ポルトガル、ガリシアとパリ、ケルン旅日記 : アムステルダム
December 27, 2008 (Saturday)
Köln - Germany (ケルン - ドイツ)
昨日よりさらにパワーアップして寒くなった朝。最低気温は氷点下6℃だ。ユースホステルで質素な朝食を食べた後、ライン川に架かるホーエンツォレルン橋を渡ってケルン中央駅へ。橋の上はほとんど無風で、日の出直前の快晴の空は紫色からオレンジ色にだんだんと変化している。細長い貨物船が川を行き交っているのが見える。6本の線路が引かれている鉄橋には、およそ1分毎に高速列車から普通列車まで様々な種類の列車が通り過ぎてゆく。高速鉄道が在来線に乗り入れている欧州ならではの風景だ。
中央駅よりフランクフルト発のICEに乗車。16両編成の列車はこの駅で前半分のブリュッセル行きを切り離し、後ろ半分だけがアムステルダムに向かうようだ。私の予約した2等コンパートメントには、ロシアから来た若い夫婦が既に乗車していた。これから行くアムステルダムは寒くないかとか、イタリアのローマに行った時のように道に迷わないだろうかというのが心配だと言っていた。
ロシア人なのに、氷点下6℃程度で寒いと感じるのだろうか…。それはさておき、アムステルダムはコンパクトな街なので、観光地がある地区だけなら中央駅からぎりぎり徒歩圏内なので迷うことはないと教えてあげておいた。
Köln Hauptbahnhof(08:48発)→ Amsterdam Centraal(11:35着)ICE 226 運賃 (インターネット予約)21ユーロ(2604円)
列車は定刻通り出発。ケルンを出て2駅ほどの間、隣の線路にウイーン南駅発アムステルダム行きの夜行列車が並走していたが、なぜかICEのほうが小さな駅に運転停車して夜行列車のほうが追い越して先に行ってしまう。高速鉄道が在来鉄道に抜かれるのはおかしいだろ…。高速専用軌道を走らない高速鉄道は、きっとそのあたりの快速列車と同じような扱いなのだろう。ということで、夜行列車が優先という事になるんだろうね。
喉が乾いたので、車内のカフェテリアへ。コーヒーが2.7ユーロ(334円)と、オランダ国内のインターシティ車内のワゴンサービスとほぼ同じ価格だ。高速鉄道だから特別に割高設定しているという事でもないようだ。しかし、東欧の鉄道では同じくらいの価格で軽食が食べられるので、同じヨーロッパでも物価の違いは大きいようだ。
列車は高速鉄道車両の威力を全く発揮せず、在来線をのんびりと走って、予定より10分ほど遅れてアムステルダム中央駅に到着。こちらの天気も晴れていて、ケルンと同じくらいの気温だ。今回の旅行は運がよく晴れの天気ばかりだ。BBCのニュースによれば先週まで滞在していたポルトガルでは、大雨が降っているそうなので、うまい具合に悪天候にあわずに旅行できているようだ。
Amsterdam - Netherlands (アムステルダム - オランダ)
中央駅前の観光案内所で48時間券を購入(11.5ユーロ, 1426円)。さらに、ホテル予約の行列に30分ほど並んで、ミュージアム広場付近の1泊30ユーロのB&Bを予約した。予約手数料は4ユーロ。駅前よりトラムに乗り、一旦ホテルに荷物を置きに行く。B&Bはフォンデル公園の横の静かな住宅街のアパート内にあり、入口に看板などが出ていないので、何度か前を行ったり来たりしてしまった。とにかく、荷物を置いて身軽になり、再びトラムに乗ってアムステルダムの東の外れにあるダッペル市場へ。
Centraal Station(12:30頃発)→ Hobbemastraat(12:40頃着)Tram line 5 運賃 48時間乗車券 11.5ユーロ(1426円) Van Baerlestraat(13:10頃発)→ Dapperstraat(13:30頃着)
Tram line 12 運賃 48時間乗車券 11.5ユーロ(1426円)
ナショナル・ジオグラフィックによれば、ダッペル市場は世界10大露天市場のうちの一つらしい。オランダ商人にはクリスマス休暇という文字はないのか、普通ならクリスマス休暇中の今日も大賑わいだ。歩いている人は明らかにオランダ人じゃない人々が多いようで、キリスト教じゃないからクリスマスも関係ないのかもしれない。しかし、いくら移民が多いオランダ(オランダ国内人口の20%は外国籍)だからといって、この露天市場を歩いている人の過半数以上が外国人とは…。
欧州各国で露天市場がある所では、青果の店が多い場合が多い。しかし、この露天市場は雑貨や衣料品の店が過半数以上で、そのほかチーズなどの乳製品やカステラ菓子などの加工食品の店があるくらいだ。スーパーマーケットが市場を席巻してしまい、生鮮食品の小売店が成り立つような状況ではないのだろう。そう言えば、昼食をまだ食べていなかったので、露天で”オランダ名物ニシンの酢漬け”ハーリング(1.8ユーロ, 223円)とパンで軽く昼食。酸っぱいピクルスが添えられていて、なんとも言えない美味しさだ。
商店街の出口付近で“社会主義新聞 De Socialist”を配っている若者が居る。経済的格差の“下の方”になりがちな移民層に訴えかけることは重要なのだろう。“ぜひ日本でblogに掲載して宣伝してくれ”と新聞を手にガッツポーズで写真撮影に応じてくれた。露天を見て歩くと、3ユーロの服、1ユーロの下着と、北アフリカや中国から輸入された服飾雑貨が投げ売り価格で売られている。露天のパン屋に至っては、1ユーロ均一でクロワッサンが3個とか詰め合わされて売られている。日本では客寄せのための特売品を100円で売る“100円商店街”があるが、ここは売られている全ての商品が激安品という店が多い。商品原価ってなんなのだろう…と考えさせられる。
Muiderpoortstation(14:20頃発)→ Station Duivendrecht(14:40頃着)Bus line 41 運賃 48時間乗車券 11.5ユーロ(1426円)
たまたま通りかかったバスに乗り、終点のダイフェンドレヒト駅へ。国鉄の路線拡張で1993年に造られた新しい駅で、現代美術作品のような幾何学的なデザインの駅舎だ。駅のプラットホームにはちょうどポーランドのシュチェチンからやって来た列車が停車している。始発から乗ったら何時間掛かるんだろうか…。
ダイフェンドレヒト駅のプラットホームから南を見ると、すぐ側にアムステルダム・アリナの巨大な建物が見える。有名なプロサッカーチーム アヤックスのホームグラウンドだ。駅舎やスタジアムなど巨大な建物がポツポツと並んでいる地区なので距離感がなかなか掴めないが、すぐ側に見えるスタジアムまで地下鉄で2駅の距離がある。
Duivendrecht(15:05頃発)→ Bijlmer ArenA(15:08頃着)Metro line 50 運賃 48時間乗車券 11.5ユーロ(1426円)
地下鉄駅を出ると、スタジアムとの間に家電量販店Media Marktがある。今日はサッカーの試合はやっていないようなので、こちらの方向へ歩いて行く客はほとんどが家電量販店に入っていくようだ。スタジアムと逆の出口方向は高層アパートが建ち並ぶ地区で、1992年に起きた貨物機の墜落事故でB747が突っ込んだ高層アパートがある場所でもある。アパート群の中に、アムステルダム周辺では最大級のショッピングモール アムステルダム・ポートがある。旧市街から離れた位置にあるのに、旧市街城門を意味する“ポート”とはこれ如何に…。こちらもクリスマス休暇中にも関わらず全ての店が開いているようで、沢山の客で賑わっている。客の殆どは、やはり外国人で、オランダ人(白人)は少数だ。周囲の団地は低所得者向けの高層アパートなので、客も移民層が多いのだろうか。ドイツ語を話す人もちらほら居るので、祝日で店が全て閉まってしまっているドイツから日帰り観光で来ている人も居るのだろう。
ドイツ人が来るのなら、ホット・ワイン(グリューワイン)の店くらいあってもよさそうなものだが、そういうのは一切無い。立ち食いのファストフード店FEBOで、スパイスの効いたクリーム コロッケを食べる(1.6ユーロ, 198円)。これもオランダの名産品で、ほとんどすべての鉄道駅に店がある。
日本のデパートではバブル崩壊以降、消費が停滞してしまい、デパートに行ってもウインドウショッピングだけで何も買わない人が多くなったと言われている。それに対して、オランダは金融危機で大損害を蒙ったにもかかわらず、ここは沢山の人でにぎわっている。品物を買った袋を持っている人も沢山居るので、経済危機の影響は思ったほど大したこと無いのかもしれない。
次に、オランダ人は祝日には買い物に行かないのか、あるいは所得水準が中位以上の場所にあるようなショッピングモールの客層はどうなのかを確かめに、アムステルフェーンにあるショッピングモールを見に行くことにする。
Bijlmer ArenA(15:40頃発)→ Amstel(15:50頃)→ Oranjebaan → Amstelveen Binnenhof(16:30頃着)Metro line 50, 51, Tram line 5 運賃 48時間乗車券 11.5ユーロ(1426円)
Amstelveen - Netherlands (アムステルフェーン - オランダ)
鉄道は一旦アムステルダム市街地のまで戻るコースのため1時間弱も掛かったが、農地を真っ直ぐショートカットして走ってくるバス(Zuidtangentバス)なら10分程度で到着する場所だ。今回は鉄道に乗りたかったから… という事にしておこう。
日本人駐在員も多く住んでいるアムステルフェーンのショッピングモールには、日本語表記の看板なども所々にある。しかし、そうだからといって日本人を見かけるわけでもなく、客の殆どはオランダ人(白人)だ。オランダ人も祝日にショッピングに出かける人は居るようだ。ドイツのように国全体として祝日はキリストへの感謝の祈りを捧げるような、禁欲的な生活の人ばかりではないということだろう。非白人の移民層が多いところと違い、このショッピングモールは“激安品”を売りにするのではなく、日本の普通のショッピングモールと同じような価格設定の商品が売られている。
Amstelveen Binnenhof(17:10頃発)→ Museumplein(17:35頃着)Tram line 5 運賃 48時間乗車券 11.5ユーロ(1426円)
Amsterdam - Netherlands (アムステルダム - オランダ)
ミュージアム広場でトラムを降り、インドネシア料理のテイクアウト(中華のぶっかけご飯のピリ辛版 7ユーロ, 868円)を買ってB&Bに戻る。アムステルフェーンのスーパーマーケットで買ったサラダ(2.99ユーロ, 370円)と合わせて食べるが、1000円も出してテイクアウトしか食べられないという物価の高さは、旅行者には辛いところだ。
Wijnnobel B&B30ユーロ(3720円)/1泊
December 28, 2008 (Sunday)
今朝も寒い。最低気温は氷点下3℃。B&Bの室内は暖房で温かいが、一歩外に出れば極寒の寒さだ。フォンデル公園の池は完全に凍りついていて、水の上で夜を過ごす習性があるのか、カモメが凍った池の上に立ち尽くして眠っている。芝生も、霜が降りて凍り付いているような感じになっている。
運河の街アムステルダム観光で、ボートクルーズは必須なので、“アムステルダムで最大の運河”に”クルーズ”に出かけることにする。
Van Baerlestraat(09:40頃発)→ Zoutkeetsgracht(09:50頃着)Tram line 3 運賃 48時間乗車券 11.5ユーロ(1426円)
3系統トラムに乗り北へ向かう。クリスマス休暇中で、しかも日曜日の早朝。トラムにはほとんど乗客が居ない。終点で下車し、シンヘル運河(西運河)に沿って河口方向にどんどん歩いて行く。運河沿いの道に駐車されている自動車は、表面が完全に凍りついて真っ白になっている。アムステルダム市街地の北端、北海運河(アイ湾)に面したところまで来ると強い風が吹いていて、体感温度がさらに下がる。運河に掛かる橋は、舗装された路面に橋本体の骨組みの形が白く浮き出るように凍り付いている。
ハウト港と書かれた無人の管理事務所前を通り越し、北海運河に突き出した埠頭の先端にある渡し舟乗り場へ。1時間に3本しか運行していない渡し舟がちょうど出る時間だ。行き先は対岸のどこかだ。北海運河を渡れればそれで良いので、細かいことは気にしない。
Tasmanstraat, Pontsteiger pier(10:10発)→ NDSM-werf(10:15着)GVB Houthavenveer 運賃 48時間乗車券 11.5ユーロ(1426円)
乗客は私だけ。船は船室があるわけではなく、簡単な屋根と側面の窓がある程度で、極寒の風が容赦なく吹きつけてくる。アムステルダム市街地側には、巨大な直方体のガラス窓で出来た建物があり、朝日でオレンジ色に染まっている。MVRDVという建築事務所が設計したという住居と貸事務所の複合ビルだそうだ。かつての穀物倉庫があったシロダム埠頭を1980年代に再開発してできた所だそうだ。
北海方向を見ると、モクモクと煙を吐く煙突がある。Centrale Hemweg発電所で、1065メガワットの出力があるそうだ。2000メガワット以上の発電所がゴロゴロ存在する日本に比べたら大したこと無いように見えるが、オランダの発電所の中では大規模なもののようだ。
渡し舟は対岸に到着する寸前、ソビエト連邦の退役潜水艦が係留されている横を通り過ぎる。この潜水艦は1956年に就役し1957年に退役した、ディーゼル推進式ズールー型潜水艦で、全長90mあるそうだ。単にここに係留されているだけのようで、内部見学できるような雰囲気ではなさそうだ。
渡し舟を降りると、そこはかつてのNDSM造船所跡地。1980年代後半に閉鎖された造船所は、21世紀に入ってから再開発され、芸術家のアトリエになったり、学生向けのアパートが建てられたりしている。日本でも臨海部の工場が破綻したあとに、芸術家などの活動拠点として空き倉庫が活用されたりしているが、それと似たようなものなのだろう。産業構造の変化で重工業が海外移転し、その跡地の有効利用に頭を悩ますのは、先進国ならどこでも同じだ。ただ、芸術家のアトリエしか解決策がないとしたら、経済的に成立する次の産業がないという事に過ぎないと思う。
カラフルなコンテナを積み重ねたコンテナハウスがある。学生用とはいえ、鋼鉄製の40フィートコンテナは断熱材を入れても底冷えがするんじゃないだろうか。北海運河に向かって突き出した埠頭には、環境団体グリーンピースのシリウス号、BOTELという水上ホテル、ポーラックスという帆船を改造したレストランが係留されている。ホテルは1泊48ユーロと船体に書かれているが、こんな不便な場所で客が来るのだろうか…。
人っ子一人居ない造船所跡地を後に、再び渡し舟に乗ってアムステルダム市街地に戻る。
NDSM-werf(10:35発)→ Tasmanstraat, Pontsteiger pier(10:50着)GVB Houthavenveer 運賃 48時間乗車券 11.5ユーロ(1426円)
来た時と同じハウト港の桟橋で船を降り、シンヘル運河(西運河)に沿って南へ。トラム乗り場を通り過ぎ、国鉄の線路がシンヘル運河を渡るシンヘル可動橋の横を通って、ハーレマーメア広場へ。広場には、かつてアムステルダムの街を取り囲んでいた城壁に造られたハーレマーメア門が残っている。
そこから中央駅方向へ分岐するブラウエルス運河に沿って歩く。運河の名前が示す通り、かつて17世紀頃に醸造所(Brouer)が運河沿いに存在し、これらの醸造所が閉鎖された後に宅地化されたところだ。窓や扉にカラフルな観音開きの雨戸が取り付けられたアパートが並んでいて、アムステルダムで最も美しい通りと言われることもあるそうだ。
中央駅の方向へ運河沿いに歩いて行くと、かつて17世紀に西インド会社の本部があった建物がある。日本と関わりがあった東インド会社がアジアを対象としていたのに対し、西インド会社は南米を対象としていたそうだ。
Martelaarsgracht(11:40頃発)→ Amstelveen Binnenhof(12:25頃着)Tram line 5 運賃 48時間乗車券 11.5ユーロ(1426円)
中央駅手前のトラム乗り場より、5系統のトラムに乗り終点のアムステルフェーン・ビネンホフに向かう。昨日は夕方で気付かなかったが、ショッピングセンター中央にある広場にスケートリンクが出来ていて、沢山の子供が遊んでいる。ショッピングセンター内にあるHEMAの2階にあるカフェテリアで昼食。オムレツ・サンドイッチ、チーズ・サンドイッチ、トマトスープで7.5ユーロ(930円)。
番外編のオランダ観光が長くなりそうなので、今回の旅日記はここで終わります。