スカンジナビア・北極圏旅日記 : オスロ→コペンハーゲン

July 4, 1996 (Thursday)

Oslo - Norway (オスロ - ノルウェー)

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風で帽子の飾りが目に入ってつらそう...
オスロ王宮 Oslo Palace

7時、オスロ中央駅に到着。2等寝台の同じ部屋には東京から来た銀行員のA氏が寝ていた。ノルウェー軍人は途中で降りたようだ。旧駅舎のマクドナルドで朝食を食べる。ふと横を見ると、日本人らしき女性がいたので話しかけてみる。英国留学中で友人と待ち合わせをしているらしい。

ひるごろまでは時間も空いているので、三人で市内観光に行く事とする。国立美術館に行く事とする。駅舎を出てカール・ヨハン通りを西に歩いて行くと、英国風パブがあったので立ち寄り、少し休憩。さらに真っ直ぐ歩いて行くと、通りが急に広くなり、通りの真ん中が公園となっている。真ん中に公園があるところといい、名古屋の道路のような広さだ。オスロ大学の角を曲がると国立美術館がある。駅からまじめに歩けば20分以内の距離を1時間以上かかって歩いてきた。

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カール・ヨハン通り オスロ最大の繁華街
Karl Johans Str. near Central Station

国立美術館は、ロンドンの大英博物館のように無料公開している度量の広い美術館だ。(それに比べ、コレクションの少ない日本の美術館の入場料の高さときたら...) ちょうど、学芸員による英語でのツアーが始まっていたのでくっついて行く。でも、日本人に受けがよろしいのはムンクの「叫び」だったりする。私も日本人の模範を見せるべく、写真を撮っておく。

美術館を出て、カール・ヨハン通りのオープン・レストランで昼食とする。サーモン180gとポテトのメニューで98NOKは少々高いような。ここで、英国留学中の女性と別れ、銀行員A氏と王宮見物に行く。バッキンガム宮殿が厳重な警備とすれば、ここの宮殿は窓ガラスに触れるくらい緩い警備となっている。衛兵より建物側に入れてしまうのでは衛兵の意味は何なのだろう。それとも薄そうな窓ガラスは実は防弾ガラスだったりして...。

昨日ベルゲンからYHを予約したとき、17時にチェックインしないと予約が取り消されると聞いていたので、A氏と別れ駅に急ぐ。YHに聞いた話しでは、オスロ中央駅から列車に乗りスタベック(Stabekk)という駅で降りるそうだ。近郊列車のホームに行く。快速列車と各駅停車の2種類が出ているようだ。列車から降りてきた車掌に聞くと、アスケー(Asker)行きの各駅停車に乗ればよいようだ。各駅停車は毎時24分と54分に出ている。14時24分、乗車。列車はすぐにトンネルに入り、国立劇場地下駅に停車し、スコイエン(Skoyen)駅で地上に出る。10分ほどでスタベック駅に到着。

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YHのために学校を開放 スタベック Stabekk YH

駅は無人駅で、どちらの方向にYHがあるか分からない。駅前でバックパックを背負ったドイツ人女性2人がいた。同じくYHを探しているので、一緒に行く事とする。そのあたりに歩いている人に手当たり次第にYHを知らないか聞いてみると、何人か目におぼろげに知っている人に出会う。南の方に向かう。その先では大きな道路を越えると教えられ、大きな道路まで15分以上歩く。「歩き方」に出ている住所を頼りに、いろんな人に聞きながら、ミッチェレッツ (Michelets)通りを探し当てる。150番地あたりに出る。YHは55番地なので、緑多い郊外住宅の中を20分くらい歩いただろうか、やっとのことでYHの旗を目にした時はほっとした。駅より歩いて1時間弱だった。

チェックインする。YHの建物は、学校のようだ。ドミトリーの部屋は教室だ。学校の教室に寝るのは初めての体験だ。フロントで地図をもらうと、駅からだいぶ遠回りしてきたようだ。最初の角で曲がる方向が逆だったようだ。

夕食は再びオスロ市内まで戻り、チキン料理を食べ、偶然A氏と再開しコペンハーゲンに向かうA氏を駅で見送る。スタベック駅よりYHまでは近道でゆけば20分以内の距離だった。

July 5, 1996 (Friday)

Oslo - Norway (オスロ - ノルウェー)

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ドーム・キルケ前のトラム 乗り切れないほどの乗客が並んでいた
Tram near Dom Kirke (church)

8時、起床。朝食を食べチェックアウト。小雨が降っている。スタベック駅より列車に乗りオスロ中央駅へ。

昨日、iでランドリーの場所(Ullevalsveien 15)を教えてもらったので、洗濯に出かける。中央駅横のショッピングセンター(オスロ・シティー)の前より37系統のバスに乗り10分。市民病院の手前でバスを降り、墓地沿いの道を北上したところにランドリーがあった。洗濯1式に約1時間。ゆっくりと読書をしてすごす。(墓地を見学したりもした) その後、再び中央駅まで戻り、コインロッカーに荷物を預け身軽になる。

今日はフラム号博物館を見に行こうと思う。トラムで市役所前まで行き、市営の渡し舟に乗る。渡し舟も1日乗車券で乗ることができる。海上の渡し舟からは、オスロオリンピックの会場だったスキーのジャンプ台も見れる。ストックホルムのヴァーサ号博物館と違い、明るい室内に北極探検船が保存されている。船内は案外狭く、寝苦しそうなキャビンだったり、狭い食堂だったりする。今は掃除されて、照明がついているが、当時は汚く、ランプ照明で薄暗かったのだろう。そう考えると、気の滅入るような狭さの船内だ。

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つかの間の晴れ間 : オスロ国立劇場 National Theatre

再び船に乗り市役所前に戻る。iがあったので入ってみる。国王の写真の絵葉書がたくさんあるのは日本とは違うところだ。市役所に行き、トイレを拝借する。(とてもきれいなトイレだ。)
船着き場を破産で向こう側にあるアーケシュフース城を目指して歩く。行ってみると、城はなぜか休みのようだった。城の塀の先端が低くなっていたので、登って歩いて行くと城の中に出れてしまったので(無断で)見学して行く。

その後、歩いて中央駅まで戻る。途中、急角度で曲がってくるトラムに曳かれそうになる。オスロ・シティーの西側に安食堂がたくさんあるのを見つけ、カバブ屋に入り昼食を食べる。

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あやしい彫刻 フログネル公園 sculpture at Frogner Park

昨日YHまで一緒に行ったドイツ人に、怪しい石造のある公園があるから見に行った方がいいと教わっていたので行ってみる事とする。iで聞くとフログネル公園というところらしい。トラムに乗り、市役所前で乗り換え30分で公園の前に到着。鉄格子の門を通って大通りに出る。ずっと向こうに石でできたタワーが見える。あれが怪しい石造なのだろうか。近づいてみる。確かに怪しい。脳みそのようにぐにゃぐにゃとした表面だ。タワーの周りにも小型の脳みそのようなものがばらまかれている。間近まで行くと、脳みそのように見えていたのは、裸の多数の人間が絡まっている姿だった。赤ちゃん、子ども、おとな、年寄りに分類されたような「ひとだま」が彫刻としておかれている。中央のタワーは赤ちゃんからできている。向こう側には、骸骨が絡みついたものまである。なぞの芸術作品だ。人の一生をあらわしているのか、輪廻をあらわしているのか分からない。

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オスロ駅にて、NSB機関車の運転席 at Oslo Central Station

園をぐるっと一周まわって、北側に抜ける。しばらく歩くと地下鉄の駅を発見し、地下鉄に乗り国立劇場前まで戻る。国会議事堂の前を通りかかった時、公園の真中に怪しい金色の銅像を発見。じっとしているが、お金を投げるとゆっくりお辞儀をする。金色の着ぐるみを着た人間だ。まったく、オスロには怪しい銅像が多すぎるようだ。

22時43分、コペンハーゲン行き383列車に乗る。今日もクシェットに寝る事となる。

July 6, 1996 (Saturday)

Copenhagen/København - Denmark (コペンハーゲン - デンマーク)

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ストロイエの観光客 Stroget (tourist spot)

5時30分頃、列車が海峡連絡船に積み込まれる。寝ていてほとんど何も覚えていない。7時42分、コペンハーゲン中央駅到着。駅構内に出て、マクドナルドで朝食を食べる。

街に出る。駅前のiはまだやっていない。街の中心の方向に歩いて行くと、市役所があった。オスロの時と同じくトイレを拝借する。公衆と入れは汚かったり、手洗いがなかったり、有料だったりするが、役所のトイレは無料で清潔だ。市役所でコペンハーゲンの観光案内と、デンマーク全土の観光案内をもらっていざ市内へ。

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人魚像 (たったこれだけで、観光客が集まる) mermaid

周りを見まわすと、地元の人より観光客の方が多いようだ。町の中心部は、完全に観光地となっている。コペンハーゲンといえば、人魚像を観ないといけない。市役所よりひたすら北西に歩き20分。ガイドマップでニュー・ハウンと書かれている場所に出る。特に目立つものはない。北上すると王宮に出る。衛兵の交代式があるか通行人に聞くと、12時にあるらしい。再び戻ってくることにして、さらに北上。公園の入り口に教会があり、噴水の中から馬車が飛び出てくる像(ゲフィオンの泉)がある。公園の中をさらに北上すると、海に出る。その向こうに人がたくさん集まっているところがあり、人魚像があった。何とバスの駐車場まで横にある人魚像は、ちっとも大した事はない。岩場に置かれた小さな銅像だ。観光客が入れ替わり立ち代わり写真を撮っている。一本裏の道を、王宮の方に引き返す。

王宮近くのフレデリックス教会では結婚式が行われていて、しばらく見て行く事にする。まもなく12時、王宮に戻る。人垣ができている。王宮の窓の下によじ登って観察する。南から6人くらいの黒装束の衛兵がやってきて、北側の建物にこもっていた6人ほどの衛兵と交代する規模の小さい交代式だ。私が見た衛兵の交代式では(英国>スウェーデン>ここ)の規模の大きさで、最も小さい規模だ。

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王宮の衛兵 Royal guards

オステルポート(Osterport)駅より国鉄に乗り中央駅に戻る。iに行き、YHまでの行き方を教わる。「歩き方」に書かれているバスは休日運休だ。中央駅より250系統に乗り、SUNDBYVESTER PLADSで37系統に乗り換えるのが簡単だそうだが、鉄道で行く事とする。シードハムン(Sydhavn)で下車し、バスに乗る。YHに行きたいと伝えると途中の住宅街で降ろされ、次のバスに乗り換える。バスは高速道路らしき所を通り、10分弱でYH前の停留所に到着。YHは何もない草原の中に、巨大な建物を何棟も擁している。巨大YHだ。隣の建物は数百メートル南にあるベラ・センター(コンベンション・センター)だ。入り口を探し当て、受け付けへ。昨日オスロより予約した時の合い言葉を聞かれる。28−980が私の合い言葉だった。電子ロックのキーをもらい、何棟も向こうの部屋へ。

夕食はYHで食べる。メニューはナルヴィクのYH以来のカレーだった。夕方20時頃、YHの中庭でキャンプファイヤーが始まる。ドイツからの学生の団体だ。にぎやかだ。今夜泊まる部屋にはアイスランド、イタリア、アイスランド、スイスからと一人旅行客が集まった感じだ。さすがにスイス人はどこの言葉も話せるようで、イタリア人地理学者と流暢なイタリア語で話していた。

July 7, 1996 (Sunday)

Train : Copenhagen -> Odense (コペンハーゲン → オーデンセ)

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ニューボルグの港 Nyborg Port

7時起床、ノルウェー人の若者も珍しく早起きしている。聞いてみると、オーデンセに行くそうだ。私と同じ方向だ。それなら一緒に行こうという事となる。朝食をともに食べ、YHをチェックアウトする。バスに乗りシェレー(Sjaelor)駅へ行き、国鉄に乗り換え中央駅へ。

予約センターで8時52分発のインター・シティーの予約を取ろうとするが満席。仕方ないので8時33分出発の近郊列車に乗り込む。列車は満員だ。S列車が走っている市内は快速運転で、郊外になると各駅に停車する。9時50分頃、新しく造っている海峡線(工事中)が北に分かれてゆき、まもなくコルセー(Korsor)駅に到着。

大ベルト海峡橋ができると廃止されるであろう航送船(連絡船)に乗り込む。航送船のボーディングブリッジから、インター・シティーの車両が連絡船に乗り込んでくるのが見える。快速列車と急行列車の扱いの違いは歴然としている。

10 時、出港。右手に建設中の吊り橋をみながら、船は西を目指す。国際航路でないので、船内に免税店はない。コルセー港の南側は軍港となっているようで、ぱらぱらと小さな灰色の船体が見える。11時、ニューボルグ(Nyborg)港に到着。再び近郊列車(気動車)3129列車に乗り込み、菜の花が咲く田園地帯を走り、11時50分、真新しいオーデンセ(Odense)駅に到着。ニューボルグからオーデンセまでは電化工事中のようで、海峡線が出来ると電車が走るようになるのだろう。

Odense - Denmark (オーデンセ - デンマーク)

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アンデルセン博物館の近くで near Andersen Museum

ここでノルウェーの若者と分かれる。彼はこの近くの福祉関係の大学に研究に来たそうで、バスでさらに郊外に行くという。駅のデリでサンドウィッチを買い、売店でジュースを買って昼食とする。

オーデンセにはアンデルセンの博物館や、童話に出てくるような町並みがあるそうだ。とりあえず、15分ほど歩いてiまで行く。地図をもらい、アンデルセン博物館に向かう。博物館に近くの町並みは、小さくてかわいらしい家が多い。まるで童話の世界のようなメルヘンあふれる世界だ。まさか人は住んでないだろうと思ったが、実際に居住している建物もあったのには驚いた。日本でいえば、太秦映画村に住むようなものだ。

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オーデンセ駅に停車する新型列車 Odense Station

アンデルセン博物館に入る。最初は出版するつもりでなく、知り合いの子どものために書いていた絵本が大ヒットしたようだ。でも、展示内容から推測すると、アンデルセンの行動は、今ならロリコンといわれてもおかしくない。と、個人的に勝手に判断する。

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小高い丘もないデンマークの田園 between Korsor and Kobenhavn

アンデルセン公園などを散策し、ぶらぶら歩いて駅に戻る。新駅の横には旧駅舎が残っている。貨物駅として残してあるようだ。14時56分、3144列車でニューボルグへ。15時30分、航送船に乗り換える。16時35分コルセーに到着。16時50分の近郊列車に乗る。車窓には黄緑色の牧草地が続き、発電用の風車が時折見える。デンマークはほとんど起伏のない土地なので、はるか向こうまで見渡すことが出来る。18時10分、コペンハーゲン中央駅に戻ってくる。

Train : Copenhagen -> Amsterdam (コペンハーゲン → アムステルダム)

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コペンハーゲン中央駅に停車するアムステルダム行き列車
Nord Express at Kovenhavn Station

バーガーキングで夕食を食べ、値段の高い事に驚く。今夜乗る列車まで時間を潰すため、ローゼンボー公園行く。ローゼンボー宮殿が夕日に輝き美しい。宮殿と公園の間は掘で隔てられており、堀の向こうの岸を犬を連れた衛兵が警備している。21時頃、夕日が沈みかける。こちらの人々は夜更かし型のようで、たくさんの人が公園でくつろいでいる。22時ごろ中央駅に戻り、22時5分、アムステルダム行きのNord-West Express 1236列車に乗る。私の乗った2等クシェットには、福建省からの親子3人とストックホルムの企業人が乗っている。

July 8, 1996 (Monday)

Train : Copenhagen -> Amsterdam (コペンハーゲン → アムステルダム)

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ドイツへ向かう航送船に収まった列車

0時30分、ロドビー港より航送船に列車ごと乗り込む。1時30分、ドイツのプットガルデン港に到着。船から降りる列車の窓より外が真っ暗なのを見る。これで白夜の国ともお別れだ。夜が暗い事にすこし感激する。ドイツ国境審査の官吏が乗り込んでくる。同室の中国人はドイツ入国にビザが必要な上、出国の列車のチケットまでチェックされ、入国目的まで事細かに聞かれている。日本人の私とスウェーデン人はパスポートの表紙を見せただけでウエルカムなのとは大違いだ。列車は西に向けて走り出す。