シベリア鉄道でロシア横断 旅日記 : ウラジオストク→イルクーツク

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July 4, 1998 (Saturday)

Train : Vladivostok -> Khabarovsk (ウラジオストク → ハバロフスク)

Train
Vladivostok / Владивосто́к(00:05発)→ Irkutsk / Иркутск(+3day 00:40着)
D7 train, 9号車 Bed No.5, 2等寝台車運賃 1141.3ルーブル(26,249円)
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ウラジオストク駅

Vladivostok station

小雨の降る肌寒い夜だ。ウラジオストク駅の電光掲示板には、やはり列車番号7は表示されていない。今日は運休なのではないだろうか。先月は大規模なストライキもあったようだし、少し心配だ。インツーリストの通訳氏は「列車は出ますよ」と平然としている。結局列車の案内は行われず、通訳氏が向こう側のホームに停まっている列車が今回乗る列車だと突き止める。(不親切な駅だ。) 9号車に向かう。各車両の入り口に立っている車掌に、切符とパスポートのコピーを見せて列車に乗り込む。座席番号5のコンパートメントにはロシア人のおっちゃんと若者がすでに乗っている。バックパックを降ろし、ベッドに座って発車を待つ。
0時05分(モスクワ時間17時05分)ちょうど、音も無く列車は動き出す。まもなく車掌が切符を回収し、シーツを配りに来る。シーツ代は12ルーブル(276円)。雨が激しくなり、通路側の窓を閉める。

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ヴャゼムスカヤ駅

Vyazemskaya station

朝起きると森の中を走っている。雨は上がって、青空が見える。軌道横には電線を張っていない新しい電柱だけが等間隔に建てられている。未電化区間だ。9時10分にビキン駅に停車。
朝食を食べた後、コンパートメントの乗客同士自己紹介する。彼らは英語はだめなようなので、私のつたないロシア語での会話となる。若者はビロビジャンまで行き、おっちゃんは出張でクラスノヤルスクまで行くそうである。自己紹介の後はウォッカでの乾杯となる。

11時20分、ヴャゼムスカヤ駅に停車。列車の周りにはいろいろな種類の食べ物・飲み物を売るおばちゃんが集まっている。ゆでポテトと、鳥の手羽のグリルを1本買う。合計8ルーブル(184円)。ここから電化区間なので、先頭のディーゼル機関車を電気機関車に交替している。11時35分、発車。

どこまで行っても同じような森林の中を走っている。

Хабаровск/Khabarovsk - Россия/Russia (ハバロフスク - ロシア)

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ハバロフスク駅

Khabarovsk station

13時35分、突然人家がちらほら見えたかと思うと、ハバロフスク駅に停車。駅舎を通り抜けて駅前広場に出る。広場の真中に17世紀の探検家エロフェイ・ハバロフの像が立っている。ウラジオストクに比べて車の量が圧倒的に少ない街だ。東京から来た高田氏、鈴木氏、星田氏もホームに降りて買い物をしている。鈴木氏は一眼レフカメラを持って人物写真を撮影している。写真家のようだ。名古屋から来た大澤氏、菊池氏もホームでみかける。車内の日本人は合計6人のようだ。14時、発車。すぐにアムール川をくぐるトンネルに入る。

Khabarovsk -> Skovorodino (ハバロフスク → スコヴォロジノ)

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ビロビジャン駅。ローカル列車とシビーリ号

Birobidzhan station

車内がだんだん暑くなってくる。この車両には冷房が無いので、通路側の窓を1つおきに開けて風を入れている。しかし、コンパートメント側の窓が固定窓なので風か通らない。車内の気温はぐんぐん上がり、手元の温度計では30℃以上となっていた。ロシアがこんなに暑いとは思わなかった。16時30分、ビロビジャン駅に停車。若者が降りて行く。16時35分、発車。車内の暑さがこの辺りで最高潮に達する。おっちゃんと私と上半身裸となり、涼しくなるのを待つ。 17時20分、ビラ駅停車。鳥の手羽のグリルを2つ買う(15ルーブル, 345円)。車内販売で韓国製のインスタントラーメン(5ルーブル, 115円)を買う。
列車はなだらかな山脈地帯に差し掛かり、山肌を縫うようにして走る。谷底のオブルチェ駅に停車。線路は町をぐるっと回るように引かれている。木造の茶色い家がぱらぱらと建ち並び、庭の家庭菜園で作業している人が列車を見上げている。タイムゾーン越えてモスクワとの時差6時間となる。
20時40分、アルハラ駅停車。隣に東行きの(ロシア海軍らしい)軍用列車が停車する。全車3等客車に、むさ苦しい若者が詰め込まれている。跨線橋に登って2本の列車が並んでいるところを写真撮影するが、特にお咎め無し。21時発車。

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アルハラ駅のシビーリ号と軍用列車

Arhara station

21時50分、ブレヤ駅に一時停車。コンパートメントに通勤帰りのおばちゃんが乗ってくる。やっと外が暗くなる。22時30分、ザヴィタヤ駅に一時停車。女性が降りる。列車はすぐに発車する。西の空に稲妻が光り、嵐がやってくる。
そろそろ寝ようかと思い、ベッドに横になってしばらくした頃、ベロゴルスク駅に停車。眠くて良く分らなかったが、男性2人がコンパートメントに乗り込んでくる。

夜中に駅に停車すると、懐中電灯を持った作業員が車両の車輪をハンマーで叩いて点検する音が車内まで響いてくる。何日間も走り続ける列車なので、途中駅で定期的に点検しないとダメなのだろう。最初はその金属打音で起きていたのだが、しばらくすると慣れてしまってぐっすり眠れるようになる。一部の駅の手前や橋梁の手前などには強力な投光器があって、通過する車両側面を照らして監視している。9000kmもの長距離を走っても、ほとんど遅れのない運行ができるのはこうした細かい努力の結果なのだろう。

July 4, 1998 (Saturday)

Train : Skovorodino -> Mogocha (スコヴォロジノ → モゴチャ)

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スコヴォロジノ駅
シビーリ号を牽引するBЛ60型電気機関車

早朝6時頃だろうか、マグダガチ駅に停車。発車の衝撃があった後に再び寝込んでしまった。8時頃起きて、昨日と同じくウラジオストックで買ったパンとリプトンの紅茶で朝食とする。

9時40分、スコヴォロジノ駅停車。駅のモスクワ寄りに緑色の蒸気機関車П36-0091が廃車状態で停まっている。列車が動き出しそうだったので走って車両に戻る。運悪く枕木に足を取られ、転びそうになり、足の親指をすりむく。列車が少し動き出した頃、5号車の扉に飛び乗る。9号車に戻ると、同じコンパートメントのおっちゃん(名前はセルゲイだったような…)が列車が発車したので心配だったと言っていた。ときおり乗り遅れる人もいるようである。本当に危機一髪だった。

11時40分、ウルシャ駅に一時停車。すぐに発車する。13時35分、エロフェイ・パヴロヴィチ駅に停車。ホームに降りる。餃子のようなものを売っていたので買っておく。ゆでソーセージとオレンジジュースも買っておく(この駅での合計7ルーブル, 161円)。高台にある駅からは、建物がまばらに建っている町が見渡せ、舗装されていない道をサイドカー付きのバイクがゆっくりと走っている。13時50分、発車。

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アマザルの町とシルカ川

Shilka River at Amazar

昼食となった餃子のようなものは、中身がポテトであった。6号車(2等車)の星井氏、鈴木氏、高田氏のコンパートメントを訪問する。ミネラルウォーターとするめや昆布のおつまみで手厚くもてなされる。彼らの2等コンパートメントは日本人3人だけで使用しているそうだ。彼らはイルクーツクまで行き、そこに少し滞在した後日本に帰るそうだ。元気なおっちゃんたちだ。

話しはかわるが、6号車は冷房が若干効いているようで涼しい。そのかわり通路側の窓を開ける事はできない。どうも私の乗っている9号車は冷房無しの“はずれ”の車両のようだ。

その後、大澤氏と菊池氏の1等車コンパートメントも訪問する。2等とは上段のベッドが無いだけの違いのようだ。こちらでも緑茶をごちそうになる。

Train : Mogocha -> Chita (モゴチャ → チタ)

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モゴチャ〜チェルヌイシェフスク・ザバイカリスキ

Mogocha - Tschernyschersk Zabailskii

16時頃、川沿いの町が見えてくる。アマザルに停車。18時00分、モゴチャ駅停車。ホームでピロシキ(2ルーブル, 46円)を買う。18時10分、発車。夕食を食べ、読書する。コンパートメントの全員が何らかの本を読んでいる。長距離列車に乗る時の必需品には「長時間読める本」が必要だと思う。
22時38分、ジロヴォ駅停車。手元の高度計で標高745m。列車はすぐに発車する。西の空が赤く染まり、日没を迎える。

0時すこし前、チェルヌイシェフスク・ザバイカリスキ駅に到着。駅舎の横に1軒キオスクが開いている。列車からちらほらと人が降り、キオスクで食べ物を買っている。20分ほど停車した後、発車する。

July 6, 1998 (Monday)

Train : Chita -> Lake Baikal (チタ → バイカル湖)

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ペトロフスキー・ザヴォート駅、デカプリスト記念碑

Decembrist Memorial at Petrovsk-Zabaykalsky

いつのまにコンパートメントのドアが開いていたのだろうか。目覚めると毛布から飛び出た足が冷たい。内陸部のため、最高気温と最低気温の差が大きいので、早朝はかなり冷え込む。
8時00分、チタII駅停車。ペプシ・コーラを買う。4.8ルーブル(110円)もする。8時20分、発車。買い込んでいたパンなどで朝食を摂る。列車はアムール川沿いを走る。河口から2000km近く上流なのに、かなりの川幅がある。「地球の歩き方」によれば、この辺りがシベリア鉄道の最も標高の高いところ(約1000m)らしい。周りの風景を見ている限りでは、7月4日夕刻の方が山の中を走っていたように感じる。

10時40分、マグゾン駅停車。カップ・ラーメン(5ルーブル, 115円)とフランクフルト(2.5ルーブル, 57円)を買う。2重ドアを開けて駅舎に入る。待合室には 10人ほどが座っている。今入ってきたドアの上には、黄道12星座をデザインした銀の大時計がかかっている。外の強い日差しにもかかわらず、薄暗い待合室はどことなくひんやりしている。10時55分発車。
列車は蛇行しながら走っている。11時40分、手元の高度計で880m。山脈と山脈の間の草原を、ゆったりとヒロク川が流れている。12時40分、ヒロク駅に停車。ラーメンなどで昼食とする。冷房の効いていない暑い車内で食べる韓国製の辛いラーメンで、体はさらに熱くなる。

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ウラン・ウデ駅、ЭР9T型近郊電車

Ulan-Ude station

気温がいちばん高くなる頃、15時10分、ペトロフスキー・ザヴォート駅に停車。駅舎の前にはデカブリスト記念碑が建っている。アイスクリーム(2.5ルーブル, 57円)を食べる。暑い時のアイスクリームは最高だ。フランクフルト(3ルーブル, 69円)も売っていたので買っておく。15時30分、発車。間もなくタイムゾーンをまたいでモスクワとの時差5時間となる。17時0分、ウラン・ウデ駅停車。北京西站からウランバートル経由で来た列車がシベリア鉄道に合流する地点だ。 ЗР9Т型近郊列車がやってきて、シビーリ号の隣に並ぶ。17時20分、発車。駅で売っていた魚(オームリ)の燻製を食べる。ロシア人は内臓の部分も食べるようだが、私は内臓は遠慮。

Train : Lake Baikal -> Irkutsk (バイカル湖 → イルクーツク)

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ウラン・ウデ〜スリュジャンカ、バイカル湖

Lake Baikal at Ulan-Ude - Slyudyanka

20時頃、右手にバイカル湖が見える。世界最大の透明度を持ち、深さ1600mもある湖だ。列車は湖岸に沿ってバイカル湖最南端を目指す。湖の色はきれいなブルーで、湖岸の森林の緑色との取り合わせがなんとも美しい。車内の人たちもバイカル湖を眺めている。6号車に行くと、大澤氏が一眼レフカメラで湖の写真を撮影している。きっときれいな写真が撮れるのだろうなと思う。21時頃、夕日を受けて黄金色に輝く湖が美しい。2時間くらい湖岸を走っただろうか、列車は湖の最南端で北に進路を変え、だんだん湖から遠ざかり、22時ごろ、スリュジャンカ駅に到着。22時30分、発車。

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バイカル湖の日没

sunset at Lake Baikal

時折東にバイカル湖が見えるが、20分くらいで山の中を走るようになる。日が暮れてあたりが真っ暗になる。あと1時間ほどでイルクーツク駅だ。机の上や、ベッドのまわりに出してあったものをバックパックにしまい、シーツをたたんでマットレスを丸めておく。車掌のお姉さんが切符を返しに来る。欧州と違い切符は回収されないようだ。0時45分、川沿いにあるイルクーツク駅に到着。コンパートメントの仲間が励ましてくれ、握手をして別れる。

Hotel

Hotel Intourist (Гостиница Интурист), room 408
17,200円/1泊(観光ビザと共に、日本の旅行会社で予約)