バルカン半島南部旅日記 :
   ケルキラ、ナフプリオ、ミケーネ、エピダウロス

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October 2, 2007 (Tuesday)

Sarandë - Albania (サランダ、アルバニア)

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サランダ湾沿いの道

Promenade beside Saranda Bay

昨日の夕方に夕立の後、快晴になり、夜中は満天の星空だった。真夜中にホテルのベランダから見上げると、オリオン座などの冬の星座が輝いていた。

7時起床。バスターミナル裏手のギロス屋で朝食。1/2匹分のローストチキンが350レク(約455円)。昨日食べた店より50レク割高。町の中心部にある5世紀のシナゴーグ跡をのんびりと眺めてからホテルに帰って、荷物を持って出発。フェリー乗り場に向かう。
何人かの客が出国審査の前にあるベンチでのんびりと休憩している。窓口でケルキラ行きのチケットを購入。17.5ユーロ(約2870円)。ちなみに、もう一本後の12時45分発なら15ユーロだという。

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サランダ港に停泊するコルフ島行き国際定期船
International Ferry 'KALIOPI', Anchor at Saranda Port

出国審査のカウンターでパスポートにスタンプを押してもらうが、入国時にもらったビザ料金のレシートか何かは回収されなかった。捨ててよかったという事なのだろうか...。建物を出るといきなり岸壁で、すぐ前に小さな赤い客船が停泊している。シェパードが1匹、岸壁を駆けまわって遊んでいるが、一応税関の検査をしていることになっているのだろう...。

国際定期路線と書けば豪華な船が就航しているように聞こえるが、隅田川や大阪の大川で運行している観光船程度の大きさの小さい船だ。
IMOに登録されているデータによれば、KALIPOI号はアルバニア船籍で1979年建造。排水量129ton、全長33mで最高速度は10ノット程度。10時30分の出発予定時刻の5分前に出発した...。

Ferry
Sarandë,サランダ(10:25発) → Κέρκυρα,ケルキラ(12:50着)
Ferry 運賃17.5ユーロ(2870円)
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サランダの街が遠ざかってゆく
departing from Saranda

客船の屋外デッキには家族連れと思われる人達が5人ほどベンチに座っている。古めかしい布張りの長椅子がある船室には、お年寄り夫婦が2名。乗客はこれだけだ。港を出て、サランダの町がだんだんと遠ざかっていく。湾を出てコルフ海峡に差し掛かると、波が少しだけあるようで、船が左右に大きく揺さぶられる。ケルキラの方からやってきた客船がすぐ横をすれ違って、サランダの港に向かっていくのが見える。

群青色の海と真っ青な青空、左手には人家がほとんど見当たらないアルバニアの陸地、右手にはリゾート地の別荘が険しい崖沿いに建ち並んでいるケルキラ島が見えている。50分ほど経った頃、昨日訪れたブトリント遺跡が左手遥か遠くに見える。アルバニアとギリシャは時差1時間あるので、ここで1時間「進む」(11時30分→12時30分)。目の前には、ケルキラの街が見えてくる。海軍掃海艇、ハイドロフォイル、巨大なクルーズ客船が停泊している横を通り過ぎ、街の西外れの国際フェリー埠頭に到着。

Κέρκυρα, Kérkyra - Greece (ケルキラ、ギリシャ)

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ケルキラ港、国際フェリー岸壁

Kerkya port, international ferry quay

岸壁の横のカラフルな色使いの建物で入国審査を受けて、ギリシア国内へ。目の前には広大な駐車場。アルバニアからのフェリーに乗って来た10人ほどの乗客のうち、徒歩で市内に向かうのは私だけのようだ。岸壁の駐車場を横断し、港湾地区入口の料金所ゲートを出る。殺風景な街外れの景色が広がる中、旧市街を目指す。

新要塞のある丘を左手に見て、埃っぽいイオアニ・テオドキ通りを新市街中心のサン・ロコ広場まで歩く。長距離バスターミナルや市内バスターミナルがあるので、通り沿いにホテルくらいあると思っていたが、どうもそういう地区ではないようだ。再びフェリー埠頭の方まで戻る。高級そうなホテルがあったので、受付に行って近くに安いホテルがないか聞いてみる。旧港の方には安いのがあるというので、海沿いの道を旧港へ。旧港前のスピリアス広場に面したホテルを2軒発見。安い方のホテルに泊まることにする。陸側に面したツインルームで1泊45ユーロ(7380円)とかなり割高だが、リゾート地なので仕方ないか。ホテルの屋上に出ると、旧港や新要塞が目の前に広がっている絶好の場所だ。

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ケルキラ旧市街

Kerkyra old town, Filarmonikis str

ホテル探しに炎天下を1時間も歩いたので、疲労がどっと出た(笑)。ホテルのすぐ横のミトロポリス広場(Πλατεία Μητρόπολης)のカフェで休憩。コーラーが2.5ユーロ(410円)。屋外カフェの席の目の前には、16世紀に建てられたミトロポリス聖堂(Μητροπολιτικός ναός Υπεραγίας)。ミトロポリス広場から旧市街の中心に向かって緩やかな丘になっていて、観光客向けの店が並んだ狭い路地は坂や階段になっている。平日なのに観光客がたくさん歩いていて、アルバニアから国境を越えてくるだけで、これほど違うものなんだなと感じる。旧市街にはヴェネツィア共和国時代の建物もまだ残っているそうだが、どの建物も古そうに見えて素人には区別がつかない。中世以前の古い建物が少ない理由は、第二次大戦時のバルカン半島の戦いなどで破壊されたとのことだ。

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シューレンブルク像と旧要塞

statue of Count Schulenburg, and Old Fortress

丘の稜線を越えて、向こう側の海に向かってなだらかに下って行く路地を歩いて行くと、区画整理された場所に出てくる。こちらにも16世紀に建てられたスピリドン聖堂(Ιερός Ναός Αγίου Σπυρίδωνα)があり、路地の奥からでも鐘楼の塔が目立っている。

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スピリドン聖堂通り

St Spiridon str. and bell tower

旧市街を抜けると、こちらにも小さな港があり、旧要塞(Παλαιό Φρούριο)が目の前に見えている。入口横の木陰にはシューレンブルク伯爵像が立っている。今日は夕方になって閉まっているので、明日ゆっくりと見学しよう。ギリシア資本のハンバーガーチェーン店Goodysで夕食(4.65ユーロ,762円)。

Hotel
Hotel Astron, room 409
45 ユーロ/1泊(7380円)

October 3, 2007 (Wednesday)

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新要塞と旧港広場(スピリア広場)

Neo Frourio and Old Port square (Spilia square)

7時起床。日の出は7時34分なので、外はまだ真っ暗だ。6時30分に夜が明けるアルバニア(ヨーロッパ時間)とギリシャ(東欧)の間には1時間の時差があることを再認識させられた。バカ高い宿泊料金でも朝食は付かないので、昨日購入したパンを部屋で食べて朝食とする。

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スピリドン聖堂通りに寝そべる犬

Dog at St Spiridon str

9時、日差しが強くならないうちに旧市街の観光地を巡るために出かける。旧港のスピリア門より旧市街散策を開始。かつてあった旧市街を取り囲む城壁は殆ど取り壊され、4ヶ所あった城門のうち残っているのはここを含めて2ヶ所だそうだ。旧市街の緩やかな坂道を登ってゆくと、これから開店準備をするお店の従業員が通勤している姿をいたる所で見かける。その中でも、パン屋やカフェなどは朝食需要があるからか、早くから店を開けている。
狭い路地には通りすぎる人を気にも掛けない巨大な野良犬が寝そべっていて、地元の人は平気ですぐ横を通り過ぎている。吠えたり、噛み付いたりしないのだろうか…。

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旧要塞 刑務所の廃墟

former prison, Old Fortress

旧市街の丘を越えて約500mほど歩くと、旧市街東側のガリッサ湾に面したスピアナダ公園に出る。目の前には、ギリシャ本土に向かって突き出した半島の岩山に造られた旧要塞が鎮座している。この要塞は18世紀初頭のヴェネツィア共和国オスマン帝国戦争において、ヴェネチア共和国側が構築した要塞だ。そのヴェネツィア共和国側の指揮官だったシューレンブルク伯爵像の横を通り過ぎ、堀に架かる石橋を渡る。堀には海からの水路が切り込まれていて、現在はヨットの係留場となっている。ゲートハウスで入場料4ユーロ(656円)払う。目の前にはイオニア大学の建物があり、旧要塞の岩山にはどこから登るのだろうか…。標識が付いていないので、道が全くわからない。

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旧要塞、ゲオルギオス聖堂

St John temple, Old Fortress

時計塔の横の階段を登って行くと、岩山の上にある見晴らし台に出ることが出来た。頂上には灯台と十字架のような形の鉄塔が建っている。海峡側(ギリシャ本土側)にあるもうひとつの岩山は立入禁止になっていて、18世紀に建てられた刑務所の廃墟が残されている。

岩山を降りて麓にあるゲオルギオス聖堂へ。聖堂の周囲にはドイツ人団体観光客が居て、旧要塞で始めて客が来ているのを見かけた…。

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スピアナダ公園の小学生たち

student at Spianada park

旧要塞を出て、旧市街を南へ向かう。要塞と旧市街の間にあるスピアナダ公園には、沢山の小学生が来て遊んでいた。彼らに聞くと遠足という事らしい。10分ほどで住宅街の中にひっそりと建っている考古学博物館に到着。入場料は3ユーロ(492円)。ここの見所は街の南にある紀元前6世紀に建てられたアルテミス神殿から発掘された展示物。ゴルゴン神を彫り込んだ神殿のペディメントが丸ごと展示されている。旧要塞と違い、博物館には沢山の団体観光客が訪れていた。皆さん、山登りより平地の観光地を好むのだろうか。博物館の展示品は意外に少なく、東ローマ帝国末期から栄えていた海の要衝としては少し物足りない感じも受けた。そのかわり、敷地内に咲いている花は綺麗だった…。

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考古学博物館、ディオニソスのペディメント

Archeological Museum, Pediment with Dionysos

昼時になったので、旧市街で大きなギロピタ(ギロス)を買い(3ユーロ, 492円)、ホテルに持って帰って食べる。世界各国ではトルコ料理のドネルケバブと呼ばれているものが、ギリシャではギロピタと呼んでいる。どちらも歴史が古い言葉なので、どっちかに合わせろというのは国民感情的にもできんのでしょうね。昼食後、洗面所で着ている服を洗濯し、屋上に干す。まるで真夏を思わせるような強い日差なので、乾くのも結構早い。乾くまで昼寝して待つことにする。

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新要塞 (ネオ・フルリオ)

New Fortress (Neo Frourio)

夕方近くになり、こんどは旧市街の北西にある新要塞に向かう。ホテルからは、旧港前の公園を横切り、魚雷が門の前に展示されている海軍兵舎の横を通り過ぎて急な坂道を登った所に入場口がある。入場券は3ユーロ(492円)。旧要塞と違い、こちらの建造物は保存状態がよく、銃眼を備えた建物や通路のトンネルなどが完全な形で残っている。要塞の屋上に出ると褐色の屋根の建物が密集する旧市街が目の前に広がっており、その向こうに旧要塞の岩山がはっきりと見える。

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ケルキラ旧市街 (新要塞より撮影)

Kerkyra old town, view from New Fortress

夜、昨日と同じくGoodysで夕食(6.7ユーロ, 1098円)を食べた後、旧市街の夜景撮影。昨日は新港に寄港しているクルーズ客船の観光客が沢山旧市街を歩いていたが、今日はそのクルーズ船も出港してしまって歩いている人の数もめっきり減っている。街灯の光が反射するくらい表面がつるつるになった石畳の道には、人の数より野良犬の数のほうが多いんじゃないかと思うような場所もある。そのため、昨日と違い、昼過ぎに一旦閉店した店の殆どは夕方になっても開店していない。団体観光客相手だから、客数の予想がしやすいのだろう。

Hotel
Hotel Astron, room 409
45 ユーロ/1泊(7380円)

October 4, 2007 (Thursday)

今日も快晴。前日に買ったパンを部屋で食べ、7時30分にホテルをチェックアウト。目の前にある旧港に面したスピリアス広場からタクシーに乗る。運転手は女性で、街のすぐ横に隣接しているケルキラ空港までの3.5kmを、渋滞に巻き込まれることもなく走り抜ける。

Taxi
Kerkyra, Old Port(08:20頃発) → Kerkyra, Airport(08:30着)
Taxi 運賃 7 ユーロ(1148円)
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ケルキラ空港のエーゲ航空 Boeing 737

Aegean Airlines Boeing 737-3Y0

こぢんまりした空港ターミナルビルに入ると、出発案内の液晶テレビが天井から吊り下げられている。今日の航空便は国際線・国内線合わせてたったの8便で、テレビには明日の出発予定の便まで表示されている。インターネットで購入したエーゲ航空のアテネ行きの便は、諸税込で34ユーロ(5576円)と長距離バスより少し安い。バスの所要時間が11時間なのに比べ、飛行機はわずか1時間。ここでは値段でも時間でも飛行機が勝っている。

折り返してアテネ行きの便になる便は1時間ほど遅れて到着。その影響で私の乗る便も15分ほど遅れて出発。上空から見たギリシャ本土は、至る所から白っぽい煙や黒っぽい煙が立ち昇っている。テレビのニュースで報道していた山火事なのだろう。

Airline
Kerkyra(10:10発) → Athens(11:20着)
Aegian Air, A3403 諸税込運賃 34 ユーロ(5576円)
Bus
Athens Airport/Αερολιμένα(11:45発) → Athens, Kifissos Bus Terminal/Κηφισου(12:30着)
Bus X93 運賃 3.2 ユーロ(525円)

Αθήνα, Athens - Greece (アテネ、ギリシャ)

アテネ空港に降り立ち、ターミナルビルの前より市バスX93系統に乗車。バスはアテネ郊外を環状に迂回している国鉄・幹線道路沿いに走ってゆく。2004年のオリンピックの時に造られた真新しい国鉄路線(プロアスティアコス)にはほとんど列車の姿を見ることもなく、オリンピックが終われば無用の長物となった過剰な公共工事の典型例だ。アテネ市街地の北にあるオリンピックスタジアムが左手に見えたら、ピレウス方面へ向かう道路に入り、途中でリオシオン・バスターミナル停留所を経由して終着地のキフィスウ・バスターミナルに到着。アテネ市街地へ一旦入るルートより、ずっと短時間で快適だ。

以前(1999年)このバスターミナルに来た時はもっと薄暗かったような気がしたが、その後改修されたのかこざっぱりと明るい場所に変わっている。ナフプリオ行きのチケットを購入後、バスターミナル内のカフェテリアでのんびりと昼食を食べる(サンドイッチとミネラル水 2.3ユーロ, 377円)。

Bus
Athens/Αθήνα (13:00発) → Nafplio/Ναύπλιο(15:45着)
KTEL Bus 運賃 11.3 ユーロ(1853円)

Ναύπλιο, Nafplio - Greece (ナフプリオ、ギリシャ)

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コリントス運河と国鉄の鉄橋

Corinth Canal

アテネを出発したバスは満員の客を乗せて、一路西へ。コリントス地峡を通ってペロポネソス半島に入り、南へ向かう。快晴の空の下、どこまでも潅木の生えたなだらかな山岳地の景色が続く。私の隣の席に座っているアジア系の女性に話しかけてみると、中国系アメリカ人らしく、司法試験の合格発表までの間に旅行しているとのことだ。まもなく高速道路から外れて片側1車線の田舎道になる。ミケーネ遺跡の近くを通過し、ひたすら渋滞が続くアルゴスの町を過ぎたらじきに港町ナフプリオのバス停に到着。渋滞に巻き込まれながらも、予定時刻より少し早く到着。

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パラミディ城塞

Castle of Palamidi

バス停の目の前にはそびえ立つような岩山(頂上にパラミディ要塞がある)があり、岩山の麓に小ぢんまりした旧市街がある。人口3万3千人の街で東ローマ帝国以降に造られた要塞が数多く残っている町だ。

ガイドブックLonely Planetに掲載されている旧市街の安宿を数軒回って、一番安かった旧市街の裏山の中腹にあるゲストハウスに決める。ケルキラもこの町も宿泊料金が異様に高い。エーゲ海の島の観光地と違って、ホテルの数が少ないので超売り手市場になっているのだろう。

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フィレリノン広場

Filellinon square

旧市街を見晴らせる部屋に荷物を置き、日が沈むまでの間のんびりと旧市街と新市街をぶらぶらと観て歩く。標高200m程の岩山の頂上にへばりついて建っている17世紀に建てられたパラミディ要塞に行ってみたい気もしたが、この強烈な直射日光の中を岩山に登るのは厳しそうなので諦める(ツアー客のバスなら、岩山の裏手に道路があるので頂上まで簡単に登れるのだろう)。19世紀のギリシャ独立戦争の時に、当時ナフプリオを統治していたオスマン軍がギリシャ軍に対して18ヶ月もの間籠城したのも、この地形ならうなずける。岩山のすぐ下、KTELバス停の横の公園にはギリシャ初代大統領のカポディストリアス像が誇らしそうに岩山を横目で見ている。

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ナフプリオ旧市街

old town

旧市街にはシンタグマ広場というアテネのそれと同じ名前の広場があるが、かなり小ぢんまりとしている。シンタグマはギリシャ語で“憲法”という意味らしいが、首都の広場と同じくここにも議事堂(ただし、中世の)が広場に面して建てられている。この議事堂はギリシャ独立戦争で発足した暫定政府が、18世紀に建てられたモスクを転用して利用したものだそうだ。

まもなく日が暮れ、レストランや土産物屋が密集している旧市街からほとんど人影が消える。この時期、観光客はほとんど居ないのだ。コロコトロニス公園に面したオープンカフェでハンバーガーとサラダで夕食(5ユーロ, 820円)。

夜、安宿は丘の中腹にあるため水道の水圧が落ちるのか、全く水が出ない。シャワーが使えないばかりか、トイレの水すら流れない。旧市街と港を見下ろす景色は抜群に良いのだが、水が出ないのでは…。明日、新市街のホテルに移ろうと思う。

Hotel
Dimitris Bekas, room 2
40 ユーロ/1泊(6560円)

October 5, 2007 (Friday)

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旧市街とカトリック教会の屋根

old town and Catholic Church

6時30分起床。パラミディ要塞の岩山周辺の空が真っ赤に染まり太陽が昇ってくる。旧市街の建物が朝日に照らされ、色合いが刻々と変わってゆく。安宿のベランダから見る景色は、シャワーやトイレが使えない欠点を補って余りあるほど素晴らしい。昨晩スーパーで買ったサンドイッチや果物を部屋で食べ、8時過ぎに安宿をチェックアウト。鍵を本宅のポストに投函して行く。バス停を挟んで西側にある新市街にあるホテルに行きチェックイン。昨日の夕食後にホテルを物色して、予約を入れておいたのでスムーズな宿替えとなった。

荷物を部屋に置きバスターミナルに引き返す。9時発のアテネ行き長距離バスに乗車。昨日来たコースを逆向きに辿り、ミケーネ遺跡を目指す。

Bus
Nafplio/Ναύπλιο(09:00発) → Fihtia/Φίχτια(09:44着)
KTEL Bus 運賃 2 ユーロ(328円)

Μυκήνες, Mycenae - Greece (ミケーネ、ギリシャ)

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フィフテイァからミケーネに続く並木道

途中のアルゴスで満員となったバスは、ミケーネ遺跡の3.7km西にあるフィフテイァ村の停留所に停車。3人ほどの乗客が下車する。私以外は全て地元の人のようで、村の路地に消えていった。遥か東に見える丘陵地を目指して、オリーブ畑の中の一本道を歩く。村の外れで国鉄の線路を横切るが、線路が錆だらけで列車が運行されているようには思えない。1.5kmほど歩くとミケーネ村があり、疎らに住宅が建ち並んでいる。ここから先は道路沿いの並木も途絶え、直射日光が照りつける坂道となっている。運よくタクシーが坂道を下ってきた。

Taxi
Mycenae village/Μυκήνες(10:00頃発) → Ancient Mycenae/Αρχαίες Μυκήνες(10:03頃着)
Taxi 運賃 4 ユーロ(656円)
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獅子の門

Lion Gate

タクシーの車窓から見る遺跡へ続く坂道は、とてもじゃないが炎天下に登れるようなシロモノではないと思った。団体ツアー客のバスが5,6台停車しているミケーネ遺跡の駐車場でタクシーを降りる。入場料8ユーロ(1312円)払って入場。獅子の門をくぐると山の斜面に広がる墓地跡に出る。古代ギリシャ以前の紀元前17世紀〜12世紀頃この地に栄えたミケーネ文明は、ドイツ人考古学者シュリーマンがこの遺跡を発掘するまでは不確定なものだったそうだ。ミケーネ文明以前に栄えていたエーゲ文明と違って強固な城壁を作って外敵から防御していたのが特徴らしい。

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円形墓地A

Grave Circle A

山の斜面を登ってゆくと、ほとんど崩壊して岩石が散らばっているだけの王宮跡や職人の作業場と言われている場所があり、よほど想像力をたくましくしないと何がなんだかわからない。遺跡の最も高い所に、貯水池跡がある。このあたりは雨が少ないはずなので、井戸水か湧き水でも貯めていたのだろうか。ここからの眺めは素晴らしく、アテネ行きの長距離バスが走っていたオリーブ畑が広がる谷間の平原から、はるか南のアルゴリス湾まで見渡すことが出来る。遺跡の北側斜面にへばり付くように建てられた展示館には、原始的な壺や埴輪のような偶像が展示されている。灼熱の遺跡を見たあとで、冷房の効いた展示館に入ると生き返る気分だ…。

Bus
Ancient Mycenae/Αρχαίες Μυκήνες(11:00発) → Nafplio/Ναύπλιο(11:55着)
KTEL Bus 運賃 2.5 ユーロ(410円)
Bus
Nafplio/Ναύπλιο(12:00発) → Ancient Epidaurus/Αρχαία Επίδαυρος(12:45着)
KTEL Bus 運賃 2.5 ユーロ(410円)

Επίδαυρος, Epidaurus - Greece (エピダウロス、ギリシャ)

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ミケーネ発ナフプリオ行きバス

bus for Nafplio

11時発のバスは、ミケーネ遺跡駐車場が始発。乗客は私だけで、公共交通機関を使って観光する人は居ないようだ。バスはアルゴリス付近で渋滞に巻き込まれ、予定時間より少し遅れてナフプリオに到着。バス停付近には何台ものバスが停車していて、エピダウロス遺跡行きのバスを出発直前になって発見。切符売り場のある建物前ではなく、公園の横のバス溜りのような所から出発するので、始めて来た人にはわからないだろう。切符売り場でエピダウロス行きを待っていた欧米人夫婦は、ずっと切符売り場で待ち続けていたのか結局このバスには乗って来なかった。

何人か乗っていた乗客は途中のバス停で全て降りてしまい、終点のエピダウロス遺跡まで乗っていたのは私だけ。完全に寝ていたので、運転手に起こしてもらった…。

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古代劇場

Theatre

入場料6ユーロ(984円)払って遺跡の敷地に入ると、右側に巨大な古代劇場があり、左側に行くと遺跡本体のアスクレピオス神殿跡やローマ浴場跡などがある。団体観光客は古代劇場の方だけを観て帰るようで、遺跡本体には殆ど人が歩いていない。紀元前4世紀に彫刻家ポリュクレイトスの息子の設計で建てられた古代劇場は、ローマ時代の拡張の結果15,000人を収容できる大きさだそうだ。保存状態も良くて、観客席に崩れた部分が全く見られない。観光客がステージの真ん中(中央を示す石が埋め込まれている)に立ってなにか叫んでいる。反響音を試しているのだろうか…。

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オデウム(音楽堂)

Odeum (view from south east)

遺跡本体の方には改築工事真っ最中のアスクレピオス神殿跡があり、世界で3箇所あったアスクレピオス神殿のうちで最も大きなものだということだ。なお、他の2ヶ所とはトルコのベルガマとエーゲ海のコス島だそうだ。貴重な神殿跡を観光客にも分かりやすいように新しい材料を使って復元しているが、復元が終わった部分は安っぽいギリシャ風ショッピングセンターの内装のようになっている。

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修復用建材とトロス、アバトン

restore material, with Tholos and Abaton

他方、ローマ浴場跡やエジプトの神々を祀る神殿跡などは、崩壊するままに放置され雑草が生えている。予算の都合上、あらゆるところに手が回らないのだろうか。帰りのバスが来るまでかなり時間があるので、古代劇場の最後列の木陰の部分に座って時間を潰す。団体観光客が集団でやってきて、10分程度ざわついて、また引き上げてゆき静寂が戻ってくるのをぼんやりと眺める。

Bus
Ancient Epidaurus/Αρχαία Επίδαυρος(15:40発) → Nafplio/Ναύπλιο(16:15着)
KTEL Bus 運賃 2.5 ユーロ(410円)

Ναύπλιο, Nafplio - Greece (ナフプリオ、ギリシャ)

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ナフプリオ駅

Nafplio station

ナフプリオに戻り、新市街や港周辺を散歩する。こちらはどこにでもあるギリシャの田舎町と言った感じで、観光地的なものは無い。港の横には国鉄駅があり、昔使われていた蒸気機関車と客車がプラットホームに放置されている。駅には時刻表はおろか切符売り場などの小屋すら無いので、恐らくここに旅客列車がやって来ることはないのだろう。駅のプラットホームのすぐ横はアルゴリス湾に面した港となっているが、船は1隻も停泊していないし、埠頭にはコンテナの1つすら置かれていない。港の入口の岩礁に15世紀にヴェネツィア共和国が建てたブルジ砦がぽつんと見えているだけだ。

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ナフプリオ港とブルジ砦

Port and castle of Bourtzi

昨日と同じくコロコトロニス広場に面したオープンカフェでチキン・スブラギなどを食べ(7.4ユーロ, 1213円)、ホテルに戻る。今日泊まる新市街のホテルは、昨日泊まった所ほどの景色は見えないが、水は出るしエアコンも付いている。旅情か快適さか、2者択一でしか選択できないという事なのだろうか…。

Hotel
Nafplia Hotel, room 315
40 ユーロ/1泊(6560円)