アメリカ古今首都旅日記 : ワシントンDC (Day 6〜7)
June 12, 2017 (Monday)
6時起床。朝食が始まる30分ほど前に食堂へ行き、コーヒーを飲みながらタブレットPCで日記を書く。食堂に降りてきていた他の宿泊客から、履いているソロモンのトレイルランニング・シューズいいねと言われる。旅行で歩きまわる時にも、トレラン・シューズは最適だと思う。
朝食を食べながら、明日の朝に乗るデルタ航空の帰国便をチェックイン。Androidアプリはまたしてもパスポート情報エラーだったので、webブラウザでチェックインする。そうした後に、アプリを開くと搭乗券のバーコードが表示されるようになる。
明日の朝食用にトースト4枚焼き、スーパーのプラスチック袋に包み冷蔵庫に保存しておく。8時過ぎユースホステルを出発し、11thストリートをまっすぐ南下し、トランプ・インターナショナル・ホテル前へ。旧中央郵便局だったロビーを少しだけ見物し、ペンシルベニア大通りの遥か東方向に見える国会議事堂を目指して歩く。
FBI本部フーヴァー・ビル、海軍記念碑、国立公文書館前を通り過ぎる。昨日とは違い歩道には多くの通勤客が歩いているし、道路にも車がひっきりなしに走っている。車は渋滞するくらい多くはないので、ほとんどの人は地下鉄かバスで通勤しているのだろう。
国会議事堂の北側を回り込んで、東側正面の地下にあるビジターセンター入口に到着。学生の団体が次々と中に入っていく後ろに続きセキュリティ・チェックを受け、地下2階の奴隷解放ホールにある見学予約窓口へ。webページではすべて売り切れだった見学チケットが、当日券なら潤沢にあるようで、9時10分のチケットをゲットする。すでに9時10分を過ぎているが… 配っている係員によると、券面表示時間の10分後がタイムリミットとのこと。
50人ほどがまとまってツアー形式で議事堂ロビーなどの公開部分を回る。議場や委員会室などは見せてくれない。最初に合衆国独立からの議会史を解説する15分くらいのビデオを見る。それから1階のクリプトを見学。ここには議事堂中央のクーポラ真下にある巨大空間のロトンダを支える柱が立ち並んでいる。壁面には独立13州を表す13体の彫像。次に一つ上の階のロトンダを見学。ここは国賓を迎える儀式を行ったり、大統領経験者や英雄の国葬が行われる場所だそうだ。壁には米国独立を描いた4枚の絵画と、コロンブスの新大陸発見やミシシッピ川探検など新大陸制服に関する4枚の象徴的な絵画が掲げられ、絵画の間には歴代大統領の彫像が立っている。見学の最後は、ロトンダの南隣の旧下院議場を改装して儲けられている彫像ホール。各州ごとの歴史上の著名人2名の彫像が集められ、その殆どがここで展示されている。彫像コレクションにはハワイ州からハワイ国王カメハメハ1世とか、オハイオ州から発明家エジソン、アラバマ州から盲目の社会福祉家ヘレン・ケラーなど思いもよらない著名人の彫像が寄贈されていたりする。
ツアー形式の見学が終わり、土産物屋で合衆国憲法の復刻版を購入。1枚2.9$(319円)。
国会議事堂の東隣にある議会図書館までは地下通路を使って徒歩移動。主要な省庁、軍施設などは関係者しか行き来できない専用の地下通路で結ばれているという都市伝説がある。このトンネルもそれらのうちの一つなのだろうか。
地下通路から議会図書館のトーマス・ジェファーソン館に入るところには、再びセキュリティ・ゲートがある。国会議事堂でさんざんチェックを受けたのに、またですか…。そして、階段を登るとここでの最大の見所の大ホールに出る。イタリア・ルネサンス様式の吹き抜けホールは美しいが、見どころは、なんといっても世界に48冊しか現存しない、グーテンベルクが世界で初めて印刷した聖書だ。大ホールのほかは、ロの字型の建物の西側(連邦議会側)の一部分だけが公開されている。見学コースに沿って、第二次大戦中の「戦意を高めるポスター」展示の部屋を抜けると、円形に書棚を並べたジェファーソン・ライブラリーのところにやってくる。ジェファーソンが引退後に、その蔵書約6000冊を合衆国が23,950ドルで買い取ったものだそうだ。寄贈じゃないのか… 案外けち臭い大統領だ。
ちょうど昼時なので、議会図書館前からサーキュレーター バスに乗りユニオン駅へ。
1st St & Maryland Ave(11:35発)→ Union Station(11:40着)circulator bus, 運賃 1$(110円)
ワシントンD.C.の滞在期間、毎回のように食事に通ったユニオン駅地下のフードコートで昼食。中華料理の店で焼き飯と鶏唐揚げの「オレンジチキン定食」(6.55$, 720円)を食べる。そろそろこの味も飽きてきたな…。
食後、こんどはアメリカ歴史博物館に出かける。ユニオン駅の前よりサーキュレーター・バスに乗り、スミソニアンの博物館群が建ち並ぶモールの西端付近、自然史博物館前を通り過ぎてワシントン記念塔の少し手前で下車。
Union Station(12:09発)→ Madison Drive & 12th Street(12:19着)circulator bus, 運賃 乗継扱いで無料
アメリカ歴史博物館の入口は、学生団体ですごい行列だ。ここ数日で学んだ知識では、「スミソニアンの博物館はモール側と反対側の2箇所に入口があり、どちらかは空いている」ということだ。建物の反対側の入り口にまわると、案の定行列なしでセキュリティチェックを受けられた。
入口を入ってすぐのところには、発電機、モーター、電力計、電球の開発から進化を、また蒸気機関や内燃機関の進化を実物展示している。
蒸気機関の発明は産業革命を起こしたイギリスで行われたので、この博物館では機関車の進化を順に取り上げるのではなく、西部劇に出てくるような大陸横断鉄道のカッコいい蒸気機関車「John Bull 号」がいきなり展示されている。そして、都会で導入された市電や地下鉄のレトロ感たっぷりの車両が展示されたところで、鉄道の歴史展示は終了。この国の鉄道技術が20世紀初めくらいで停滞してしまったのが、なんとなく分かる気がする。
エネルギー分野の展示では、いきなり電球の展示。電球はアメリカ人のエジソンが実用化したので、流石に展示にも力が入っている。ガス灯、白熱電球から始まって、蛍光灯、タングステン・ハロゲン灯、メタルハライド灯などの説明が事細かにされている。そして発電所の発電機からはじまり、送電線、変圧器、電力計など一連の電力機器類もアメリカ人が開発したものが多いようで、事細かに実物や模型を展示している。
蒸気発電機の展示に続いて、製材所などの工場などで使われていた蒸気エンジンや、ガスエンジンなども実物や模型が展示されている。蒸気タービンで発電機を駆動するのか、工場の動力に使うのかの違いなので、展示コーナーが同じなのはある意味当然なのだろう。これらの技術遺産の前で、父親が子供にエンジンの仕組みを解説している姿を見ると、その知識の奥深さに感心せざるを得ない。
鉄道より力が入っていたのは、自動車の展示だ。大量生産された大衆車フォード・モデルTにはじまり、歴代の売れ筋の乗用車が当時の街の風景を再現したジオラマとともに展示されている。日本車の輸入を説明するのにホンダのシビックを実物展示したりと、現代に近い部分で特に力の入った展示だ。
戦争の歴史では、イギリスと戦った独立戦争、南北戦争(こちらでは市民戦争と表記)、第一次大戦でのドイツとの戦争、第二次大戦でドイツと日本の二正面で戦争をしたこと、朝鮮、ベトナム戦争。第一次大戦と朝鮮・ベトナムはあまり力の入らない展示だった。展示の主眼は、戦争に駆りだされた兵士の姿だ。4日前に訪れたワシントン海軍工廠の海軍博物館の展示内容が、兵器や戦術に主眼に置いていたのと対照的だ。
一般市民、農民の住宅を展示したところもあった。100年以上前の住宅の居間やキッチンに置かれている日用品や調理用品は、現代のものとあまり変わらない。もちろん、電化製品は大いに違うが、机や椅子、家具、食器などはじゅうぶん今でも通用するようなものばかりだ。80年前、こんな物資にあふれた裕福な国に対して太平洋戦争を仕掛けた「貧しかった日本」は、完全に状況判断を誤っていたとしか思えない。
第二次大戦中の日系人強制収容の歴史を特別に展示するコーナーまで作られている。さすが、自由主義のリーダー国だけはある。ついでに原爆被害の展示も… というのはまだまだ無理でしょうね。
歴史博物館を出て東の連邦議事堂方向へ歩く。3日前に見学した航空宇宙博物館に、もう一度入場し、館内のマクドナルドでチョコレート・サンデー(Iced Mocha, 4.1$)を食べる。日本のマックなら200円位のはずだが、アメリカでの価格は倍以上… と高価だ。
航空宇宙博物館内で見忘れたものを少しだけ見た後、さらに東にあるアメリカ・インディアン博物館へ。閉館時間の1時間前に到着したが、展示室の一部は既に店じまいの準備中だ。
まず、最上階にある「森の中にあるインディアンの集会所を模した雰囲気の小劇場」で、インディアン文化の特徴を現したとされるイメージビデオを見る。森林浴を楽しむような、のんびりとした心が洗われる映像だ。このビデオを見終わったのが17時、閉館までほとんど時間がない…
インディアンの部族が米国政府と次々と土地交換条約を結び、大陸の西部に追いやられていった経過を、インディアン側と当時の米国政府側の「それぞれの立場」で説明している。白人が、自分たちに都合よく作った法律に基づいて、何も知らないインディアンを陥れた経緯がよく分かる。
閉館ぎりぎりまで展示を見て回り、歩いてユニオン駅へ。連邦議事堂前から10分ほどで到着。バスに乗るまでもない距離だ。
昼食の時と同じく、地下のフードコートに行き夕食。中華料理の店で焼き飯と鶏唐揚げオレンジ・チキンの定食(6.81$, 749円)を食べる。フードコートに中華料理屋は2店舗あるので、昼と違う方で食べたが味はほとんど同じ…。アメリカ最後の食事も、結局フードコートのお手軽ファストフードだった。
ユニオン駅の地下にある地下鉄駅で、交通ICカード(SmarTrip)の残額を確認すると6$ほどだった。明日の空港までの地下鉄運賃(2.75$)を残す必要があるので、ユースホステルには1ドルで乗車できるバスで戻ることとする。
Union Station(18:14発)→ K Street & 13th Street(18:31着)circulator bus, 運賃 1$(110円)
ユースホステルを通り過ぎたバス停で下車。明日は帰国日で早朝に出発しないといけないため、下着類の洗濯などはせずに早く寝た。
HI - Washington DCRoom 507, 6-bed Dorm 48.67$/1泊(5,353円)
June 13, 2017 (Tuesday)
4時過ぎ起床。洗顔を済ませ、荷物をすべてザックに詰めてチェックアウト体制で2階の食堂へ降りる。昨日の朝食のときに冷蔵庫に取り分けておいた「ピーナツバターを塗ったパン」をトーストし、熱い紅茶を入れて朝食。こんな早い時間に、ダイニングルームに先客が2人いたのには驚いた。寝れなくて食堂で時間つぶしてるのだろうか。
5時少し前、ユースホステルをチェックアウトし、地下鉄のMount Vernon Square駅へ行く。外はまだ暗いが、東の空は日の出前の藍色に変わっている。駅に着くと、まだ入口階段のシャッターが閉まっている。5:05ごろ、駅の中から駅員がやってきてシャッターを開放。今日の駅利用者一番乗りを果たすことができた…。5時20分発のハンティントン行きyellow線に乗る。
Mount Vernon Square(05:20発)→ Ronald Reagan Washington National Airport(05:34着)Metro Yellow Line 運賃 2.75$(303円)
車内は座席がほぼ埋まるくらいの程よい混雑度。チャイナタウン駅と国立公文書館駅で多くの乗客が入れ替わるが、席が埋まっている状況は変わりなく、大きく客が減るのがペンタゴン駅と空港駅だった。ペンタゴン駅は国防総省専用の駅だと思うが、こんな朝早い時間から通勤客が降りてゆく。
ロナルド・レーガン空港駅はターミナルビルの真横で、駅改札口から私が乗るデルタ航空の搭乗口まで500mも歩かない距離だ。セキュリティチェックはほとんど行列もなく、駅改札を出て搭乗口前に到着するまで10分くらいしか掛からなかった。早朝だからかもしれないが、小ぢんまりして便利な空港だ。
ワシントン ロナルド・レーガン空港(07:45発)→ デトロイト空港(09:05着)デルタ航空 DL399便(A319), 往復運賃・諸税込 100,000マイル+5,770円
デトロイト行きの飛行機は、水蒸気で若干白く霞が掛かったアパラチア山脈の上空を、北西のクリーブランド方向目指してほぼ直線コースで飛んでいく。山脈といっても、幾筋かの緑の稜線が畑の間を貫いているだけで、森林限界を超えた標高の高い岩塊や目立った山頂があるわけでもない。かつて、イギリスやフランスから北米植民地に渡って来た入植者たちは、アパラチア山脈を越えて西に行くことは、文明の世界から離れることと認識していたそうだ。飛行機から見た感じでは、黄色く実った畑の色と、緑の森になっている山地がバーコードのように南北に筋模様を作っている。かつての植民者が感じたように、やはり山脈の東は住宅地や工場の入り乱れる市街地が多く、山脈の西は延々と続く畑だ。
エリー湖の上空を通りデトロイト空港に着陸する寸前、郊外の工場地帯の真上を通る。フォード リバー・ルージュ自動車工場の錆びた建物群が見える。ここではかつて、自動車組み立てだけではなく、製鉄所やガラス工場も含めて素材から全て作っていた「垂直統合」の巨大工場。20世紀初頭には、モデルTが大量生産され、鉄鉱石など原材料が工場に運び込まれてから自動車の完成品となるまで、約2日しか掛からなかったとされる。
Detroit MI, USA (デトロイト)
デトロイトで4時間弱の乗り継ぎ時間がある。空港付近には2時間程度で戻ってこられる観光地などはなく、空港内で時間をつぶす以外にない。チキン バーガー屋で朝食用のチキン・マフィン(3.70$, 407円)を食べる。
デトロイト空港(13:00発)→ 成田空港(翌日 14:30着)デルタ航空 DL275便(B747), 往復運賃・諸税込 100,000マイル+5,770円
2回めの機内食は牛丼とフルーツ