アルプスから地中海、ブルターニュからベルギー 旅日記 : コート・ダジュール

June 21, 2002 (Friday)

Genova -> Nice (ジェノヴァ - ニース)

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ジェノヴァ・ピアッツァ・プリンチペ駅に入線したニース行き IC342
IC342 for Nice Ville at Genova Stazione Piazza Principe

7時30分、ホテルをチェックアウト。バルビ(Balbi)通りに下りた所にある BAR でサンドイッチと紅茶で朝食。バックパックを背負って食べるのも苦しいので、席に座ったら料金が5割ほど高くなる。席代、ということか。
駅へ行き、切符を買う。ここの窓口も案外空いていて、10分ほどで切符を入手。ニース(Nice)行きの IC342 は、ミラノ発だが、幸いにも冷房車。15分遅れの9時10分、ジェノバ・ピアッツァ・プリンチペ(Genova Piazza Principe)駅を出発。ミラノを早朝に出た列車のせいか、そんなに客は乗っていない。ビーチに出かける雰囲気の客が大半だ。

ジェノバを出て、工業地帯をのろのろ進んだ後、地中海沿いに走り出す。20分おき程度に、乾燥した殺風景な駅に停車していく。外の景色は、トンネルと地中海の景色が半分ずつくらい。検札がやってくる。この日は、たまたま「切符のバリデーション」を忘れて列車に乗ってしまった。車掌に少し言い訳すると、その場でバリデーションの書き込みをしてくれた。(ありがたい) 11時、イタリアとフランスの境界のヴェンティミグリア(Ventimiglia)駅(フランス風に言うと Vintimille ヴァンティミレと言う)に停車。山側の線路に旧式のフランス国鉄の列車が停車している。すぐ横を、SBB マークの入った新型列車が通過していく。スイスからの列車がこの路線を走っているとは驚きだ。(Nice発Basel行き IC343。Nice -> Genova -> Milano -> Luzern -> Basel)

20分ほどヴェンティミグリア(Ventimiglia)駅に停車した後、列車はゆっくりとフランスへ入ってゆく。(海岸の雰囲気も、リビエラからコート・ダジュールへと劇的に変化する... そんなわけは無い。)
寂れた無人駅をひとつ通り越して、マントン(Menton)駅に停車。田舎の高級保養地といった雰囲気のアパートが立ち並んでいる。ここでかなりの乗客が降り、次のモナコ・モンテ・カルロ(Monaco - Monte Carlo)駅でもかなりの客が降りる。車内はガラガラ。
IC の割には、2駅に1駅は停まっている感じ。モナコとマントン以外の駅は、「駅前」=「ビーチ」といった感じで、さすが著名なリゾート地という感じだ。
11時50分、ニース・ビル(Nice Ville)駅に到着。

Nice - FRANCE (ニース - フランス)

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ジャン・メドサン通り(駅近くのマクドナルド前)
Avenue Jean Médecin (near train station)

列車から降りると、相変わらずの暑さ。湿度は、イタリアより少し低いかもしれない。駅の外に出る。イタリアの灰色の石造りの建物群から、南フランスの板張りのような真っ白なアパート群へと景色もがらっと変わっている。

ガイドブック(ロンリー・プラネット フランス)を取り出し、安宿の位置を確認すると、ほとんどは駅前にあることが分かる。(ただし、夏のバカンスシーズン中は、午前中の早い時間に全て満室になるとも注意書きがある)さて、6月20日は、現地の学校の夏休みが始まる時期でもあり、なんともいえない状況。とりあえず、通りを渡って対岸へ。適当にその辺りの道に分け入ると、なんと、ホテルだらけ。適当に安価そうなホテルで、それなりに、リゾートっぽいところを探す。(Niceまで来て、裏通りの小汚いところでは、リゾート気分出ない。)

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ニース旧市街のシャルル・フェリックス広場
Place Charles-Felix , Vieux Nice

その中から、道に面したバルコニーがリゾート気分を誘うアルザス・ロレーヌ通り(Rue d'Alsace Lorraine)にあるHotel d'Orsay (オルセー・ホテル)に決める。ツインしか残っていなかったが、1泊 31 EUR。ニースの安宿としては高いかもしれないが、フランス平均価格から考えると格安に入る。

荷物を置いて早速街へ(13:30頃)。まずは、昼食ということでジャン・メドサン通り(Avenue Jean Médecin)に出る。ちょうどマクドナルドがあったので入ったが、冷房が効いておらず強烈な暑さ。じっくり昼食どころではなかった。
食後、ジャン・メドサン通り(Avenue Jean Médecin)を海の方(南)へ歩く。暫く歩くとニース・エトワール商業城(Nice Étiole Shopping Mall)という大きなショッピングセンターがある。中に入ると、冷房がかかっている。地下の売店でジュースを買ってベンチで暫く休憩。 さらに南に行くと、真ん中にマセナ公園(Espace Masséna)のある大通りに出る。噴水のあるその広大な公園には、人っ子一人居ない。というより、太陽の反射があまりにもきつく、そこに留まろうと思う人がいないというところだろうか。

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ビーチ Beach , Nice

影の全く無い大通りを横切り、旧市街 (Vieux Nice) へ。昨日まで居たジェノバ旧市街と比べると、明るい色の建物ばかりだ。そこを大勢の観光客が歩いている。観光客の多い地区を抜けて、Colline Château の丘のふもとにある教会に入ってみる。サン・ジャック・ル・マヨール聖堂(Eglise St-Jacques Le Majeur)というその教会の調度品は、(ガイドブックによれば)17世紀のバロック様式だそうだ。こってりとした内装は、そんなに古くも思えないのだが...
旧市街の中心のサン・レパラテ大聖堂(Cathedrale Ste-Reparate)前では、アメリカの大学生の集団がクイズのようなもので盛り上がっている。観光客がうようよ歩いているのは一部の表通りだけで、裏路地は単なるアパートなどが立ち並んだ如何にも旧市街という感じだ。地元客向けの食料品店や工房がぽつぽつとあったりする。

なかなか車の途切れない Quai des Etats-Unis (合衆国岸壁通り?)を渡って海岸に出てみる。砂浜ではなく、小石の海岸。海で泳ぐ人よりも、浜辺で日光浴をする人のほうが断然多い。海岸はかなり奥行きがあるが、寝そべっている人がほぼ一直線に並んでいるのは少し不思議だ。エーゲ海の海岸ほどではないが、トップレスの女性がかなりいる。(エーゲ海より年齢層が若い感じがする)

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旧市街の路地。観光客がたくさん居る

旧市街でアイスキャンデーでも買おうとするが、値段に驚く。ジェノバの倍の価格だ。ホテルに戻ることにする。途中、ニース・エトワール商業城(Nice Étiole Shopping Mall)の中の公衆電話で日本に電話。駅前の売店で買った TISCALI のテレホンカードを使う。使おうとするが、使えない。電話機に突っ込んでも認識しないのである。困った。テレホンカードと一緒に渡された説明書をチラッと見てみる。フリーダイヤルに電話して、暗証番号を入力するタイプのようだ。非常に安価(普通の電話の数分の一の価格)に国際電話がかけられる。(「短縮番号で使える統計機能」で調べた結果では 7.5 EUR のカードで、日本に27分連続でかけられるそうだ。)

15時ごろ、ホテルに戻り昼寝。18時ごろ、Nice Ville 駅前の中華料理屋で夕食。Menu Express (おかず3品とご飯) と言うやつで 6.7 EUR。中国風に言えば「経済食 盆飯 三菜」と言ったところだろうか。食後、駅の向こう側に行ってみるが、特に何かあるというわけではない。ニコラス大聖堂(Cathedrale Orthodoxe Russe St-Nicolas)のたまねぎ頭の尖塔を遠くから眺める。ロシア皇帝ニコラス2世にちなんだ名前だ。ホテル近くの警察署(Rue d'Angleterre)の前でなにやらステージが作られている。警察署長の演説でもあるのかなと思ってみていたら、コンサートが始まった。

June 22, 2002 (Saturday)

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Nice - FRANCE (ニース - フランス)

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ニース旧市街 サレヤ並木通の露天(朝市)
Cours Saleya in the morning

6時45分起床。ミラノで買って、半分だけ残っていた食パンで朝食。今日は郊外のエズ (Eze Village)へ行こうと思う。昨日、駅のツーリストオフィスで聞いたバスターミナルに向かう。1日に8本しかないバスなので、乗り過ごすと時間のロスが大きい。(ロンリープラネットには村の説明10行だけで、行き方や所要時間など全く書かれていない。ツーリストオフィスで聞けと言うことなんだろうか...)

旧市街(Vieux Nice)の北側にあるバスターミナル(Gare Routiere Nice Cote D'Azur)に8時15分に着く。ちょっと早過ぎたようだ。旧市街に入って時間をつぶす。バスターミナルのすぐ前の Place St François には朝市の魚屋が出ている。ジェノバではイカ類が多かったが、ココでは魚が多い。Rue Droite の狭い路地を通って旧市街の中へ。肉屋は店先の「巨大な回転式ロースト製造機」で鶏の丸焼きを作っている。昨日、旧市街に来たときは昼過ぎだったので観光地としての顔しか見えなかったが、朝は地元民のための食料品店街となるようだ。
地中海の海岸に出る。朝は中年のおじさん・おばさんが多い。あらゆる場所で朝と昼とでは客層が違うようだ。テントで野宿しているバックパッカーがテントを片付けているのもちらほら見える。

バス停に戻り、9時の Roqueville 行きのバスに乗る。日本人の年配の夫婦や、若い女性も何人か居る。ツアーじゃない日本人もたまには居るようである。

Èze Village - FRANCE (エズ - フランス)

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エズ村の聖堂 Eglise , Èze Village

バスは急勾配の道を登り、ニースの街を離れる。海岸沿いのN98でなく、山沿いのN7を行くようだ。低木しか生えていない乾燥した剥き出しの斜面に沿って曲がりくねった道を15分程度行くとエズ・ビラージュ(Eze Village)の入り口のバス停に到着。(運賃 2.4 EUR)
駐車場にはすでに多くの自動車が停まっている。でも村に続く坂道に観光客の数はそれほどでもない。地元民の車なのだろうか。村の入り口にあるツーリストオフィスで地中海沿いのSNCF駅まで降りられるか聞いてみる。急な山道を歩いて2時間程度掛かるといわれる。真夏の日陰の無い道を2時間はちょっときつそうだ。帰りもバスにする。といっても、次のバスは10時50分の Roqueville 行きなので1時間以上この村を観光できるはずだ。

急勾配の坂を上って、村の門 (poterne)に到着。この門のある場所を除いて急勾配の崖に囲まれているわけで、完全に要塞村だ。日本のガイドブックでは鷹之巣村(Perched の日本語訳らしいが、なぜ鷹なのだろうか?)と言うらしい。

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エズ村のサボテン公園から海岸を見下ろす
from top of Èze Village

要塞のわりに簡単に辿り着けるのは N7 道路の鉄橋が村の入り口に架かっている為で、やはり観光客を地中海沿いの駅から歩かせたほうが感動が多いんじゃないだろうか。(あまりにも簡単に辿り着けるので、ちょっと拍子抜け)

古い(古そうに見える)小さな住居の間を縫って頂上を目指す。ほとんどの建物はホテルやレストラン、みやげ物屋といったものだが、「要塞村」の雰囲気を壊さないように看板やショーウィンドーなどはほとんど無い造りになっている。
教会(Eglise という一般名称だけの名前)の前を通り過ぎ、頂上へ。頂上一帯はサボテン植物園 (Jardin Exotique)。入場料 2 EUR。ありとあらゆるサボテンが山頂付近の傾斜面に植えられている。サボテンと遥か下の地中海。見事なマッチングだ。頂上に何を造るか試行錯誤したんだろうね... まあ、いい雰囲気なので成功と言えるんじゃないだろうか。

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エズ村の土産物屋

頂上には砦の跡が放置されている。砦跡から下を見下ろすと、ガイドブックに載っている「絶景」が広がっている。エズ・ビラージュのカフェ(Cháteau Eza。1泊350EURらしい)と、遥か1300m下のエズ・シューメーの村とSNCF駅。そして、真っ青な地中海にちょろちょろと走るモーターボートの航跡。このも景色を見に来るだけでも、かなり価値がある場所だと思った。

ツーリストオフィスで教えてもらったエズ=シュル=メール(Èze -sur -Mer)へ降りていく道を少し歩いてみる。ガイドブックにはニーチェ (Nietzsche) の道と言われていると書かれている。少し下った所から見たエズ村は難攻不落に見える。
バス停でバスを待っていると、韓国人か中国人の若い女の人に、SNCF駅への行き方をたずねられる。こういう人が、まれにいるんだろうね。

MONACO (モナコ)

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モナコのカジノ Casino de Monte Carlo

定刻どおりやってきた10時50分のバスに乗り、モナコへ向かう。運転手が聞いているラジオが、スペイン対韓国のサッカーの試合を中継している。国境の検問も、標識も無く(気づかなかっただけ...)モナコの市街地に入る。11時10分、終点で降ろされる。アパートに囲まれた場所で、コレといった目印も無い場所。ガイドブックを見ても、現在地がどこか分からない。適当に坂道を下っていくと海が見えてくる。高級アパートの間を通り抜けて行くと、公園に出る。向こうにカジノの建物が見える。カジノに興味があるわけではないが、とりあえず近くまで行ってみることにする。公園には正体不明のオブジェが飾られている。カジノの周りには、日本人ツアー客が団体で歩いている。ベル・エポック様式の建築で、なんか近寄りがたい雰囲気。まあ、バックパッカーの私には「近寄らせてもらえない」のですが...

カジノの建物を迂回して、海沿いの公園に出る。焼きつくような太陽の下、歩いている人はほとんど居ない。紫色の花を付けた木が涼しそうな雰囲気を醸し出しているが、一刻も早く冷房のかかった場所に避難したい気分だ。地中海にはかなり大きな帆船が浮かんでいる。帆船... 役立たずの贅沢な趣味の船...。さすが欧州一の金持ち国家と言うだけはあります。

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J.F.ケネディ大統領通りから見たモナコ市中心部
from Ave President JF Kennedy , Monaco

Ave d'Ostende を下って(←モナコ・グランプリのコースらしいです)、市内中心部(SNCF駅の方角)を目指す。湾の奥には高級アパートが急斜面の崖を埋め尽くし、港にはクルーザーがきらきらと真昼の太陽を反射している。湾の対岸には、王宮がある丘が見えている。暑いので、明日出直そう...
自動車が好きな人にはモナコ・グランプリという自動車レースで有名な街でもあるらしい。300km/h程度の車が走るんだから怖いですね。カーブ付近の1階の店舗などはヒヤヒヤ物ではないかと思う。
アパートの間の道を駅のほうへ向かって歩いて行く。北欧より清潔できれいな街。金持ちしか住まないんだから、当然だろうけども、歩いていて気持ちいいです。その反面、物価が高い。昼食はニースに戻ってからとする。

ついでに言えば、道路標識が自動車中心なので、歩いて観光するには恐ろしく不便。SNCFの駅の位置をはっきり書いていないので、何度も同じところをうろつくことになってしまう。今は岩山の中のトンネルに駅があるが、以前は外を走っていたようで、廃線跡の駅舎のところから新駅に入れるようになっている。それにしても分かりにくい...
(鉄道のような安い交通機関を使ってもらったら困ると言うことなんだろうか)

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モナコ・モンテ・カルロ駅 Gare SNCF Monaco Monte Carlo

その鉄道駅(Monaco Monte Carlo 駅)は入り口から平面エスカレーターをひたすら乗った奥の方にあった。駅員などは全く居らず、自動券売機が2台だけ。ICクレジットカードかコインしか使えない。(持っているコインで何とか間に合ったが、有人窓口に行く場合はホームの反対側に有人の窓口がある)

12時14分の列車(TER81170)に乗り、ニースを目指す。BB25600電気機関車に牽かれた かなり古い RIO (Rame Inox Omnibus) タイプの列車。窓から心地よい風が吹き込んでくる。最近では2階建ての新鋭電車 TER-2 (TER Z23500) が目立ってきたので、古い列車に乗ると旅情を誘う。列車は地中海沿いに走って、小さな港町に数箇所停まった。12時40分、ニース・ビル駅(Nice Ville)に到着。

Nice - FRANCE (ニース - フランス)

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ニース近代美術館にて at Nice MAMAC

駅前の中華屋で昼食(6.7EUR)を食べてからホテルに戻り昼寝。
16時ごろ、太陽も傾いてきたので近代美術館(MAMAC = Musée d'Art moderne et d'Art contemporain)に出かける。今朝エズ行きのバスの出発したバスターミナルの隣だ。入場料 3.8 EUR。入り口で「もうすぐ閉館だけどいいか?」と聞かれたが、1時間もあれば十分だ。

近代美術はあまり人気が無いのか、近代美術館は欧州のどの国でも結構空いている。のんびりと見てまわるには好都合だ。ニースの海岸とモナコのカジノ前公園にあった「オブジェ」と同じものが展示されている。ニキ・ド・サンファル(Niki de Saint Phalle) というアーティストの作品のようだ。(この作者、有名なのだろうか?調べてみると日本にも専門の美術館もあるほど有名なようだ → 那須高原 ニキ美術館) 海岸にあった野球選手の像の"本物"はえらく小さかった。モナコのカジノ公園の像も実物は小さい。かなり拡大コピーしたレプリカを屋外に置いているようだ。(ちなみに、この展示は2002年10月まで)
屋上に出てみる。変った曲線の屋根を結ぶように橋が架けられている。北側にアクロポリス(ACROPOLIS)とでかでかと書かれた建物が見える。平地にあるアクロポリス。妙な建物である。(Tresorerie Generale : 直訳すれば"財務省"。予算決定権を握った神が宿るアクロポリスと言うわけでしょうか。日本もフランスも同じですね。)

夕食は再び駅前の中華屋。やはり「ご飯」に勝るものは無い。日本人だなぁと実感する。夕食後、Rue de Belgique のネットカフェへ。10分 1 EUR。20分ほど利用する。日本語は表示不可能。速度も遅いので、フォントをダウンロードするわけにもいかない。

June 23, 2002 (Sunday)

Menton - FRANCE (マントン - フランス)

6時45分起床。 Avenue Jean Médecin に出たところにあるマクドナルドへ。2日前の昼時に入ったときはとんでもなく暑かったが、朝は道路沿いのテラス席が涼しくてよかった。往復切符(7.6EUR)を買って、8時16分発のTER81121に乗ってマントン(Menton)に向かう。

地中海の青い海と、小さな漁村、ビーチが現れては消え、シャンデリアのようにきらめくモナコ・モンテカルロ駅を過ぎ、8時44分 終着駅マントン(Menton)駅に到着。あと2駅でイタリアのVentimiglia (ヴェンティミグリア) 駅というフランス最果ての地だ。

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マントン市役所前の広場 Hotel de Ville , Menton

10 人程度の乗客に混じって駅を出る。駅前はいきなり住宅街。とりあえず、一番広い道が続いている方向(イタリア方向)へ歩いていく。朝早いせいか、店は全て閉まっている。数分歩くと、大きなプロムナードに出た。(Avenue de Verdun と Avenue Boyer に挟まれた公園)。犬を散歩させる人が居る程度で人も車も全く通らない。大通りを地中海の方向へ突き当りまで行く。カジノがあった。モナコのとは比べるべくも無い小さな建物だが、雰囲気は似ていなくも無い。ガイドブック(ロンリープラネット)は次のように書かれている。(地図ぐらいつけてほしいものだが、まあコレだけの記述があれば、無くても何とかなる...)

ということで、ツーリストオフィスは閉まっていることは確認したし、地図なしで行動ということになる。とりあえず、ガイドブックお勧めの「サン・ミッシェル聖堂」「ジャン・コクトー美術館」「海岸」を見に行くこととする。どちらにしても、海岸沿いを北東に行けばいいわけだ。
カジノのすぐ向こうに海が見えているので、カジノ前を左へ(北東へ)行く。しばらく行くと、歩行者天国のようになり、おそらくバカンス客向けのショッピング・レストラン街(アーケード無し)になる。が、日曜だからかシーズンが始まっていないからなのかは知らないが、店はほとんど開いていない。市庁舎の前の小さな公園。結婚室(? Marriage Hall 。もしかして、もっと外交的な儀式の事?)というのが市役所内にあるらしい。まあ、日曜で閉まっていて確認すべくも無い。

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マントンのビーチ Beach , Menton

市役所前あたりから商店がちらほら開き始めている。観光客(年配の西洋人が多い)もそれなりに歩いている。建物の間の路地を抜けてプロムナード・ソレイユ(Promenade de Soleil ="太陽の遊歩道"とでも訳すのだろうか)に出る。目の前は砂浜。というか、ニースと同じような石ころの砂浜。まだ9時だがたくさんの人が日光浴している。朝のほうが涼しくて日光浴には適しているのかもしれない。海岸に立っている道路標識には、「← ITALIE」となっている。そのイタリア方向を見ると、砂浜の先に砦が見える。ガイドブックが言う「ジャン・コクトー美術館」だろう。行ってみる。手前の公園ではクラッシックカー愛好家の展示会がやっている。太陽の散歩道を走るクラッシックカー。なかなか風情がある。砦の美術館に着く。まだ閉まっている。砦の横の階段を下りてみる。立小便でアンモニア臭い。特に何も無い。単なるテトラポットが沈められた海があるだけだ。

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マントンの旧市街 Vieille Ville , Menton

旧市街(Vieille Ville)に向かう。区画整理されていない狭い路地の階段を登ってゆく。頂上に教会があり、教会前のテラスからは旧港(Vieux Port)が眼下の望め、対岸はイタリアのヴェンティミグリアだろうか。国境と言う切れ目があるわけでも、そこで建築様式が変るわけでもなく、遥か向こうまでオレンジ色と白の箱型の家々が乾燥した急斜面にしがみつくように建っているだけだ。
教会に入ってみる。外の強い日差しに慣れた目には暗黒に見える。ひんやりと冷たい教会の内部では、ミサが始まろうとしていた。牧師か敬虔な教徒だろうか、話を聞いていかないかと誘われる。 教会を出ると、先ほどは気づかなかったがテラスの地面は白黒の小石を敷き詰めたモザイクとなっている。フランスの色使いというよりジェノバで多用されていた色の組み合わせ。単に、この辺りでは白黒の石がたくさん取れるとか... いう単純な理由だろうか。旧市街を後にし、岬の先にある砦へ。ジャン・コクトー美術館(Musée Jean Cocteau)に入る。そういえば、この砦も白黒の石を組み立てて作られている。入場料 3 EUR。名前は聞いたことがあるかもしれないが、今まで特に意識したことの無かった芸術家だ。

地中海風・南仏風の作品と言われればそうとも思えてくるし... でも、昨日見たニキ・ド・サンファルの方がむしろ南仏風。と思った。

美術館を出て、再び町を通って駅へ。駅の売店でアイスキャンデー(2 EUR)を買い10時45分発の列車TER81162に飛び乗る。反対側の線路をスイス鉄道(SBB)の涼しげな列車(Milano経由、Basel SBB行き)が通り過ぎてゆく。1週間ほど前まで涼しい国に居たんだよな... とふと思い返す。

MONACO (モナコ)

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モナコの王宮(大公宮殿) Palais du Prince , Monaco

10分ほどでモナコ・モンテ・カルロ駅(Monaco Monte Carlo)に到着。ホームから長い長いトンネルを通って昨日迷った道を、今日はまっすぐ旧市街(Monaco Ville , Rocher de Monaco)の方へ。プラス・ダルメ(Place d'Armes)で交通整理していた警官に聞く。王宮は石畳の急坂を登るのか、それとも自動車道の緩やかな坂のほうか?と。「観光客は急坂を登っていくよ。」との答えだった。(緩やかな坂は水族館の裏手に出る道)

旅行前に調べたインターネット情報では、心臓破りの坂とかとても登りきれたものでないとか書かれたホームページもあったが、そんなのはデマ。Rue de Remparts 10分も登れば王宮前に着く。坂道を登りきったところの Rampe Major には網を持った女神像のようなものがある。ちょうど昼時だからか、宮殿(大公宮殿 Palais du Prince)の前に人だかりが出来ている。衛兵の交代式と言うやつをこの国でもやるらしい。白い軍服を着た近衛兵が宮殿の前に暇そうに立っている。欧州のさまざまな国で近衛兵が"形式的に"宮殿前を警備しているのを見てきたが、現代では単なる観光アトラクションですね。(本当に警備したいのなら、トーチカでも造って軽機関銃で武装した兵士を配置しないと、意味が無いんじゃないかな。まあ、欧州はそれほど平和だと言うことで...) まだ11時30分なので衛兵交代は行われない。(11時55分開始らしい)

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海洋博物館 Musée Océanographique

旧市街の中へ入ってみる。日陰になり涼しい。宮殿近くはレストランが軒を連ねている。旧市街の細い道をずっと行くと、海洋博物館(Musée Océanographique)の前に出た。衛兵交代はどうでもいいので、水族館に入ってみることとする。入場料 11 EUR。結構な価格だ。中に入ると、日本の"お子様、カップル向け"水族館と違い、"学術的に見せる"展示内容となっている。まずは2階へ。モナコの海洋調査の歴史を紹介した区画。1階は剥製と魚拓。日本の捕鯨に苦言を呈している欧州諸国も、昔は鯨を獲っていたんじゃないか...。魚拓(Gyotaku)と日本語が書かれているが、日本の魚拓が展示されていた。魚拓とは博物館に展示するほど欧州人には珍しいものなのだろうか。
地下は生きた魚が飼われている水族館となっている。地中海の浅瀬の海をそのまま持ってきた感じの水槽がずらっと並んでいる。目の前の地中海の水中はこんな風になっているんだ。解説によると、以前に比べて魚が減っている、特にイセエビ(のように見えた巨大なえび)は絶滅の危機に瀕しているそうだ。そこで紹介されていたのが、日本の養殖技術。養殖は「日本発祥」のテクノロジーだそうだ。魚拓・養殖と日本贔屓な展示内容は、何らかの裏の意味があるのだろうか。

しばらく海洋博物館の中をうろついた後、外へ。モナコ大聖堂(Cathedrale de Monaco)をチラッと見て、旧市街を通って宮殿の方へ。途中でパニーニ(焼きサンドイッチ)を3.6EURで買い、宮殿前のベンチに座って昼食とする。
崖の欄干にとまったウミネコ(かもめのような鳥)に餌をやっている人が居る。ちょっとパニーニをちぎってやってみると、何匹かこちらにやってくる。観光客が餌を与えるので、完全に餌付けされた状態になっている。

Eze-sur-Mer - FRANCE (エズ=シュル=メール - フランス)

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鉄道駅。消えそうな駅名標

13時11分の列車 TER81182 に乗って2駅向こうのエズ・シュー・メー(Eze Sur Mer)へ。およそ8分で到着。昨日訪れたエズ・ビラージュ(岩山の上の砦)の麓にある村。駅(当然のことながら無人駅)を出て、海沿いに並んでいる家を抜けると海岸に出る。砂浜には海草などが打ち上げられている。ぱらぱらと日光浴をしている人が居るが、大きな町の海岸に比べたらのんびりしたものだ。少し沖合いにはヨットがのんびりと浮かんでいる。
山の方を見上げると、かろうじてエズ・ビラージュの砦が見える。気を付けて見ないと、気づかないくらい小さなものだ。線路の山側に道路があり、数件のカフェなどがある。観光バスが1台停車している。

ピンク色の花が茂った駅で列車をしばらく待つ。13時47分発の TER81186に乗って、さらに2駅向こうへ。
列車は砂浜の広がる海岸をしばらく走り、Beaulieu-Sur-Mer から小さな半島(Saint-Jean-Cap-Ferrat)の付け根のトンネルに入る。トンネルを抜けると、日本でよく見る「小さな岩の島に松が生えた」景色。少し日本的な景色。

Villefranche-sur-Mer - FRANCE (ヴィルフランシュ=シュル=メール - フランス)

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町の中心部

13時55分、砂浜のすぐ横にあるビルフランシュ・シュー・メー(Villefranche-Sur-Mer)駅に到着。駅のプラットホームのすぐ下は砂浜。海岸で遊ぶ子供の声がここまで聞こえてくる。駅を出て、Mont Boron 半島の方へ向かって歩く。道路(Quai Amiral)沿いの山肌に沿ってカフェやペンションが立ち並んでいる。海はエメラルドブルーの太陽光を反射して、上に浮かんでいるヨットやクルーザーを照らしている。5分ほど歩くと、マリーナ(小さな船着場)。冷房が効いている真新しい建物の中には、ツーリストオフィスが入っていた。このマリーナからは観光遊覧船も出ているようで、小さな遊覧船からたくさんの人が吐き出されてきた。マリーナから Mont Boron 半島を見上げると、そこが旧市街。

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町の中心を貫いている地下道(オプスキュール)

ロンリープラネットには「14世紀の旧市街、16世紀に造られたシタデルと教会。Obscure がひとつの見所。ジャン・コクトーが愛した町」と書かれている。観光客向けの露天(花や古本、インテリア類)を抜けて旧市街へ入る。狭い路地を登っていくと、教会があった。教会の向こうは、新しい別荘などが建っている。かなり小さい旧市街。その中央辺りの建物の下に掘り抜かれた地下道の入り口にオプスキュール(Obscure) と街路表示板が貼られていた。地下道 → 暗い → 「フランス語の暗い=Obscure」。単純な命名。
しかし、この洞窟風の通路、その形状といい、ぼんやりと灯った電球といい、いい雰囲気出してます。「これぞ旧市街」という名所です。それにもかかわらず、ロンリープラネットでの扱いは「たったの1行」。そんなもんですかね...。

しばらく旧市街をうろうろしてから駅へ向かう。今度は山沿いの道を通ってゆく。Saint-Jean-Cap-Ferrat 半島のトンネルから列車が出てくるのが見える。急いで駅へ向かい、14時43分発の TER81190 に乗ってニースに戻る。(ニースまで2駅、約5分。)

Nice - FRANCE (ニース - フランス)

駅前の中華屋で定食を食べる。半日近く、猛暑の中を歩いてきたので、水をがぶ飲みする。(フランスの中華屋では水はセルフサービスなので好きなだけ飲める)
ホテルに戻り、洗面所でズボンやシャツをまとめて洗い、ベランダに干す。日差しが相当強いからか、空気が乾燥しているからかは知らないが、2時間ほどで完全に乾いてしまった。

夕方の街をしばらく散歩する。夕方になると、少し風が吹いて涼しく感じる。