中国江蘇省 旅日記 : 揚州(2日目)

全体地図

March 04 (Saturday)

Yángzhōu - China (扬州/揚州 - 中国)

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早朝の彩衣街(东关街の西延部分)

夜中はよく眠れなかった。ホテルはとても静かなのだが…。5時前には完全に目が覚めたので、起きてテレビを見る。6時過ぎ、昨日と同じく朝食にインスタントラーメン(4.5元, 76円)とソーセージパン(5元, 85円)を食べる。外は快晴のようで、東の空から太陽が昇ってくるのが部屋の窓から見える。空は黄砂なのか大気汚染のばいじんなのか、かなり霞んでいる。明日から全人代が始まるので、今週は必死になって大気汚染対策をして「全人代ブルー」と呼ばれる青空をもたらすはずなのだが…

7時過ぎ、外へ。ホテルから少し北に行った所に24時間営業の豆漿店チェーン「家和豆浆」がある。ここで青椒肉丝面(18元, 306円)を食べる。その後、四望亭より大东门街ダートンメンジェ(大東門街)を東へ。安食堂や持ち帰りの惣菜屋などが並ぶ庶民的な通りは、国庆路(国慶路)を横切ったところから、観光化された老街の「东关街トングァンジェ(東関街)」となる。老街は観光客向けの食堂や特産品店が並ぶ道だ。まだ朝早いので店も観光地も開店前で、歩く人もまばらだ。

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古运河対岸より見た东关古渡の碑坊
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宋代風に再建された东门城楼(東門城楼)

东关街の東端は、隋の煬帝が開削した京杭大运河の支流の「古运河グーユゥンホー(古運河)」に面していて、かつて渡し船の桟橋があったため「东关古渡トングァングードゥ(東関古渡)」と呼ばれている。そこには牌坊と、东门城楼トンメン チェンロゥ(東門城楼)がある。东门城楼は宋代の建物を模して現代に再建されたもので、内部は东门遗址(東門遺跡)や东关街の歴史を展示する入場無料の施設になっている。門の上のテラス部分に出ると、まっすぐ西に続く东关街の建物の屋根が、現代の建物群に囲まれている「テーマパーク的なところ」だとわかる。

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东门遗址のマルコ・ポーロ像

东门遗址の北に隣接する马可・波罗纪念馆(マルコ・ポーロ記念館)を見に行く。ここも入場無料。13世紀後半、ヴェネツィア共和国の商人マルコ・ポーロが、陸路で中国(元朝)の中国まで3年掛かって陸路を踏破し、17年間中国に滞在、帰国は海路を経由したという見聞旅行のうち中国に関する部分の歴史を展示したのがこの記念館だ。Wikipediaによれば、『一行は元の政治官に任命され、マルコは中国南西部の雲南や蘇州・楊州で徴税実務に就いたり、また使節として元帝国の南部や東部、また南の遠方やビルマ、スリランカやチャンパ王国(現在のベトナム)など各所を訪れ、それを記録した。』とされる。

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観光客で混雑している东关街(東関街)

さて、そろそろ9時を過ぎたので个园ホーユェン(个園)が開場する時間だ。东关街を再び西に800mほど戻る。8時頃には、ほどんど人が歩いていなかった老街の道が、いまは中国人団体客や一般の観光客などでごった返している。个园の入口にも大量の観光客が並んでいたりする。门票(入場券)は45元(765円)。东关街と庭園の間には南部住宅区と呼ばれる、清代の扬州盐商という役人の邸宅だ。邸宅部分を抜けると、四季园林区と呼ばれる庭園だ。抱山楼と宜雨轩という建物を中心として、四季を表現した假山ジャーシャン(築山)の春山・夏山・秋山・冬山が配置されている。

という薀蓄を知った上で、静かな庭園を楽しむ場所であるはずが、大量の中国人観光客が視界いっぱいにうじゃうじゃ居て、「登るな」とバリケードで囲まれている岩山にも、サル山のように人がいっぱい登っている。さすが、「中国四大名園」の一つといわれるだけある…。

更に北に進むと、种竹观赏区と呼ばれる竹を鑑賞する広い芝生庭園。こっちは、それほど大混雑しているというわけではなく、割とのんびりと景色を楽しめる。昨日まで揚州と鎮江で巡った観光地は、どこも殆ど人が居なかった。おそらく、平日だから空いていたのだろう。休日の観光地は、ここと同じように大混雑しているのだと思われる。

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个园(个園)の洞门(洞門)
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个园(个園)四季园林区
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个园(个園)种竹观赏区
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个园(个園)种竹观赏区
Bus
个园站(10:44発)→ 康山文化园站(10:58着)
旅游专线, 運賃 2元(34円)
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何园(何園)片石山房の贴壁假山(壁面の築山)

次にやって来たのは「何园ヘーユェン(何園)」。市バスのバス停から何园までは、殆ど人が歩いていなかったが、庭園の入場口前にはズラッと観光バスが並んでいる。中国人は団体行動が好きなんだな…。何园の门票(入場券)も45元(765円)。个园は住宅园林、何园は中国古典园林だとBaidu百科には書いてあるが、素人の私には広い芝生竹林のある个园と、箱庭のように狭い敷地内に建物と、奇岩と池のある箱庭庭園の何园というような違いに見える。

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何园(何園)煦春堂

东门(東門)から入場し、入場券に書かれた推奨コースは水心亭シュイシンティン蝴蝶厅フーディエティンなのだが、あえて南方向の「片石山房」へ。17〜18世紀の画家石涛による石庭で、箱庭の中心に池がありそれを取り囲む壁面に岩山が張り付いている(中国語で「贴壁假山」という)庭園。壁にへばりついている岩山に植えられている松は、樹齢300年のものもあるとか。300年前の建物とBaidu百科に書かれている「明楠木厅」を抜けて更に南にゆくと、「何家祠堂」が敷地の南東端にあり、ここから北西端の「蝴蝶厅」めざして敷地を対角線上に縦断していく。

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何园(何園)船厅で琵琶演奏

応接室の「清楠木厅」、西洋や日本の建築様式も取り入れたという居室がある2階建て・2棟の「玉绣楼」を抜けると、日本の旅行ガイドブックにも説明が出てくる「水心亭」とそれを取り囲む2階建ての回廊がある。まあ、どこも団体観光客で満員で、静かに庭園を鑑賞という雰囲気ではない。何园の回廊は、全て歩くと総延長1500mらしいので、とてもじゃないが短時間で全て制覇するのは不可能だ。ここは中国古典庭園の名所らしいが、4大古典庭園は北京の頤和園や蘇州の拙政園など、10年以上前に訪問したことがあるが、どんなだったかはすっかり忘れてしまっている。

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古巷 苏唱街

南门から出て、お昼ごはんを食べに东关街辺りまで戻ることとする。Baidu地図で経路検索すると、市バス「旅游专线」で大きく迂回して戻る方法か、幾つかのバス路線を乗り継ぐのかどちらかだ。それなら、たった2km程度なら歩いて行くこととする。Baidu地図の徒歩ナビゲーションに従い路地に入って行くと、「扬州古巷游ヤンジョウ グーシャンヨゥ」という観光用標識があって、路地散策のルートとなっているようだ。細い路地を、右へ左へ曲がりながらどんどん進んでいくが、ゴミひとつ落ちていないし、建物も綺麗に補修されている。こんな観光客の来そうにない所まで、手入れが行き届いているのはすごいことだ。15分ほど歩くと、街の中心を東西に貫く幹線道路の文昌中路に出る。

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牛肉刀削面 @金城兰州牛肉拉面

国庆路を通り、东圈门街を横切る。个园でもらったパンフレットでは、観光客向けレストランが並んだ东圈门街には、「江沢民旧居」があるようだが、Baidu地図には表示されないので見に行くことが出来ない。昼食は大东门街の兰州拉面ランジョウ ラーミェン(蘭州ラーメン)の店で牛肉刀削面ニューロゥ ダォシャンミェン(10元, 170円)を食べる。刀削面とは、Wikipediaによれば『生地を細長く鍋の中に削ぎ落としてゆでた』もので、日本で普通に売っている生地を伸ばして包丁で細く切ったものとは全く違う。雰囲気としては、「きしめん」か…。
同じ通りにある鸡排故事という持ち帰り鶏の唐揚屋で、梅子味唐揚げを買う(11元, 187円)。日本の唐揚げと違い、ここは台湾風にチキンカツ。

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扬州八怪纪念馆

泊まっているホテル全季酒店の横の路地の入口に、「扬州八怪纪念馆パークァイ ジーニンクァン」と書かれた碑坊がある。Ctripで調べてみると、明代に西方寺だった寺の跡地に揚州出身の芸術家の作品を展示しているそうだ。「八怪」なので元は8人の書画家だったそうだが、いまは15人まで対象者が増えているそうな…。何といい加減な命名。门票(入場券)は25元(425円)。もと寺院の中には、仏像ではなく書画や奇岩が展示されている。中国では金ピカの仏像を見慣れてしまうので、こういう渋い展示物が寺院建築の中にあるのも新鮮だ。

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扬州红园民间收藏品市场 古钱币

記念館を出て少し北へ行くとバス停の瘦西湖ショウシーフー(虹桥坊)站があり、すぐ脇を運河が流れている。ふと、運河の対岸を見ると大量の人が集まる蚤の市をやっているようだ。橋を渡って近寄ってみると「扬州红园民间收藏品市场」という看板が出ている。入口付近から古銭や置物などの骨董品、中国人が大好きな鑑賞石、植木(盆景)、観賞魚などの露天が所狭しと建ち並んでいる。古銭を買いたい気持ちがあるが、『骨董品持ち出しの罪』に認定されたら出国時に海关(税関)で逮捕されるので、迂闊には手を出せない。

Bus
瘦西湖(虹桥坊)站(14:15発)→ 观音山(瘦西湖北门)站(14:30着)
旅游专线, 運賃 2元(34円)
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唐城遗址 唐式城墙(唐代風城門)

バスに乗り、瘦西湖北门までやって来る。大きな駐車場を挟んで池があり、対岸の小高い丘の上には「观音山禅寺グゥアンインシャンチャンスー」と「唐城遗址タンチェン イーチー」がある。池を回りこんで、唐城遗址に登ってみる。门票(入場券)は25元(425円)。入場券と共にもらったパンフレットには、隋の煬帝が建てた行宮がかつてここにあり、唐代には广陵城(扬州城)の子城のあった場所だと書かれている。真新しいコンクリート製の城門から中に入ると、これまた新築したと思われる唐の時代を模した建物が並んでいる。展示物を見ると、どうもここは唐に留学した新羅の崔致遠の記念館として、韓国が建設したもののようだ。Wikipediaによれば、崔致遠は科挙に次第(ぎりぎり通らなかった)であり、唐の国家要職に就いていたわけでもない。昨日、鎮江で見た「望月望郷碑」の阿倍仲麻呂は科挙に合格し唐の玄宗に仕えたのだが、こういう巨大な記念館は建てられていない。いや、建てる必要はないと思うのだが…。韓国人の記念館なら、そういうふうな名前の施設名にすべきだし、全て新築のコンクリートの建物で「唐城遗址」とは、歴史の捏造も甚だしいガックリ観光地だと思った。

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观音山寺

で、「唐城遗址」がある小高い丘には「观音山禅寺」もある。「なんちゃって城壁」に沿って歩いて行くと、途中からお寺の壁に変わっている。この寺は隋の煬帝が建てた行宮があった場所で、かつ揚州市の最高標高点があるそうだ。昨日より寺を何箇所も見てきているので、何処も小高い丘に建てられていて似ている。あえていえば、観音山禅寺は山門から寺のあるところまでの長い坂道の景色が見どころ…。名のごとく観音様を祀ってる寺だが、堂宇の中には各種の仏様や中国の神様が所狭しと並べられていたりする。珍しく、この寺は入場料を取らなかった。

Bus
观音山(瘦西湖北门)站(15:45発)→ 瘦西湖(虹桥坊)站(16:01着)
旅游专线, 運賃 2元(34円)
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青椒肉丝、鱼香肉丝、榨菜肉絲湯、米飯

大东门街・彩衣街へ。1.5元(25円)で買った大きな胡麻団子をかじりながら、様々な商店が並ぶ通りを歩いていると、「2元店」というのがある。日本で言うところの100円ショップだ。ホテルでカメラやスマホを並列で充電するために、microUSBケーブルを買う。日本なら100円で売られているものが、たった2元(34円)。ちなみに、日本なら200円や300円商品のUSB出力ACアダプタも2元。

夕食は昨日・一昨日と同じ中国料理レストランで、青椒肉丝(16元)・鱼香肉丝(18元)、榨菜肉絲湯チャーカイ ロゥスータン(12元)、米飯(2元)。さすがに、スープは全部飲みきれないし、ご飯も全部は食べきれない…。満足でした。

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抗日ドラマ『绝地枪王』のワンシーン
天皇陛下の写真の両側「速い者勝ち」「忠誠を天皇」

ホテルに戻り、19時の中央電視台のニュースを観る。全人代関連のニュースを延々と伝えていたので、途中で他のチャンネルに切り替えると、相変わらずいろんなチャンネルで抗日剧カンリーチィ(抗日ドラマ)を放送している。制作費がよほど窮乏しているのか、日本軍や日本人の設定がお笑い系の悪人になっている。当時としては近代的な装備と組織の日本軍と、どう見てもゲリラ戦状態だが軍服が洗濯したての綺麗さの抗日軍(中国軍)。機関銃やライフルを装備した日本軍部隊が、小銃しか持っていない中国軍ゲリラ兵に蜂の巣にされバッタバッタと倒される。宇宙戦艦ヤマトで、ヤマトは幾つ被弾しても修理して再起するが、ガミラス艦は砲弾1発で破裂して沈没するくらいの描き方の差が、抗日ドラマでも踏襲されている。戦闘シーンはほぼお笑いだが、日本軍に翻弄される現地の住民(中国人)の人間ドラマは、確かに良く出来ている。

Hotel
全季酒店(扬州文昌阁店), 大床房 523号室
203元(3,451円)