 6, 1994 (Thursday)

真夜中の2時頃、スポケーン駅で列車が切り離されたのはまったく気づかなかった。朝起きると、針葉樹の森の中の下り坂を走っている。朝食を食べに食堂車に行く。貫通扉の窓より後ろの景色が見える。食堂車が最後尾の車両となったようだ。オムレツを食べる。昨日までの乾燥した景色と違い、霧雨の降る山の中を走っている。軌道の横の山肌には、所々小さな滝ができている。
貨物列車の通過待ちをする。韓国の現代グループのコンテナを2段重ねにした長大編成が、ゆっくりと山を登って行く。アメリカでは一般的になった韓国製品が、このように輸送されてゆくのだなと実感する。日本製品が売れていた頃には、トヨタやパナソニックのコンテナも通ったのだろうか。

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シアトル、キング・ストリート駅

Seattle, King Street Station

突然海が見える。太平洋につながるピュージェット湾だ。海面すれすれに作られた軌道を走り、小さな町に出たところで停車。エヴァレット駅だ。ボーイングの工場がある事でも有名な町だ。駅の横の岸壁には材木が大量に積まれている。輸出用だろうか。海沿いに走り、ヨットハーバーなどが見え、シアトルの北より市内に入る。スペース・ニードルが見える。列車はすぐにトンネルに入り、終着駅シアトル キング・ストリート駅に到着。予定時刻より2時間早い8時30分だ。荷物を背負って列車を降りる。顔なじみになった車掌が「いい旅を!」と送り出してくれる。

Hotel
Bush Hotel
33.5ドル(3350円)/1泊 (ダブルルーム 朝食無し)

October 6 〜 October 7, 1994 : Sightseeing in Seattle

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ウォーターフロント・パークからの眺め

キング・ストリート駅の東側はチャイナタウンと呼ばれる地区で、駅北側に広がる高層ビルが建ち並ぶ市街地中心と違い、古い中層ビルが並んでいる。駅を背にサウス・ジャクソン通りを東へ歩いてゆくと、レトロな6階建てのビルのBush Hotelがある。古めかしい木の入口ドアを開けて、薄暗いエントランスホールに入る。受付の人に尋ねると、1泊33ドルだという。シカゴより安いから、ここでいいやということで、2泊することにする。

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スペースニードル

Space Needle

チャイナタウン

Bush Hotelの周辺は一応チャイナタウンで、ホテルのある建物の1階も架橋の店舗が入っている。久々に見る漢字の看板や貼り紙に、どことなく懐かしさを感じる。駅の方に少し戻ると、宇和島屋という日系のスーパーマーケットもある。中国も日本も、アメリカ人から見たら黄色の人なので同じなのだろう。この付近は建物よりも空き地や駐車場、使ってるかどうかよく分からない倉庫などが沢山あって、其のうち再開発で一気に変わりそうな感じがする。

シアトルセンターとスペースニードル

市街地中心部のショッピングモール ウエストレイク・センターから、1962年の万博の時に造られたモノレール(往復1.8ドル, 180円)に乗って数分のところにあるのが、シアトルセンター。科学館や展望塔スペースニードルがある広い公園だ。

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パイク・プレイス・マーケット

Pike Place Market

ウォーターフロントとパイク・プレイス・マーケット

市街地中心部のエリオット湾沿いは、アメリカで最も古く20世紀初頭から営業している農産物・海産物市場パイク・プレイス・マーケットがある。もちろん、いまでは農産物・海産物市場はごく一部で、ほとんどはレストランや雑貨店などになってしまっている。観光的には、おそらくここが一番の見所なのかもしれない。

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トンネル・バス、ウエストレイク駅

Tunnel Bus Westlake Station

市街地中心部の無料バス

市街地中心部のバスは全て無料。渋滞を避けるため専用トンネルの中を走っているバスも、中心部からキング・ストリート駅のところまでは無料。アメリカでは珍しい、市街地中心部に自家用車を乗り入れさせないための政策なのだろう。