中国武漢・南京 旅日記 : 南京(5日目)
March 10 (Saturday)
Nánjīng - China (南京 秦淮区 - 中国)
6時過ぎ起床。外は快晴。7時少し前、チェックイン・カウンターのある本館へ行き、朝食。武漢で宿泊した同系列のビジネスホテルなので、朝食バイキングのメニューもほとんど同じだ。歯ブラシや石鹸、タオルといった居室のアメニティ用品もほぼ同じなので、当たり外れを心配する必要もなく安心できると思う。
のんびり朝食を食べ、部屋で太陽がじゅうぶん昇るのを待ってから、8時半頃観光に出かける。まずはホテルをチェックアウト。朝食料金18元を微信支付で支払う。
ホテルのすぐ前の中山南路の横断歩道を渡り、张府园站の出口付近に大量に乗り捨てられているmobikeの自転車を借りる。
シェア自転車 mobike, 運賃 1元(17円)
中山南路、长乐路、中华路を通り2kmほど南へ。明代に形作られた南京旧市街にあった13箇所の門のうちの一つ、中华门(中華門)に到着。かつては「聚宝门」と呼ばれていたそうだが、中華民国時代に現在の名前に改名したそうだ。中华门は、中国に残存している城門の中で最大級のもので、四重の補助門を設けた
門の見学と旧市街を取り囲む城壁の上に登るための入場料は50元(850円)。微妙に高く感じる値段設定。城門(城壁)内部の部屋では門の歴史を解説する写真や図面などが展示されている。この門が防御施設として最初で最後の大活躍をしたのが、日中戦争における1937年12月の南京攻略戦(南京保卫战)でのことだ。城門内の展示室でも紹介されている、日本軍の戦車が集結して中華門を砲撃する写真は、戦車ではなく九四式軽装甲車だ。南京城の分厚いレンガ壁に、装甲車の機関銃程度では太刀打ち出来るはずがない。結論を言えば、ダイナマイト爆弾を城壁に取り付けて爆破したのだ。
ドイツのVI号戦車(ティーガー)やソ連のIS-2重戦車などが仮にこの場に登場していれば、城壁を砲弾で撃破という派手なドンパチをやらかしただろう。第二次大戦期の東アジアの戦車戦は、欧州に比べ技術が低レベルすぎて話にならない。
中華門の屋上には、中世の攻城兵器が展示されている。車載式の大型クロスボウ(弩)、トレビュシェット(投石器)、大砲など…。中世に造られた城壁・城門は、こういう中世の攻城兵器に対して設計されたものだ。
ただし、大砲が発明された後の時代では、砲弾で壁が撃破されるのを防ぐため城壁は半地下式となり、十字砲火が可能な星形要塞・多角形要塞に進化していたはずだ。戦車技術と同じく、要塞の技術も東洋では欧州ほど進化しなかったのだろう。
城門をくぐり抜け城外へ出ると、城壁を取り囲む外濠沿いが公園(东干长巷公园)となっている。去年、南京城の西側にある清涼門付近を観たが、そこも外濠沿いは公園だった。
ここの公園には「社会主義核心価値観」をアピールする派手な電飾人形がそこら中に設置されている。
シェア自転車を借り、市内中心部にある南京总统府(総統府)を目指す。城壁の上から観た真新しい屋根の民家が並んだ地区、中華門東側に広がる「老门东」景区のどまんなかを横切る。飲食店や商店を集めた老街を作ろうとしているのだろう。真新しい老街風の建物が延々と建ち並んでいる。年6%で経済成長し続ければ、いずれここも夫子庙付近のような立派な観光地になるのだろうか。
歩行者天国の夫子庙を回避し、3kmほど洪武路を北上。中山東路に入り東へ。まもなく総統府に到着。天気が良いので、サイクリングは極楽だ。
中华门瓮城(09:56発)→ 南京总统府(10:26着)シェア自転車 mobike, 運賃 2元(34円)
さて、今回の旅行で武漢の辛亥革命武昌起义纪念馆を観た後に、この南京总统府に来たのは、今回の旅行の目的の一つ「中華民国の建国史跡を観る」に沿って観光してるためだ。武漢の旅日記で引用した山川出版「もう一度読む世界史」を再び引用する。『1911年、清朝は … 財政難解消のために幹線鉄道を国有化して、それを担保として外国からの借款を得ようとしたことから、各地で反対運動(保路運動)が起こり、四川では暴動となった。このため同年10月10日、武昌の軍隊が蜂起し、革命の口火をきると(辛亥革命)、たちまち各省に広がり、1912年1月、南京に孫文を臨時大総統とする中華民国が成立した』と書かれている。この1912年1月1日に孫文が中華民国臨時政府の臨時大総統に就任したのが、まさしくここ南京総統府だったのだ。
入場料は40元(680円)。見所多いのに、値段はかなり良心的。正面入口となっている門楼をくぐり中に入ると、西・中・東に三分割された景区のうちの中軸線(主軸線)にあたる区画だ。瓦屋根と朱色の列柱で造られた宮殿風の建物が建っている。奥に向かって大堂、麒麟門、会客庁と続く。これらは太平天国の乱(1851〜1864年)の時に南京に本拠地を置いた洪秀全が造った宮殿「天王宮」の跡だそうだ。その後、1912年の中華民国建国時に臨時大総統府として使われた。
入り口正面にある大堂には、孫文が好んで使ったキーワード「天下為公」の横扁額が掲げられている。ここで記念写真を撮影する人が多数。さらに奥に進むと洪秀全が執務したという天王机密室(天王機密室)があり、「太平一統」の横扁額が掲げられた天王宝座がある。中華民国と太平天国がごっちゃになった展示で、なかなか面白い。
一番奥の建物、政务局办公楼や子超楼は中華民国建国時の歴史資料や、日本が南京を占領した当時の戦時資料などが展示されている。南京戦の展示内容では大虐殺には軽く触れる程度で、南京大屠殺紀念館と展示内容で住み分けているのだろうか。
西軸線と呼ばれる景区の西側区域へ。こちらは太平湖を中心とした庭園を取り囲むように、总统府图书馆(図書館)や孙中山临时大总统办公室(孫中山臨時大総統弁公室)など中華民国の指導者層の執務室などがある。
景区の東側、東軸線の方へ行くと中華民国行政院の事務所などがある。事務所の机の上には書類などが積み上げられ、西軸線の指導者層の机とは再現デザインを明確に変えている。
昼になったので食事に向かう。シェア自転車に乗り、昨日の晩ごはんを食べた洪武路の苏发大厦付近に向かう。
南京总统府(12:06発)→ 洪武路 苏发大厦(12:16着)シェア自転車 mobike, 運賃 1元(17円)
昨晩夕食を食べた苏发饭堂のすぐ横にある客来福大食堂に入る。牛肉と野菜の炒め物、豚肉と野菜の炒め物の2品を選択。19元(323円)。この手の中式快餐は、どこもメニューは似たりよったり、味も似たりよったりだ。逆に言えば、当たり外れがないということか…
食後、南京駅で列車に乗らなければいけない時間まで、あと2時間程度ある。市街地に近い南京駅なので、あと一箇所、観光地を観れるはずだ。南京駅へ向かう途上にある鸡鸣寺(鶏鳴寺)に向かうこととする。
洪武路 苏发大厦(12:44発)→ 鸡鸣寺(13:05着)シェア自転車 mobike, 運賃 1元(17円)
洪武路をひたすら北上する。中山東路をこえてしばらくすると、自転車専用レーンが歩道と一体化されたりして、段々と道路が安っぽくなってくる。北极阁公园の林で道が行き止まりになり、东南大学沿いの道を東へ。すぐに鸡鸣寺に隣接する和平公园となる。自転車を公園の駐輪場に置き、玄武湖公园や鸡鸣寺に向かう大量の行楽客に揉まれながらお寺の入り口に到着。拝観料は10元(170円)。どこのお寺も拝観料が10元なのは、決まり事でもあるのだろうか。
西晋時代に創建された南京屈指の古寺。和平公園付近からも見えた高さ44.8mの七重の塔の薬師仏塔は1991年に、大雄宝殿は1994年に再建されたものだそうだ。いくらお寺の歴史が古いと言われても、主要な建物が全て新しいのでは…。
南京駅へ向かう時間が刻々と迫り、観光も早々に切り上げて地鉄駅へ向かう。
鸡鸣寺(13:35発)→ 南京站(13:41着)地铁3号线, 運賃 2元(34円)
地鉄3号線の南京站の出口は、長距離バスターミナルなどがある国鉄南京站の北側だ。駅舎は南北に分かれていて、連絡通路はなさそうだ。候车区(待合室)は列車番号ごとではなく一つの部屋だけ、検票口(改札口)も2つしか無い小ぢんまりした駅だ。多くの高速列車が南京南站を発着するようになったので、市街地に近い南京站に乗り入れてくる列車はそれほど多くないのだろう。
南京(15:00発)→ 上海(16:40着)高速动车 G7017, 一等座運賃 219.5元(3,731円)+ Ctrip予約料金20元
改札は出発の10分前から。プラットホームには南京始発のCRH2C型高速列車が既に停車している。この車両は日本の新幹線E2型を技術供与した第1世代の高速鉄道車両。型番の末尾がA,B,Cと新しくなるにつれ中国のオリジナリティが発揮されたようで、C型は先頭車両のライトが目つきの悪い“吊り目”に変更されている。日本人的には残念な発展形だと思う。
南京と上海の間は、京沪高速铁路と沪宁铁路の2つの高速鉄道路線がほぼ並行して造られている。前者は南京南駅を通る速達型の列車が1時間で結び、後者は南京駅を通る途中駅停車型の列車が1時間半から2時間で両都市の間を結んでいる。
今回乗ったG7017は、後者の途中駅停車型で、車内は満員御礼状態。それほど古い車両ではないのだが、内装の樹脂壁が若干黄ばんでいて老朽化を感じた。ただ、車内でGPSの受信感度が良い利点があった。列車は途中の主要駅全てに停まるわけではなく、ひとつ目の大都市の鎮江站は通過。この駅は去年の春は工事中で、取票(予約切符の受け取り)するため長距離を歩いて迂回した苦い思い出がある。車窓から観た限りでは駅舎は完成しているようだ。常州站、无锡(無錫)站、苏州(蘇州)站には停車。どの街も郊外には高層マンションが林立している。蘇州は2009年に上海から高速鉄道に乗って訪問したことがあるが、当時とは全く違う最新の駅舎になっている。列車は、駅間を300km/hを少し超えるくらいのスピードで走り、ときおり遠くに京沪高速铁路を走る列車が見える。
去年、南京から上海へは京沪高速铁路を走るノンストップの列車に乗った。所要時間はきっかり1時間だったが、上海側の到着駅が市街地から思いっきり遠い上海虹桥站だった。南京も市街地から遠い南京南站の出発。いくら高速列車の乗車時間が短くても、終着駅から市街地までの地下鉄の乗車時間が長ければ、“速達感”が無い。この辺りが、南京駅から上海行の途中駅停車型の列車に乗る人が多い所以なのだろう。
Shànghǎi - China (上海 - 中国)
上海站の駅前はデパートなどが建ち並んでいるが、歩道に所狭しとシェア自転車が駐輪されていて歩きにくい。その選び放題のシェア自転車から1台を選ぶ。
スマートフォンの百度地図で現在位置を確認しながら、南京東路歩行街を目指す。梅园路を南下していくと、だんだんと殺風景な高層マンション街となる。いわゆる下町の住宅街や、雑居ビルが建ち並ぶ都心ではなく、区画整理されてゆったりとした敷地にマンションだけがニョキニョキと建っている地区。
苏州河(蘇州川)を恒丰路桥(恒豊路橋)を通って渡り、静安雕塑公园を東に折れる。この辺りから、少しずつ雑居ビルや低層マンションが建ち並ぶ下町的な雰囲気になってくる。人民広場站付近の高層ビルが間近に迫ってきた。南北高架路の下を走り、人民広場の1本北側の道を東へ。この辺りまで来ると、電動スクーターや自転車が入り乱れるように走っている。大量の自転車にもまれながら西藏中路の信号を渡り、南京路歩行街を横断、世纪广场の横で自転車を降りる。
世紀広場に公共厠所(公衆トイレ)があるので、ありがたく使わせてもらう。夕食は、南京路歩行街の1本北側に見つけた中式快餐の蒸膳美大食堂で食べる。水蒸蛋(巨大な茶碗蒸し)と鶏肉の炒め物で17元(289円)。この巨大茶碗蒸しを一度食べてみたかったので、上海市内に立ち寄ってよかった。
食後、南京路歩行街の夜景撮影。2日前に歩いた武漢の江汉路歩行街に比べ、何倍もの人の多さ、建物のきらびやかさだ。ただ、ここには日本人観光客とわかれば怪しく客引きしてくる按摩屋がいるのが興ざめだ。
南京东路站付近のお店で、おみやげ用のクッキーを買う。1箱25元(425円)。スマートフォンのバッテリーが切れかけなので、微信支付のアプリが起動せず、現金で支払う。すぐ近くのメイソウの店に入ると、スマホ用のモバイルバッテリーを数百円で販売している。ダイソーのパクリと思っていたら、いつの間にか無印良品のような少しおしゃれな品揃えの店になっている。
南京东路(18:50発)→ 广兰路(19:16着 19:20発)→ 浦东国际机场(19:56着)地铁2号线, 運賃 7元(119円)
地鉄に乗り上海浦东机场(上海浦東空港)に向かう。明日の早朝の飛行機に乗るため、今日は空港ホテルに泊まる予定だ。地鉄2号線は、全ての列車が广蘭路站で乗換になる。市内中心から来た8両編成の列車が、ここで4両になり、さらには運転頻度が半分になるので車内は猛烈に混雑する。
浦东国际机场站ではたくさんの乗客が降りたが、ほとんどの便の出発が終わっているので、空港内は閑散としている。第1・第2ターミナルのちょうど中間に地鉄站があり、その地鉄站の真上が空港ホテル「上海大众空港宾馆」だ。ホテルのチェックインカウンターには、日本のどこかの企業の出張族が団体で並んでいた。ガイジンは外国人入境出境管理法第17条の办理住宿登记(外国人宿泊登記)をホテルが代行するため、チェックインの行列がなかなか進まない。15分ほどでチェックインが終わり、押金800元をクレジットカードで仮払する。
昨日まで宿泊したビジネスホテルとは違い、部屋の内装は少しだけ上質感がある。1泊7,000円以上払っただけはある。ただ、短時間寝るだけなのでもったいない。
上海大众空港宾馆6667号室 ダブル ルーム 448元(7,616円)/1泊
March 11 (Sunday)
3時45分起床。4時チェックアウト。押金のクレジットカード伝票が返却され、新たに448元の支払をした。
これから乗るピーチ航空は2号航站楼(第2ターミナル)出発だと、空港のWebページで事前に調べておいた。早朝なので、まだあまり人が歩いていない。到着ロビーのコンビニは閉店している。空港のコンビニなのに24時間営業じゃないのか…。
ピーチ航空のチェックイン・カウンターには10人程度の行列ができていた。こんな朝早くにチェックイン出来るとは、みなさんどういう交通機関を利用しているのだろうか。セキュリティ・チエック、出国審査を受けて待合室へ。ココの喫茶店などは早朝にも関わらず営業しているが、価格が市街地に比べてべらぼうに高い。空港の店はどうしてどこもボッタクリなのだろうか。日本から持参したエナジーバーと湯で朝食。さらに、空港内で唯一まともな金額で販売していたバーガーキングで、ワッパーJrを購入。15元(255円)。
上海浦东机场 (06:25発)→ 関西空港(09:05着)ピーチ航空 MM80, 運賃+諸税+クレジットカード手数料 614元(10,438円)
過去の運行履歴では定期的に2時間以上遅延しているこの路線、今日はほぼ定刻通り飛んでくれた。定期的に、意図的に遅延しているのなら、この便の出発を8時以降にずらしてくれれば、地鉄の始発に乗ればチェックインが可能になる。きっとそう出来ない大人の事情があるのだろう。
関西空港 第2ターミナル(08:23発)→ 第1ターミナルシャトルバス, 運賃無料 関西空港駅(09:43発)→ 新今宮駅(10:29着)
南海電車 空港急行, 運賃(回数券バラ売り) 710円 新今宮駅(10:38発)→ 福島駅(10:49着)
JR 大和路快速, 運賃 180円