DECEMBER 21 AMSTERDAM-NETHERLAND
AMSTERDAM - NETHERLAND (アムステルダム、オランダ)

スキポール空港を 19時45分 に定刻どおり出発しようとした KL553 に出だしからアクシデント。 牽引車(飛行機を後ろ向きに引っ張る、あの背の低い自動車)が故障して、飛行機から分離できなくなったようだ。
1時間遅れの21時、やっと南に向けて飛び立つ。
機内はエジプトでのクリスマスバカンスを過ごすヨーロッパ人で満員。日本人ツアー客は、皆無。日本と欧州の間の便の閑散とした状態とは相当違いがある。

DECEMBER 22 CAIRO-EGYPT
ABU SIMBEL-EGYPT

CAIRO - EGYPT (カイロ、エジプト)

2時30分 カイロ空港(Terminal-2)に到着。滑走路に着陸した時、機内では大きな拍手が…。やはり、テロの影響は大きいようだ。それとも機体がB767(テロリストが操縦訓練していたのと同一機種)だったからか? 同じ日の夜に、パリからマイアミ行きのユナイテッド航空に、靴爆弾の男が乗っていたからか?
ターミナルビルに入る。ブランド品ではなく日用品の免税店が並んでいる。その先に怪しそうな雰囲気の両替所が何軒かある。とりあえず20,000JPY両替し、ビザの切手のようなもの(32.2EGP相当)と残りの現金(639EGP)を受け取る。
切手のようなものをパスポートのあまったページに貼り付け、入国審査。
入国審査を出たところから、怪しげなエジプト人が大量にまとわりついてくる。荷物をピックアップして、外へ。真っ暗。アブ・シンベル (Abu Simbel)行きのエジプト航空は、Terminal-1らしいが、どうやって行くのだろうか。看板も何も無い。
空港の建物に戻り、その辺の係員らしき(この空港にまともな係員なんているのか?)に聞くと、バスがあるからここで待てという。その偽係員は、どこに行くのだと(親切そうな振りして)聞いてくるので、Abu Simbelに行くと言うと、「帰りの陸上交通はテロの影響でとても買いづらい、ここで予約しろ」といってくる。

もう2日もまともに寝ていないのと、欧州のバカンス地という先入観から、あっさりとだまされてしまった。
下の表にあるような契約をしてしまう。USドルで何とかだとか、いろいろまくし立ててくる(換算レートで煙に巻こうとしている)が、一応計算してみるがこの詐欺師の言っている合計金額はまともなような気がしてきて、契約してしまった。
当初契約 実際
Aswan (Ramses Hotel) (two star)  25USD=110EGP
Aswan -> Luxor BUS 15EGP
Luxor (Horus Hotel) (two star) 65EGP*2
Luxor -> Cairo TRAIN Exp.1-CL 60EGP
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SUM  315EGP
価格は推計

実際に支払った額 430 EGP

Aswan (Ramses Hotel) (two star) 110EGP
Aswan -> Luxor TRAIN 2-CL 14EGP
Luxor (Golden Palace Hotel) (three star) 65EGP*2
Luxor -> Cairo TRAIN 2-CL 31EGP
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SUM 285EGP
ホテル価格はホテルのフロントの料金表より解読

差損 430 - 285 = 145EGP (=4,200JPY)

日本出発直前に買った、「歩き方」を少しは読んでおけば、こういう事は防げたのだと思うが、「歩き方」をはじめて読んだのが、Terminal-1の中なので、「後悔先に立たず」である。

で、この詐欺師から Terminal-1へのタクシーが来たので乗れという。バスはどうしたのだと聞いたら、この時間(午前3時)にバスは無いという。料金 5EGP という。(近いはずなのにそんなにするのか?)タクシーでなく、普通のワゴン車は猛スピードで立体交差の道路を通って、料金所を一箇所通って、10分弱で Terminal-1のHall-3に着く。ここで、10EGPと言ってくる。料金所が5EGPだと。何で空港内に料金所があるんだ? 運転手は一歩も譲らない。

X線検査を受けてターミナル内へ入る。うらびれた場末のターミナルといった感じだ。売店すら無く、チェックインカウンターらしきものはあるが、ひとつも開いていない。ちょこっとだけあるベンチには、ジュースがこぼれていたりするし…。ましそうなベンチに座って、「歩き方」を読んでみる。(「歩き方」を買ったのは、「Lonely Planet」の新版が2002/01発行のため、買ってしまったのである。後悔してはいるが)
で、例のTerminal-1の詐欺師の件については、ちゃんと書いてあるではないか。改めて、「歩き方」の中にある価格表などを元に、100EGP以上(旅行社を通しているのだから割引もあるだろうに)の払いすぎと、金だけとって予約すらしない懸念も高まり、契約をキャンセルするか、余分な金を取り返すために Terminal-2に引き返すことにする。

Terminal-1の前にいる警官にTerminal-2はどっちの方向にあるのか聞く。すると、遠いのでTAXIでしか行けないと言ってくる。ガイドブックには2km程度と書いてあるといっても聞く耳を持たない。タクシーを呼び止めて私を乗せる。「幾らなんだ?」「10EGP」「高いので結構!」 タクシーを降りて再び警官にどっちの方向だと聞く。警官もあきらめたようで、方向を教えてくれる。

暗い道を(街灯も少ない)歩き出して、1kmほど言ったところに、検問。Terminal-2の位置を教えてもらう。(ガイドブックの方向とは90度方向が違うような気がするが…)  しばらく行くと、料金所。係員が、エジプト航空の便ならTerminal-1へ行けと言ってくる。「理由」を説明して、通してほしいというと、5EGP払えといってくる。先ほどTerminal-2 -> Terminal-1へ行くときにすでに払っていると(KLMの搭乗券も見せて)納得させ、戻りも無料にすることを確約の上通過。 しばらく行くと再び検問。 歩いて30分〜40分はかかっただろうか。Terminal-2に到着。先ほどの場所に行くが、例の詐欺師は居ない。回りの人間に聞くと、Terminal-1に行っているという。さては雲隠れだな。やつの名前を教えろと迫ると、紙切れにアラビア語でなにやら書いている(警官に聞くとTerminal-1と書いてあるだけとの事)。仕方ない。Terminal-1に戻る。

エジプト航空 A320-200 (アブ・シンベル空港にて)
EgyptAir at Abu Simbel airport

で、7時までTerminal-1の中で時間をつぶして、やっとチェックインが始まる。
ここで大問題発生。なんと、私の予約がキャンセルされているではないか。係員曰く「リコンファームしなかったからだ。」  私は、「1週間前に購入して発券された往路のチケットに、どうしてリコンファームがいるんだ?」。係員「…」
埒があかない。裏手にあるエジプト航空の事務所に向かう。「何でこのチケットはキャンセルされているんだ?」と問い掛けると、係員「リコンファームしていない。が、往路のチケットのリコンファームは旅行会社が通常やるものだ。それに、チケットの発券日が1週間前の12月14日で、これは明らかに君の旅行会社がミスったようだな。でも、キャンセル待ちに並べ。」との事。

8時20分(出発10分前)、キャンセル待ち客(エジプト人ばかり)がカウンターに詰め寄る。当然私も加勢する。はじかれたチケットがカウンターに投げ返される。私のチケットも投げ返される。チケットをつかみあげ、横のカウンターの係員に何とかしろと詰め寄る。 「交渉とは如何に厚かましいか」である。何とか、搭乗券を手に入れる。が、Cairo -> Abu Simbel だけ。Return はどうなるのか問い詰めると、Abu Simbel でキャンセル待ちに並べとの事。観光どころではないし、チケットが無かったらどうするんだ! 係員「確率は、Fifty - Fifty だろう?」とあたりまえの確率論を言ってくる。経験則を元にした確率を聞いてるのであって、「ある-なし」の2者択一の単純確率をを聞いているんじゃないぞ。
再び事務所へ。「復路はどうしてくれるんだ! 無かった場合、払い戻しはどうしてくれるんだ! これはノーマルチケットだぞ!」と言ってみると、再びチェックインカウンターへ。係員同士何か言い合っている。
最終結論  係員「せっかくエジプトまで来たのだから、アブ・シンベル神殿見て来い!。飛行機無くてもバスがあるさ。」

そのバスがテロの影響で「外国人乗車禁止」になってるんじゃないか! まあ、「なんとかなる」かもしれないので、行ってみる事にする。

ABU SIMBEL - EGYPT (アブ・シンベル、エジプト)

アブ・シンベル周辺の概略地図  Map of Abu Simbel

MS247は定刻より5分遅れ(私のせいです!)の8時50分に出発。おんぼろのA320-200はまるで軍用機の離陸シーケンスのように、誘導路からメインエンジンをパワーアップして、滑走路に出たと同時にフルパワーで離陸。
砂漠の上を1時間ほど飛んで、アスワン(Aswan)空港に着陸。途中、小さなパン1個と紅茶が出る。アスワンでほとんどの客が入れ替わり、再び満席に。横の席の老人は、警察を退官した人だろうか。たくさんの警官(それもかなりの高級幹部)が入れ替わり立ち代り謁見にきている。10時50分、Aswan発。11時20分、アブ・シンベル(Abu Simbel)着。

空港ターミナルに入り、オフィスへ。帰りのAbu Simbel -> Aswan のキャンセル待ちはどうなっているのか聞いてみる。と、係員「Abu Simbel -> Cairo の予約が入っているぞ。それに、今日リコンファームしたとなっているぞ!」とこれまたすごいことを言ってくる。何でチケットより先までの予約が入っているんだ?
カイロ空港のエジプト航空事務所の職員氏に感謝である。(おそらく彼が予約を入れて置いてくれたのだろう)
で、「Abu Simbel -> Cairo は Aswan に着陸するはず。そこで降ろしてほしい」というと。係員「まさにその通り、そのようにしておくから、そこのバスに乗って観光に言って来い」。

アブ・シンベル大神殿(ラメセス2世 太陽神殿)
The great Temple of Abu Simbel

エジプト航空の無料シャトルバス(バスは3台あったが、どれも満車)に乗る。11時45分、アブ・シンベル神殿 (Abu Simbel Temple)の入り口に到着。
入場券36EGPを買って中へ。向こう側に、工事現場の残土置き場のような小高い砂の山が見える。あれが移設させた神殿を収めている建物なのだろう。回り込んでみる。
ナセル湖側に出ると、巨大な神殿(The Great Temple of Abu Simbel)が目に入る。「大きい」というのが感想である。単に「大きい」と感じただけ。
ラメセス2世(Ramesses II)の巨大坐像が(4体)並ぶ中央部に中へ入る入り口がある。内部の回廊にもラメセス2世の立像。壁面には、写真でしか見たこと無かったエジプト文明の絵(?)が描かれている。昨年訪れた中国の「敦煌 莫高窟」では、洞窟内に照明はまったく無かったが、ここは蛍光灯で照らされ、鑑賞しやすくなっている。(この後訪れたエジプトのどの地下室内にも照明があり、ありがたいことである。)
これが、ヒエログラフで、こういうのがエジプトの神々なのかと感心して見る。ヒエログラフを読めれば、もっと感動するに違いない。神殿の一番奥には、サンクチュアリ(至聖所)があって、春分と秋分だけ日光が差し込むという坐像が並んでいる。ここまでして自分の像を作るとは、自己顕示欲のよほど強い人物だったのだろうか。

アブ・シンベル大神殿(左側)とアブ・シンベル小神殿(右側)
The Great Temple (left) and The Small Temple (right), Abu Simbel

外に出る。北側にある小さいほうの神殿(The Small Temple of Abu Simbel)へ向かう。こちらは、やや小ぢんまりした感じではあるが、今まで他の国で見た石造遺跡に比べて「はるかに巨大」であることには変わりは無い。中に入る。内部も小ぢんまりしており、ラメセス2世の神殿のほうは戦闘シーンなどが多い壁画だったのが、こちらは女王の神殿だけあってそういうのは少ないようである。

外に出て、ナセル湖(アスワン・ハイ・ダムによって作られたダム湖)を眺める。兵士が暇そうにぶらぶらとしている。このあたりの沖合は、スーダンの領域のはずである。(スーダンと言えば、アメリカが巡航ミサイルを打ち込むほどの「テロ支援国家」としても有名である。)

アブ・シンベル小神殿内部 (アヌビス神とホルス神の間のオシリス神)
Inside The Small Temple (Wall Art), Abu Simbel

13時に空港への送迎バスが出るので、入り口の方に引き返す。神殿を納めている土盛りの上に上ろうとするが、警備兵に制止される。おとなしく外に出て、先ほどバスが来た地点まで引き返す。この辺りからは、Abu Simbel の町がよく見える。本当に数十軒の建物があるだけの町のようだ。(バスで通りすがりに、乗合マイクロバスの発着場らしき小さな広場があったところが中心部なのだろう)
13時になってもバスは来ない。神殿に入っていった観光客も出てこない。ツアーでない個人客(ドイツ人夫婦2人、中国人家族4人と私)だけが交差点のところでバスを待つ。13時20分、バスがやっと到着する。ツアー客もぱらぱらと戻ってき始める。折り返しの飛行機の出発時刻は 13時30分のはずである。このバスが空港に戻るまでは出発しないので大丈夫だろうが、団体客の時間のルーズさにはあきれる。13時30分すぎ、バスはやっと出発し、13時50分空港到着。

空港のオフィスに行く。係員が、「OKだ、搭乗券を渡す」と。空港の建物のすぐ前に停まっている飛行機まで、形式的にバスに乗って行き、飛行機に乗り込む。(だだっ広い砂漠のような中に1機しか停まっていないのだから、歩いたほうがいいに決まっている。)
14時、Abu Simbel 発。14時45分、Aswan 着。
アブ・シンベル大神殿 (The Great Temple of Abu Simbel)
別名を ラー・ホルアクティ神殿 (The Temple of Re-Harakhte)、ラメセスII 太陽神殿(The Sun Temple of Ramesses II)。
正面の高さ 33m、幅38m、最奥部まで61m。正面のラメセス2世坐像の高さ 20m。
入り口を入ったところには、ラメセス2世のオシリス神の立像(高さ9.2m)が8体並んでいる。最奥部のサンクチュアリには、プタハ神、アメン・ラー神、ラメセス2世、ラー・ホルアクティ神の坐像が並んでおり、1年2回だけこの部屋まで太陽が届く。
ラメセス2世 (Ramesses I 在位 BC1279-BC1213I) により建造される。
アスワン・ハイ・ダムの建設で、1970年、現在の場所に移設される。なお、移設の際に、日本製の接着剤を使っているそうである。(こんなところにもMade In Japan!)
【 The Temple of Re-Harakhte  http://touregypt.net/asimbelram.htm
【 ABU SIMBEL http://www.arthistory.sbc.edu/sacredplaces/abusimbel.html
【 アブ・シンベル神殿 http://www.egypt.co.jp/1Gururi/59honbun.html
アブ・シンベル小神殿 (The Small Temple of Abu Simbel)
別名を ネフェルタリのハトホル神殿 (Nefertari's Temple of Hathor)
あまりにも強い権力をもっていた王妃ネフェルタリのためにラメセス2世が建造した神殿。ラメセス2世とネフェルタリの立像の高さがほとんど同じなのも、王妃の権力の強さを物語っているといわれる。大神殿と同じころ建造された。
【 Nefertari's Temple of Hathor http://touregypt.net/asimbelhath.htm

ASWAN - EGYPT (アスワン、エジプト)

アスワン・ダムの堤防の上からハイ・ダムの方向を眺める
on the Aswan Dam (to High Dam)

小ぢんまりした空港の建物を出る。タクシーの客引きがまとわりついてくる。乗合マイクロバスもあるようだが、途中アスワン・ハイ・ダムも見てみたいので、(ぼったくりを覚悟で)タクシーを選択する。アスワンまで直行で31EGP。ダムによると41EGPらしい。中途半端なので40EGPにさせる。(地元住民なら10EGP以下が相場らしい)

タクシーはほとんど車の走っていない道を北上する。しかしながらきれいに舗装された広い道だと思う。
10分ほどでAbu Simbel への道が分岐している。標識には260kmとある。さらに北上するとアスワン・ハイ・ダムへの分岐点に出る。ダムのように『見える』水路の橋を通り過ぎ、しばらく行くと巨大なダム管理事務所があり、そのすぐ近くに料金所がある。車から降りて 5EGP払う。ダムの堤防の中央辺りに、駐車場と売店のようなものがある。観光客は誰も来ていない。南のほうを眺める。巨大なナセル湖 (Lake Nasser) が広がっている。幅はそんなに大きくは無いが、奥行きがとても長い湖(スーダンにある湖の末端まで約500km)らしい。ダムの北東側には発電設備だろうか、鉄塔のようなものが無数に立ち並んでいる。この駐車場から東に行く堤防の上には軍の検問所があり通り抜けることは出来ないようだ。軍が警備している理由は、このダムはエジプト主要都市の時限爆弾だからだ。堰堤を破壊すると、下流に大洪水を引き起こすことが出来、エジプト経済を壊滅させることも可能だろう。ちなみにこのダムはロシアの援助によって作られたそうだ。帰りにダム管理事務所の前を通りかかると、仕事を終えた従業員がバス数台に分乗して帰るところだった。ダムの管理にそんな大人数がいるとは、さすが国営ならではの非効率経営だ。

ダムを出てさらに北上。10分ほどでアスワン・ダムの堤防の上を通過する。警官が等間隔に立ち並び、停車禁止のようだ。こちらのダムはイギリスの援助で作られた模様。左手にアギルキア島に移築されたイシス神殿が見える。ダムのすぐ横にある小さな村からボートか何かに乗っていくのだろう。(明日来る予定にしていたが、後に述べるように来られなくなってしまった。)
急カーブの道を通り過ぎ、アスワン市内に入る。墓場、スタジアム、キリスト教会と過ぎて10分ぐらい走って市内中心の南端の Thomas Cook の前でタクシーを降りる。

アスワンの町のスークにて at Souq (Market), Aswan

幹線道路(といっても、片側1車線の道路だが…)を歩くのもつまらないので、1本東側の細い道を北上しようと思う。カイロ空港の(詐欺師)エージェントに注文したのは、Ramses Hotel だったので、歩き方を信じてそちらの方向に歩いてゆく。道は狭く、時折ロバに牽かれた荷車が通り過ぎたりする。だんだん両側に露天の店が軒を連ねるようになってくる。市場(スーク)だ。アラブ諸国ではどこにでもあるような雰囲気のものだ。ただ、この町は団体観光客の宿泊拠点でもあるので、土産物を扱った店もちらほらある。なぜか、野菜屋とかスパイス屋とかが声をかけてくるが、観光客がそんなもの買うわけ無いだろうと思う。
野菜屋の品物を見ると、日本のどこのスーパーにでも売っているようなジャンルの物ばかりだが、キャベツとカリフラワーが日本の2倍程度の大きさ(体積では2=8倍)があるのには驚いた。(それを、軽々と頭の上に載せて運ぶエジプトの女性の首の強さにも敬服する)
道の真中に、鳥が放されており、2羽がにらみ合いを続けているところに出くわす。商品をその辺に放り出しておくのもエジプトならではか。

スークを抜けて、学校のようなところを通り過ぎ、警察署の本署らしき小汚いビルの前を通り過ぎる。道に面して、コンクリート製の掩蔽壕のようなものがあり、手持ち無沙汰の警官が自動小銃を構えて(いや、地面に立てかけて)いる。そういえば、アスワン郊外でテロリストの活動が散発的にあると最近の情報で見たが、そのせいだろうか。(この後、どこの町でも警官が厳重な警戒態勢を敷いていた)

警察署を過ぎると、急に大勢の人がたむろしている地区に差し掛かる。一応、この辺りが町の中心部といっていいのだろうか。ガイドブックの地図上では、バスターミナルとなっているが、バスなんか停まっていない。(小汚いマイクロバスが何台か停まっているので、これがメインなのだろう)

アスワンの町のスークにて at Souq (Market), Aswan

左手に、Ramses Hotel が見える。5階建てくらいの灰色のビルだ。1階は周りのビルなどと同じく、種々の店が入っている。南面の入り口から中に入り、フロントへ。「INOUE Hirokazuという者だが、予約が入っているはずだ」と言うと、「Hirokaなら予約が入っている」と。名前くらいちゃんと伝達しろよなと思う。
ついでに、旅行代理店の人間に、(切符をもらうので)連絡取りたいと頼んでみる。0.75EGPで電話を貸してもらう。(モバイルフォンへは0.75均一料金?) 18時30分にホテルのフロントに来るという。
中学生くらいの年齢のベルボーイに連れられて、5階の414号室へ。窓を開けると、ナイル川が見える。部屋に連れてきただけで「バクシーシ」を要求してくる。1EGP渡しておく。(しかしながら、観光地料金と言うか、高い料金設定だ。)

バックパックを置いて外へ。今度は川沿いの道(幹線道路)を南下してゆく。対岸にあるエレファンタイン島(Elephantine Island)に行こうと思う。先ほどタクシーを降りた Thomas Cook の前まで来る。「歩き方」にはこの辺りに Public Ferry (公共フェリー)があると書かれているが、看板すら出ていない。とうとう、キリスト教会のところ(幹線道路はここで90度曲がっている)まで来てしまった。向こうから歩いてきたエジプト人グループが私を見て何かからかっているような言葉を投げて通り過ぎてゆく。川のほうから別の男が歩いてきて、「Elephantine, Boat, 10 Pound !」とか言ってくる。「Public Boat を探しているんだ」と言うと、「そんなものは無い」と返してくる。
「Public Boat でしか行く気はない」と言うと、仕方なく場所(すぐ横の階段)を指差す。何の看板も無いその階段を下りてゆくと、屋根つきの岸壁のようなところに出る。そこにさびて汚くなった看板が掲げられている。
旅行客には、値段の安い公共交通機関を使わせないようにするためかどうか知らないが、この看板は上の道からはまったく見えない。

先ほどの男がやってきて、「ほら言っただろう、ボートは来ないぞ」と言うが、無視してそこで待ちつづける。10分ほどして、対岸から黒い小さなボートがやってくる。待合所には3人ほどの女性が待っているだけだ。船は、ゆっくり川を渡り、ほんの1分ほどで対岸の船着場へ。料金 1EGP。同じく乗っていた女性たちは料金を払わず(顔パス??)陸へ。地図では左手のほうに「アスワン博物館」があるはずだが、そちらのほうはごみ置き場のようにごみが散乱し、その向こうに柵に囲まれた領域が見える。島の上のほうから流れてくるドブで洗濯している女性に博物館はどっちへ行けばいいかと聞くと、やはりそのごみ置き場みたいなところを横切って行くそうだ。ついでに、この島の町は無料で見られる「ヌビア人住宅街 博物館」だよということだ。あとで、町なかをさまよってみよう。

エレファンタイン島から、夕日に染まるアスワンの町の中心部を眺める
Aswan Town from Elephantine Island

しばらく行くと、コンクリートの小道に出る。看板があり、この小道を降りていくとボート乗り場があると英語で書かれている。下を見ると、観光客専用のボートが停まっている。町で声をかけてきた10 EGP のボートとはこれのことなんだな。半分閉じかけたフェンスの通用門から中に入る。ナイロメーターを見たいのだが、おそらく博物館の入場券を買わないといけないのだろう。博物館らしき小さな建物の前に座っているおっさんから入場券を買い、中へ。う〜ん、これでも博物館かという貧弱なものだ。照明すらついておらず(つけておらず)、薄暗い中を無造作に並べられただけの出土品を一通り見る。博物館を出て、ナイル川上流の方へ。庭園と名づけられた小さな公園に入る。この地で花を咲かせつづけるのは大変だろうと思う。そこを抜けるとクヌム神殿 (Temple of Khnum) に出る。警官が暇そうにぶらぶら歩いている。ほとんど破壊され、数本の角柱がやっと建っているだけの遺跡だ。(「Lonely Planet」 によれば 紀元前4世紀のものらしい)

ここで夕日に照らされるクヌム遺跡を撮影していると、カメラから変な音が。再びカメラの電源を入れると、ズームレンズが伸びたままがりがりと言う音がし、エラー。カメラが故障してしまった。残るは、ソフマップの(ヨドバシカメラ開店対抗セールの?)在庫処分で買ったFinePix 2500Z (19,000円) が残るのみとなった。デジカメは薄暗いところでの撮影を苦手としているので困ったことになったぞ。

さて、ナイロメーター (Nilometer)はどの辺りにあるのだろうか。「歩き方」ではどうも島の東の岸辺にあるようだ。下りてゆく道を見つけて高台から下りてみる。川に下りる階段か何かと思っていたら、その壁面に水位計測板のようなピッチが刻んであるのが見える。階段は下に行くほど崩壊しており滑りやすい。水面から5m以上上までピッチが刻まれており、アスワン・ダム完成前はこんな高さまで水位が上昇したのだと分かる。(アスワンの町やエレファンタイン島は川に面したところが崖になっており、水位が上昇しても水没することは無かったと思う。ルクソールの町もよく思い出してみればそうだった。)
このナイロメーターの上からは見たアスワンの町は、夕日に赤く染まってきれいだった。

 

エレファンタイン島のクヌム神殿跡
Ruin, Temple of Khnum on Elephantine Island, Aswan

再び来た道を戻り、エレファンタイン島の住宅街なども散策しながら、ボート乗り場へ。ボートに乗ってアスワンの町に戻る。すぐ前のThomas Cook で master カードから 400EGP キャッシング。ホテルの前を17時30分ごろ通り過ぎ(まだ旅行代理店の人間が来るには早すぎる)、駅のほうに向かう。アスワン駅、コンクリート造りで(発展途上国にしては)それなりにきれいだ。列車の時刻表を見る。英語版は無し。すべてアラビア文字で書かれている。知っている限りの知識を駆使して読んでみるが、とても疲れる。カイロ方面に一日に十数本の列車が走っている。(なるほど、今この瞬間も何らかの列車の改札を行っているようだ。案外列車の便はよさそうである。切符を外国人に売ってくれれば…)
駅前の食堂に入る。チキンのグリルとサラダ、スープ、ねっとりしたパン(エジプトではアエーシと言うらしい)2個で7EGP。大学生協の夕食の定食と味も量も変わらないようなものをエジプトまで来て食べる。

ホテルに戻り、フロントの前でしばらく待っていると旅行代理店の人間がやってきた。開口一番、「外国人にはバスのチケットは売ってくれない。タクシーで途中観光しながらルクソールまで行くので200EGP払え。」と言ってくる。とんでもない詐欺師だ。(この後の調査で、外国人にもバスの切符は売ってくれるが、早朝と夕刻の2本しかルクソールを通るものは無いそうである。他のバスは、ルクソールの数キロ手前で分岐する国道2号線に入るので、分岐点またはルクソール空港へ行く道の交差点で降りてミニバスに乗り、自力でルクソールしないに到達する必要があるそうだ。これはルクソール市民から聞いた話である。)
私は、「すでに多量の金を払ってるんだ、ただにしろ。」と言う。詐欺師、「180EGPにまけておくので払え。」と。
私、「それなら鉄道にする、鉄道の切符を買って来い」と言う。詐欺師、「鉄道は早朝しかない」と。またまたうそをつくのが上手でいらっしゃる。私、「駅の時刻表には一日何本も列車がると書いてある。」と言う。詐欺師、「外国人には早朝と夜間の2本しか売らない。」と。こいつに幾ら交渉しても埒があかない。イシス神殿は見たいが、ここで話を決裂させると、ルクソールの宿2泊とルクソール〜カイロの切符を捨てることになってしまう。私、「早朝の鉄道の切符を買って来い」と言う。詐欺師、「買ってくるので、今夜届に来る。」と。私、「今すぐ買って来い。1時間待ってやろう。」と言う。詐欺師は切符を買いに行った。

部屋に戻り、久々ぶりにシャワーを浴びて、テレビを見てから再びロビーへ。1時間で詐欺師旅行代理店は帰ってこなかった。20時、やっとやってきて、切符を受け取る。ご丁寧に裏面にアルファベットで列車番号や車両番号、座席番号を書いている。(表面のアラビア語版と対比すると、こちらは正直に書いたようだ)
詐欺師、「明日、ルクソールの駅に着いたら、ルクソールの旅行代理店の人間が迎えにきている。電話番号は ***** だ」と。ここでふと思う。明日の朝食はどうしよう。詐欺師に言って見る、「明日の朝食は、どうするんだ?」。詐欺師、「ホテルに頼んで、テイクアウトの朝食を用意してもらう」と。これで朝食が食べられるはずだ。

部屋に帰って、久々に寝る。