アドリア海沿岸と中欧の旅 : ブダペスト, セーケシュフェヘールヴァール

※ 未編集の旅行記です

October 7, 2005 (Friday)

Bratislava - Slovakia (ブラチスラヴァ - スロバキア)

5時45分起床。夜明け前で、外はまだ真っ暗だ。ホテルの部屋の蛍光灯には、毎日たくさんの小さな虫が集まってくるが、蚊はいなかったので問題なしだ。6時20分、ホテルをチェックアウトしトラムの停留所へ。

本当はこのホテルの朝食を食べたかったのだが、ブラチスラヴァ発の列車に間に合わないので諦めた。トラムの停留所に着くと同時に、列車がやって来る。運がいい…。こんな朝早くなのに、トラムの車内は通勤客で満員だ。

Tram
Pionierska(06:25頃発)→ Hlavná stanica(06:40頃着)
Tram, Line 3 運賃 14 コルナ(49 円)

ブラチスラヴァ中央駅でブダペスト行き列車を待つ。郊外から次々と列車が到着し、大量の乗客が駅のコンコースに吐き出されてくる。通勤ラッシュがこんなに朝早いのは、企業の始業時間が8時より前なのかな。

Train
Bratislava hlavná(07:15発)→ Budapest-Nyugati pályaudvar(10:25着)
Train, R235 往復運賃 3,750 フォリント(2,062 円)

チェコのブルノ始発、ブラチスラヴァを経由してブダペストまで行く普通列車。チェコ国鉄の車両が6両、それぞれのコンパートメントに1人から2人くらいしか乗っていない。

ブラチスラヴァを定刻に出発した列車は、小さな駅にも一つ一つ停車しその度に若干の乗客が乗り降りしている。ドナウ川沿い1時間半ほど走り、国境のŠtúrovo駅に到着。列車に乗っていたほとんどすべての乗客は、スロバキア国内で降りてしまって、国境を越える人はほとんど居ないようだ。私と同じコンパートメントに座っていたおばさんも、国境駅で下車していった。

出入国検査があり、パスポートにスタンプを押される。オーストリアとの国境ではスタンプなしだったので、同じEU内でも扱いが違うのだろうか。

列車はハンガリーに入り、車窓の景色が一変する。スロバキアは広大な畑が多かったのだが、ハンガリーは畑と林が入り混じり、住宅や工場もそこら中に建っている。終点のブダペスト西駅には定刻通り到着。

Budapest - Hungary (ブダペスト - ハンガリー)

budapest-map.jpg

西駅の構内に観光案内所が見つからなかったので、駅前の環状大通りを南東へ歩きながら、旅行会社を探す。1軒め、Volanツアーズと言う旅行会社に入り30〜40ユーロの所がないかと聞いてみると、もっと高い値段でないと候補がないとのこと。地下鉄1駅分歩いて、オクトゴン駅のところにある旅行代理店IBUSZに入る。民宿(プライベートルーム)なら希望の価格で探すことが出来るそうだ。これだけ大きい街なのに、1泊5000円程度のビジネスホテルすら無いんですかね…。民宿の予約をお願いすると、3泊で手数料込み16,950フォリントのところが見つかる(1泊あたり5,650フォリント, 3,107円)。料金先払いらしいので、足りない分を旅行会社で両替して支払う。クロアチアで通貨レートを勘違いしてATMキャッシングしすぎたお金も、ここで一気にハンガリー フォリントに交換してしまった。

民宿のチェックインが14時以降ということで、旅行代理店に荷物を預かってもらって観光に出かける。オクトゴンの交差点から、アンドラーシ通りをまっすぐ北東の突き当りまで、およそ1.4km歩く。途中にあるビルの屋根に「TERROR」という文字入りの巨大な庇がある。ナチス・ドイツやソビエト連邦に虐げられたハンガリーの黒歴史を展示した博物館「恐怖の館」だそうだ。

アンドラーシ通りの突き当りは大きな公園(市民公園)になっていて、通りの正面にはかつての国王など「ハンガリー人の偉人像」が並ぶ英雄広場だ。第二次大戦以前は、マリア・テレジアやレオポルト1世などのハプスブルク家の偉人が並んでいたそうだ。それらの像を外したのは、オーストリア・ハンガリー帝国が解体したのちに、名実ともにオーストリアの影響から脱却したかったのだろう。

公園の大きな池を回りこんで向こう岸に行くと、森の中にヴァイダフニャド城がある。19世紀末、ハンガリー建国1000年を記念して、複数の名城の特徴をコピーして造られた「理想の城」だそうだ。城の絵を描いている高校生の団体が居る。理想のデッサンを描く授業だろうか…。城を眺めていると、女子高生からタバコを勧められる。旧ソ連圏の「お近づきのしるしにタバコを薦める」のは、現代の高校生にもちゃんと受け継がれているようだ。こういう伝統がいいか悪いかは別にして…

Metro
Hősök Tere(12:30頃発)→ Oktogon(12:35頃着)
Metro M1 10枚綴り回数券運賃 145 フォリント(80 円)

オクトゴン駅に戻り、バーガーキングで昼食。ワッパー・ミール(880フォリント, 484円)。旅行代理店IBSUZに戻り、預かってもらっていた荷物を回収。予約した民宿(プライベートルーム)に向かう。

オクトゴン交差点よりアンドラーシ通りを南西へ。先ほど見に行った市民公園と反対方向の突き当りまでゆくと、聖イシュトヴァーン大聖堂がある。20世紀初頭に完成した、ハンガリー王国の初代国王イシュトヴァーン1世を祀った大聖堂だ。ネオ・クラシカル様式(ルネッサンス・リバイバル様式)の建物は、ブダペストで最も高い建物で、高さ96mのハンガリー国会議事堂と同じ高さだそうだ。宗教の権威と、国会の権威が、何方が高いかを競わないという意思表示だろうか。それほど、中世は宗教の横暴があったということなのだろう。

14時少し前、聖イシュトヴァーン大聖堂から200mほどの所にある民宿へ。このあたりは、事務所とアパートが混在した雑居ビルが建ち並んでいる、ブダペスト中心部のオフィス街のようなところだ。少し北には国営テレビ局の本部や国会議事堂、省庁のビルも建ち並んでいる。こんなとこに、民宿(プライベートルーム)ですか…。

指定された住所の部屋の呼び鈴を押し、中に入れてもらう。年配の女性が住んでいるアパートの一室で、そのなかの1部屋が民宿として貸し出しているようだ。

部屋に荷物を置き、ドナウ川の対岸にあるルカーチ温泉に出かける。民宿からは、ハンガリーTV本部、国会議事堂の前を通り過ぎ、マルギット橋を渡る。2.5kmほど歩いて、ルカーチ温泉に到着。

ルカーチ温泉は、12世紀に聖ヨハネ騎士団が当地に開いた湯治場を起源としている。館内には、オスマン帝国時代に火薬工場が併設されていた時の壁も残存しているそうだ。現在の滞在型湯治施設は、19世紀末に建てられたものが原型となっているそうだ。

受付で基本料金(3時間の入湯とロッカー利用料)を払いバーコードの印刷されたチケットをもらう。以前、この温泉を利用したことがあるので、おおよその利用方法はわかってる。まず、ロッカールームのある建物に向かい、係員に個室のようなロッカーを割り当ててもらう。そこで水着に着替えて、ロッカーに荷物を入れ鍵を掛け、別棟の温泉プールに向かう。

円筒形ヴォールトの屋根、円柱が並ぶ屋内温泉にまず入る。古代ローマの浴場もこんな感じだったのだろうか… などと考えながら。温泉で温まった後は、屋外にある巨大な温水プールに入る。別室には高温サウナなどもあるが、サウナは苦手なので行かない。ロッカールームのある建物の出口で、入場券のバーコードを読みこませると、滞在時間に合わせた料金が精算され返ってくる。

民宿の近くにある中国ビュッフェ(快餐)で夕食。昼頃は近くのオフィスからやってくる人たちで大混雑しているが、夜は空いている。中華の炒め物とご飯(750フォリント, 413円)を食べる。久々にお米を食べた。

Hotel
民宿(プライベートルーム), Október 6. 通り 24番地 2.EM.3
5,000フォリント(2,750円)/1泊

October 8, 2005 (Saturday)

6時30分起床。7時半に歩いてデアーク・フェレンツ広場に向かう。ここにマクドナルドがあるが、8時からということでまだ開いていない。地下鉄でブダペスト南駅へ。

Metro
Deák Ferenc tér(07:45頃発)→ Déli Pályaudvar(07:55頃着)
Metro M2 10枚綴り回数券運賃 145 フォリント(80 円)

南駅コンコース内のハンバーガーショップで、トンカツ・バーガーを買い(480フォリント, 264円)朝食とする。切符売り場でセーケシュフェヘールヴァールまでの往復券を買って、プラットホームに向かうと、列車がちょうど出発するところだ。

Train
Budapest-Déli pályaudvar(08:23発)→ Székesfehérvár(09:50着)
Train, R4512 往復運賃 2,480 フォリント(1,364 円)

古びた客車は、中も外も落書きだらけ。消しても無駄なので、落書きを残したまま走らせているのだろうか。途中駅から乗車し、途中で降りてゆく乗客が多い。始発から終点まで完乗する人は案外少なかった。ブダペストを出て1駅目が他路線との乗り継ぎ駅、2駅目には巨大なTESCOショッピングモール。Velence湖畔の駅では、たくさんの子供を連れた人が下車。1時間半で、終点のセーケシュフェヘールヴァールに到着。地方都市の寂れた駅と言った感じのところだ。

Székesfehérvár - Hungary (セーケシュフェヘールヴァール - ハンガリー)

szekesfehervar-map.jpg

セーケシュフェヘールヴァールは、ブダペストやウィーンからバルカン半島に向かう交易路上にあり、歴代のハンガリー国王の戴冠式が行われた街。戴冠式が行われ、王が埋葬された聖母マリア教会は、オスマン帝国の占領下で消失したそうだ。街の名前は、ハンガリー王室を象徴する色の「白」を由来とする「白い城」だという。

駅構内の地図で旧市街の場所を確認し、北西1.5kmほどのところにある旧市街を目指して歩く。道には、旧市街を示す標識などは見つからず、ここに鉄道で来る外国人観光客は想定されていないのかも知れない。

低層アパートが並ぶ住宅街を通り抜け、旧市街に入る。コシュート通りを進んでいくと、聖ステファン大聖堂の内陣外側の壁が見えてくる。18世紀に建てられたバロック様式の大聖堂。正面に回りこんで中に入ると、マリア・テレジアがなんちゃらと書かれた巨大な石版がある。

大聖堂を出て、さらに旧市街の中心方向へ少し歩くと、市庁舎広場に地球儀のような岩の球体が置かれている。十字架が上に付いた球体は「宝珠」といい、キリスト教の権威の象徴だそうだ。右方向には、かつて聖母マリア教会が存在した空き地「遺跡公園」がある。オスマン帝国がハンガリー本土を占領するまで、ここがハンガリー王国の権威の中心だった記念碑として、宝珠を道の真ん中に置いたのだろう。

市庁舎広場を西へ。ここは観光客は余り来ないのか、土産物屋レストランといった類のものは見当たらない。市庁舎、フランシスコ教会などが広場を取り囲んでいる。地元の人向けのお店が並んだ通りをさらに西へ少し行くと、大きなショッピングモールがある。旧市街にはほとんど人が歩いていなかったが、ショッピングモールは郊外からたくさんのお客さんがやって来ていて大盛況だ。商店街が寂れて、ショッピングモールが客を奪う構図は、この国でも同じなんだね。

かつてのハンガリー王国の王都遺跡を見て満足したので、列車に乗りブダペストに戻る。

Train
Székesfehérvár(12:11発)→ Budapest-Déli pályaudvar(13:10着)
Train, D9007 往復運賃 2,480 フォリント(1,364 円)

ハンガリーの西端、オーストリアとの国境付近の街ソンバトヘイからやって来た快速列車に乗車。列車は数分遅れてやってきた。各車両、真ん中で仕切って喫煙・禁煙のコンパートメントが並んでいる。この国では、喫煙区画が半分造られるくらい優遇(?)されているようだ。

この列車快速なので、往路と違い半分くらいの時間でブダペストに到着。さすが快速…。

Budapest - Hungary (ブダペスト - ハンガリー)

ブダペスト南駅から歩いてモスクワ広場へ。広場の真ん中にはゲジゲジの玉ねぎのような彫刻。Sellőと名付けられた噴水だそうだ。第二次大戦後、ソ連の主導で共産国家となった後に、モスクワ広場に改称されたそうだ。広場に面して、CITIバンク、マクドナルド、KFCなど、これみよがしに「堕落した資本主義の見本」が出店している(笑。

トラムに乗り、ゲッレールト山の麓まで向かう。

Tram
Moszkva tér(14:15頃発)→ Szent Gellért tér(14:30頃着)
Tram, Line 18, 10枚綴り回数券運賃 145 フォリント(80 円)

2003年に初めてブダペストを訪問した時、この付近の民宿(プライベートルーム)に宿泊した。トラムの停留所から、その民宿があるアパートが見えている。

今回は、ゲッレールト山に登る。ゲッレールト温泉の横から、公園の遊歩道(登山道)が始まっている。どんどん登って行くと視界が開け、ドナウ川に架かる自由橋や、対岸の繁華街ヴァーツィ通り付近の街並みがよく見える。さらに登って行くとヤシの葉を持った巨大な女神像「自由の像」がある。この像は、ハンガリーが枢軸国から開放された記念として、ソ連が作ったそうだ。

自由の像がある山頂(標高235m)は、19世紀中頃に造られた城塞(ツィタデッラ)が鎮座している。ハンガリー王国が作った城塞が活用されたのは、皮肉なことにハンガリーを共産主義化しようとしたソ連によってだった。1956年のハンガリー動乱のとき、ソ連軍がここから市街地を砲撃したのだ。

現在は博物館ではなく、土産物屋などが軒を連ねる単なる展望台となっている。

夕食は、昨日と同じく民宿の近くにある中国ビュッフェ(快餐)で食べる(750フォリント, 413円)。日が落ちて、セーチェーニ鎖橋の夕景を撮影に行くと、昨日とライトアップの色が切り替わっている。今日はピンク色のライトが鎖橋を照らしている。乳がん検診を受けてくださいという「ピンクリボン週間」で、照明もピンクにしたようだ。

Hotel
民宿(プライベートルーム), Október 6. 通り 24番地 2.EM.3
5,000フォリント(2,750円)/1泊