南イタリア クリスマス旅日記 : アグリジェント→シラクサ

December 22,2003 (Monday)

Agrigento - ITALY (アグリジェント、イタリア)

6 時30分起床。外はどんよりと曇っている。深夜に一旦切れた暖房が再び入って部屋が暖かくなってくる。テレビの天気予報では軍服を着た予報官が自信たっぷりに「今日は雨」との予報。見かけと違って案外外れるからなぁ...。7時30分ごろ、中央駅へ。コンコースのバールでアランチーノ 1.300EUR、カフェ・アメリカーノ 1.30EUR で朝食。7時45分にホテルをチェックアウトして Piazzale Fratelli Rosselli の長距離バス停へ。昨日は閉まっていたバス会社 (SAIS http://www.saistrasporti.it/) のオフィスが開いていたのでチケット 10EUR を買う。カターニャ行きのバスは定刻より5分遅れた8時5分出発。2階建てバスで1階は50%程度、2階は20%程度の乗車率。

Autobus: Agrigento -> Catania (バス)

1222-01.jpg
SAIS社のアグリジェント発カターニャ行き長距離バス

曇り空の下、片側1車線の Ss640 号線を北東へ向かう。路肩の標識にはカルタニセッタまで行く道だと表示されている。大型トラックが安全運転(スロースピード)で走っている。なかなか追越が出来ないのでトラックの後ろには何十台もの車が数珠つなぎで走っている。道路と平行してイタリア鉄道の線路が時折見える。やや大きめの町、 Canicatti' にほぼ定刻どおり到着。沢山の人が乗ってきて満員となる。雨が降ってくる。次第に雨が強くなり、吹き降りとなる。その次の Caltanissetta にも定刻どおり到着。少し休憩時間が入り、隣に座っていた(タオルミーナまで行くという)お姉さんがバールに朝食を買いに降りていった。 Caltanissetta を出てしばらくすると 片側2車線の高速道路 A19 に入る。イタリアの高速道路は制限速度が無いようだが、バスは100km/h程度の安全運転をしている。1999年に民営化され、株式がベネトンなどに売却されたというアウトストラーデ社。道路の維持の金をケチるためかどうかは分からないが、破損して車線閉鎖されたところがかなり目立つ。それでも渋滞は起こっていないので、案外こんなものなのかもしれない。雨はいつの間にかあがっており、遥か北にエトナ山 (Monte Etna) が雲に包まれているのが見える。空港にもほぼ定刻どおり到着。半分近くの客が降りる。空港を出てからが予想外、大渋滞。延々と終着バス停まで渋滞に巻き込まれる。隣に座っていたお姉さんが、列車の時刻に間に合わないらしく途中で降りていった。(中央駅まで歩いた方が早いということか...)

Bus
停留所 出発 到着 距離
  Agrigento 8:00 0km
  Canicatti' 8:40 (34km)
  Caltanissetta 9:15 (62km)
  Aeroporto Catania 10:40 (161km)
  Catania 10:50 (167km)

Catania - ITALY (カターニャ、イタリア)

11時20分、30分近く遅れてやっとカターニャ中央駅前のバスターミナルに到着。雨上がりで道路は川の様に水が流れている。カターニャ中央駅 (Catania Centrale) へ入る。シラクーサ行き列車の時刻を確認する。12時35分、12時57分と14時20分に列車があるようだ。12時30分ごろ駅に戻ってくればよさそうだ。切符売り場でシラクーサまでの切符 4.65EUR を買い、トイレ(無料)へ。トイレの前にはストライキについての貼り紙がある。こんな駅の隅っこのトイレの横に貼らなくても、駅コンコースに貼ってほしい情報だ。荷物預け所は見つからなかったので、バックパック(12kg程度?)を背負ったまま市内観光へ。

1222-02.jpg
大聖堂 と 象の噴水
Cathedral / Duomo and Fontana dell'Elefante

ロンプラには「崩壊しかけの建築物、無秩序な交通と犯罪天国が旅行客を遠ざけている街・カターニャ。さらに、目を覆いたくなるような不愉快な場所にあるバスターミナルと鉄道駅がその効果を倍増させる」と書かれている。ココまで言わせるとはすごい街のようである。日本の大阪でさえ「関西空港から京都への通過地点にある巨大都市。特急電車が通過する大阪駅近辺から眺められるアーチ状のビルを見れば十分」としか書かれていないのに比べ明らかに不公平な扱いかもしれない。とにかく中心部の大聖堂広場を目指して歩いていく。大渋滞で身動きできない車の間を縫って駅前広場を横切り、線路に沿って Via VI Aprile を南西(シラクーサ方面)へ。道路沿いの街路樹にはサーカスの宣伝がはためいている。ヴィットリオ・エマニュエレ2世通り (Via Vittorio Emanuele II) を西へ向かう。曇っている天候のせいか、建物が排気ガスで汚れているのかは判別しづらいが、確かにメインストリートの建物はすさんでいる。中央駅から 1km程度歩くと、街の中心部である大聖堂広場 (Piazza del Duomo) に着く。大聖堂は修復工事中で半分ほどシートに覆われている。象の噴水 (Fontana dell'Elefante) という奇妙なデザインの噴水が広場の中心にある。再び雨が降り出した。傍らにある市庁舎の中に入る。豪華な馬車車が展示されている。雨が少し収まるのを待ってエトネア通り (Via Etnea) を北へ。イタリアのどこにでもあるような地方都市といった感じで、ロンプラに書かれているような「崩壊しかけの建築物、犯罪天国」というのは誇張し過ぎではと思う。「無秩序な交通」は同意するけどね。

12時30分、カターニャ中央駅に戻る。駅構内の出発案内を見る。12時35分発の列車は20分遅れとモニタ上に表示されている。ヴェネチア発の長距離列車のようだ。構内のバールへ。パスタ(ペンネのミートソース) 1.20EUR と オレンジジュース 1.30EUR で昼食。13時ごろ列車がやってくる。寝台車やクシェットばかりの編成。最後尾の車両(Treno Notte Comfort)に乗り込み、空室だったコンパートメントへ。カターニャまでにほとんどの乗客を降ろしてしまったらしく、空室だらけ。これならバスより快適だ。列車はのんびりとシチリア島南東岸を走り14時25分、終着駅のシラクーサ駅に到着。

Siracusa(Syracuse) - ITALY (シラクーサ、イタリア)

map-siracusa.png

駅舎を出ると、これがリゾート観光地の街並みかと疑うようなうらびれた街並み。建築途中で打ち捨てられたような建物や、無秩序に駐車された車。とりあえずホテルを探しに出かける。左(南東)へ。歩道(と思われるスペース)まで占領している車を縫ってでこぼこの石畳の道を歩く。駅付近に3軒程度の宿がある。もう少し環境のいいところは無いものかと、さらに街の中心方向へ。Piazzale Marconi まで来ると少しマシな雰囲気となる。半島のメインストリート ウンベルト1世通り (Corso Umberto I) 周辺を探して歩くが、それらしきものを見つけることが出来なかった。結局、駅前の Via Francesco Crispi の Albergo Aretusa へ。シャワー付きの部屋が1泊28EUR。2階の奥の部屋、3号室。窓を開けると、廃墟の隣の建物が見える。15時、荷物を置いて外へ。

1222-03.jpg
大聖堂 Cathedral / Duomo

再びウンベルト1世通り (Corso Umberto I)を通って旧市街のあるオルティジア島 (Isola di Ortigia) へ向かう。ウンベルト1世通りは歩道に赤じゅうたんが敷き詰められている。クリスマスだから特別に敷いているのだろうか。イルミネーションがあちこちに設置されたウンベルト橋 (Ponte Umbertino) を渡るとオルティジア島。島に入ると急に道路が狭くなる。細い道 (Via Camillo Benso Di Cavour) を通って大聖堂のある広場を目指す。沿道はレストランやファッション関連の店が軒を連ねている。ほとんど人が居ないがらんとした大聖堂広場 (Piazza del Duomo)。バロック様式の大聖堂が中央にあり、地方政府ビル (Palazzo del Municipio) や Palazzo Beneventano などのどっしりとした建物が周りを囲んでいる。そして大聖堂の前には「ちょっと表へ出ろ!」と喧嘩を売っているような格好の大きな聖人像がある。大聖堂の門は開いていない。そのまま広場を横切って、さらに南へ。海に出る。かなり強い風が西から吹いてくる。アレトゥーザ泉 (Fontana Aretusa) が眼下の窪みにある。パピルスの茂る小さな池の中央に淡水の泉が湧いているそうだ。フェンスの上よりパンのくずを与えるおばさん。パンに群がる真っ白なアヒルの群れ。そこへ狭い路地を車で乗りつけた新たなおばさんが登場。20cmくらいの長さの大きなパンを「ちぎらずにそのまま池へ」。石でも投げつけられたのかと、アヒル逃げ惑う。イタリアってすごい人が居るんだな...。

さらに南へ。島の南端を目指す。雲が西へ去って晴れてくる。夕日が建物をオレンジ色に照らしている。Lungomare Alfeo 沿いに南へ行くと、観光客が来る季節だけ開店するカフェやレストランの空っぽのテラスが並んでいる。最南端の城砦は門を閉ざしている。しばらく旧市街の路地をうろうろした後、16時ごろ大聖堂へ戻る。門が開いているので中へ入る。薄暗いロマネスク風のどっしりした感じの教会。身廊のクリアストーリー(高窓)はものすごく小さく、外の光はほとんど差し込んでこない。一部の柱は昔この地に建っていたアテナ神殿(ギリシア神殿)の円柱がそのまま流用されている。入り口門の柱はぐるぐるととぐろを巻いたバロック様式。ロンプラ曰く、「建築様式のメルティングポット」。

1222-04.jpg
オルティジア島南端。東岸 Lungomare L'Ortigia

日没までまだしばらく時間がある。アレトゥーザ泉から Via Castello Maniace を少し南に行った所にあるインターネットカフェ EUREKAWEB へ。1時間2.80EUR。17時、太陽が沈んで空が赤紫に染まっている。アレトゥーザ泉から東へ延びる Via Serafino Privitera に星型のイルミネーションが延々と灯されている。昼間見た路地の風景と一変して、幻想的な雰囲気だ。大聖堂広場へ。広場の南側には巨大なクリスマスツリーが設置されている。大聖堂や周辺の建物は特別なイルミネーションはされていない。そのため一層クリスマスツリーが引き立っている。少し北へ行き、アルキメデス広場 (Piazza Archimede) へ。広場中央のアルテミデ噴水 (Fontana di Artemide) を囲むように流れ星やきら星のイルミネーション。この街のオリジナルデザインだろうか。広場のピッツェリアで切り売りのピザを買う。1.00EUR。オルティジア島のメインストリート Corso Giacomo Matteotti を下って行くと急に土砂降りの雨が降ってくる。パテッセリアの軒先で雨宿り。30分くらい降り続く。エマニュエレ・パンカリ広場のバールでアランチーノ 1.00EUR とコーヒー 1.00EUR を食べ、星のイルミネーションが並んでいるウンベルト橋 (Ponte Umbertino) を渡り半島側へ。どの道路も渋滞で車が動かない状態。イタリア人って、食事時に一気に自動車で外に出かける癖でもあるのかな?

1222-05.jpg
大聖堂広場のクリスマス・ツリー Piazza del Duomo

ウンベルト1世通り沿いでシラクーサ駅のすぐ近くにあるスーパーでワイン 0.80EUR とツナ缶 0.60EUR を買う。19時過ぎ、ホテルに戻り部屋へ。ドアの前に立って鍵を鍵穴に差し込む。室内から異音。誰かがシャワーを浴びているような音が中からしてくる。侵入者が居るようである。ドアに耳を近づけて中の様子を探るが、水の音以外は聞こえない。5分ほどしてから、雨傘(これしか棒状のものを持っていない)を振りかざして部屋に突入。誰も居ない。なぜか床一面に水が溜まっており、天井から雨が降っている。上階から水漏れのようだ。バックパック外面がべたべたになっている。早速バックパックを水の当たらない場所に避難させ、フロントへ。フロントの姉ちゃんはロビーのような部屋で友人とビデオ鑑賞中。めんどくさそうに部屋を見に来て、上階へ登っていく。付いて行ってみる。三階の部屋のボイラーのスチームパイプがひび割れて水が大噴出しているようだ。とりあえず部屋を変えてもらう。新たな部屋(15号室)にはテレビが付いていた。(少しだけラッキー) で、洗面所で湯を出そうとするとこれが出ない。フロントの姉ちゃんに「湯が出ない」と言いに行くと、21時頃に兄ちゃんが来るからそいつに聞いてくれと...。ロビーに映画を見に帰ってしまった。で、夜間担当の兄ちゃんが来た頃、もう一度フロントへ。兄ちゃん「今日はとんでもない日だ。水が噴出すし、掃除しないといけないし...。」と。湯が出ないことを聞いてみると、シェア用のシャワーなどを試してみるが、結局あの水漏れした2階と3階の部屋しか湯が出ないようだ。それに、ボイラー停止でホテルの暖房も停止。ちなみに、この夜このホテルに泊まっていたのは私を含めて2名。とんでもない日なのは客の方も同様で、イタリア人的感覚はなかなか面白い。これも文化の特徴なんだろうね。

December 23,2003 (Tuesday)

Siracusa(Syracuse) - ITALY (シラクーサ、イタリア)

7時30分起床。暖房が止まって部屋の中は結構寒い。昨晩は小雨が降り続いていたようだが、今は曇っているようだ。洗面所は一瞬だけ湯が出るが、すぐに水状態。顔だけは洗える時間持ちこたえてくれた。8時30分、荷物を預かってもらいチェックアウト。シラクーサ駅へ。雨が降ってきて、土砂降りになる。プラットホームのバールで朝食。アランチーノ 1.30EUR、パイ 1.30EUR、紅茶 1.30EUR で朝食。雨が上がるまで時間をつぶす。9時過ぎ、雨が上がり晴れてくる。ネアポリス考古学公園 (Parco Archeologico della Neapolis) へ向かう。道路は先ほどまでの雨が洪水のように流れている。 マルコーニ広場から Via catania、Corso Gelone を北上して突き当りまで行くと考古学公園のフェンスの前に出る。横断歩道も無いような道を車が来ないタイミングを見計らって渡り、考古学公園の入り口 Viale Paradiso へ。(駅から15分、1km程度)

1223-01.jpg
ネアポリ考古学公園 ギリシア劇場
Teatro Greco, Parco Archeologico della Neapolis

フランス人の団体客が居る。それ以外は客はほとんど居ないようだ。入場料 4.50EUR 払って中へ。林の向こうにギリシア劇場 (Teatro Greco) がある。紀元前5世紀に岩場を刻んで造られたそうだ。確かに座席は石材を組み立てて作られたのではなく、巨大な岩を彫って造られたように見える。上のほうの座席はすでに土に返ろうとしている。現代の建築物は文明が消滅した後にこのように土に返ることが出来るのだろうか...。座席の間に鉄製の階段や手すりが付けられていて、景観を台無しにしている。中国人の金持ち(もしくは企業の出張と偽った観光ツアー?)の数人が個人ガイドを雇って歩いている。真冬でも観光客は居るんだな。ギリシア劇場の東隣に巨大な四角形のくぼ地がある。一旦入場口まで戻ってくぼ地へ。ネアポリス採石場 (Latomie della Neapolis) というらしい。巨大な洞窟 "ディオニソスの耳"洞窟 (Orecchio di Dionigi) が真っ暗な口を開いている。中に入ってみるが、単なる縦長の洞窟に過ぎない。入場門から外へ出て、南東へ行くとローマ円形競技場 (Anfiteatro romano) へ。こちらは小ぢんまりした楕円形の円形劇場。中央の舞台の部分は幾重にも車の轍が出来ている。イタリアにも暴走族が居るのかな。

一昨日アグリジェントで見たギリシア神殿といい、ココのギリシア劇場といいギリシア文明の遺跡を見に来ているようなものだ。それに保存状態もかなりいいように見える。

1223-02.jpg
マドンナ・デッレ・ラクリメ教会 Chiesa Madonna Delle Lacrime

ネアポリス遺跡公園から外へ出て、車道を北東へ。アルキメデスの墓近くに "Prometeo" と書かれた人間をさかさまに張り付けにした変った像がある。アルキメデスの墓はどれが墓なのか分からない。そこらじゅうに横穴が開いていて、遠くからでは分からなかった。カターニャ方面へ向かう道路 Viale teracati を横断して、病院の裏手へ。シラクーサ駅に到着する列車からもかなり目だって見える円錐形の建物へ向かう。途中、Piazzale San Marziano のサン・ジョバンニ教会 (Chiesa di San Giovanni agli Eremiti) へ。入り口を入ると「カタコンベ」と書かれている。入場門から中へ。受付があり、1時間に1回ガイドが付いた形式でしか中に入れないと言う。次は11時。 20分ほど、誰も居ない入り口ホールで待つ。で、時間になって受付に聞いてみると、「カタコンベは入れない。クリプトと教会だけなら入場料を払ったら見せてやる」と。客が一人で、有色人種だから、わざわざ時間をかける必要性も無いという態度がにじみ出ている。いい加減な国民性だ...。そこまでして崩壊寸前の教会を見たいわけでもないので、外へ出る。
円錐形の建物へ。市民ホールと思っていたが、ホールの入り口に "Madonna Delle Lacrime" と書かれている。教会のようだ。帰宅後調べてみると、マドンナ・デッレ・ラクリメ教会 (Chiesa Madonna Delle Lacrime) という名前だそうだ。中はがらんとした吹き抜けで、コンクリートで造った幾何学的内面が芸術的だ。新興宗教団体か何かだろうか。

1223-03.jpg
オルティジア島の旧市街 Old Town, Isola di Ortigia

自動車でごった返す新市街の住宅地を抜けてオルティジア島へ向かう。12時頃、アレトゥーザ泉の少し南にある中華料理屋 上海酒楼 (Ristorante Chinese Shanghai) へ。久しぶりに座ってまともな食事を食べたような気がする。广東炒飯 2.60EUR、魚香肉絲 4.00EUR、白飯 1.50EUR、茶 1.30EUR。日本の中華料理屋と値段的には同程度だが、茶が有料とは欧州らしい。その後、インターネットでもと思い数件隣のネットカフェ EUREKAWEB へ向かうが後10分で終了(13時〜16時は休業)ということだった。オルティジア島の旧市街を歩く。一昨日歩いたアグリジェントの旧市街は急な坂道ばかりだったが、こちらは平地なので非常に楽だ。島の西岸はルネッサンス様式など重厚な公的な建物が多いが、東岸はぼろぼろのアパートが多いようだ。そんな観光地の島内でさえ、さまざまなところに落書きが目立つ。エマニュエレ・パンカリ広場 (Piazza Emanuele Pancali) 付近で不良学生の集団に爆竹を投げつけられる。聞いたところによれば、このようなチンピラはイタリア人じゃなくてジプシーだそうだ。近づいてはならないと警告は受けていたが、向こうから近づいてくるのは如何ともしがたい。アポロ神殿 (Tempio di apollo) 北側のはやっていないショッピングセンターのようなところでトイレに行き、新市街(シチリア島側)へ。

1223-04.jpg
アルキメデス広場 の アルテミデ噴水
Fontana di Artemide, Piazza Archimede

16時ごろ再びネットカフェへ向かい、夕食は再び中華料理。旧市街、新市街の夜景を撮影しつつシラクーサ駅へ。19時、ホテルで荷物をピックアップする。フロントの姉ちゃんは今日も友人と映画鑑賞していた。駅へ。すでにローマ行き 1938列車は1番線に入線していた。ドアに鍵が掛かっているので乗車できない。しばらく待合室で時間をつぶす。待合室の隣の礼拝室には鉄道模型が走っていて、その中央にプレセピオが置かれている。駅員で鉄道模型が趣味の人が居るんだ。20時頃、E656型機関車が先頭に連結され車両に電気が灯る。7号車の Treno Notte Comfort 車両に乗車する。カターニャからシラクサまで乗ったときと同様の車両で、新しいクシェット車両だ。

列車は20時40分ちょうどにシラクーサ駅を出発、終着駅ローマ・テルミニ駅を目指してゆっくりと走り出した。私が乗ったコンパートメント No.11〜16 にはイタリア人父子が乗り込んできて3人。カターニャから若者が1人乗り込んできた。列車の窓には時折強く雨がたたきつける。天気予報では、前線はかなりのスピードで東に進んでいるので、そろそろ天気が回復してもいいはずなんだけど...。

D1938列車
到着 出発 距離
  Siracusa 20:40 0km
  Augusta 21:00 21:02
  Lentini 21:23 21:26
  Catania Centrale 21:52 22:07 87km
  Acireale 22:17 22:19
  Giarre-Riposto 22:30 22:32
  Taormina-Giardini 22:47 22:50
  Messina Centrale 23:35 23:53
  Messina Marittima (シチリア島)
  Villa S.Giovanni (イタリア半島) 1:18 1:38
  Paola
  Salerno
  Napoli Centrale 6:01 6:13
  Formia 7:06 7:27
  Latina 8:05 8:06
  Roma Termini 8:46

December 24,2003 (Wednesday)

Napoli(Naples) - ITALY (ナポリ、イタリア)

6時少し前腕時計のアラームが鳴る。何処かの駅に到着した。サレルノ駅 (Salerno) に運転停車しているようだ。オレンジ色に照らされたプラットホームには誰も居ない。6時30分、ナポリ中央駅 (Napoli Centrale) 着。下車。何十人かの乗客がプラットホームに降り立ち、まだ真っ暗な街に消えていく。前線が通過し、急激に寒気が地中海まで流れ込んでくると天気予報で言っていたが、まさしくその通り。凍えるように寒い。荷物預かり所へ向かう。開いているが、預け入れは8時かららしい。仕方ないので待合室で8時まで時間をつぶす。この待合室、切符を持っている人間しか入れないようで、たまに駅員が切符を確認しに来る。7時過ぎに無料新聞(Metroだったと思う)が配達される。8時、荷物預かり所で荷物を預ける。3.00EUR。駅構内のバールへ。クロワッサン 0.80EUR、紅茶 1.00EUR で朝食。

ポンペイ遺跡へ行こうと思う。ロンプラによればチルクムベスビアナ鉄道 ナポリ駅 (Stazione Napoli della S.F.S.M. Circumvesuviana) から直通列車が出ているようだ。中央駅を出て駅前のガリバルディ広場 (Piazza Garibaldi) を西へ。突き当たりの道を少し南に行ったところにチルクムベスビアナ鉄道の駅があった。コンコースには巨大なプレセピオが飾られていた。ポンペイまでの切符を買う。2.20EUR。地下のプラットホームへ。テレビ表示でソレント行きと出ている列車に乗り込もうとすると、向こうの方に居た車掌が "その列車じゃない" のような手振りをしている。どうもテレビ表示が間違っているようで、隣の番線の列車が正解らしい。車体に盛大に落書きの施された 21列車は8時39分ナポリ駅出発。ほんの1分ほどでイタリア鉄道のナポリ中央駅(地下 Napoli Collegamento FS)に停車。わざわざナポリ中央駅からチルクムベスビアナ鉄道の終着駅まで歩く必要は無かったわけだ。この駅から沢山の乗客が乗ってきて満員となる。軌間950mmの狭軌鉄道を最高速度90km/hの車両が軽快に住宅の間を縫って走っていく。(日本のJRは1067mmの狭軌、新幹線や欧州・中国は 1435mmの標準軌。950mmはいかにも不安定そうに見える...)落書きだらけの駅や、ベスビオ山が間近に見える畑の中にあるような駅に次々と停車し、Torre Annunziata 駅でサルノ行きの路線と分かれるとすぐにポンペイ・スカビ・ビラ・ミステリ駅 (Pompei Scavi - Villa Misteri) に到着。9時15分。

Pompeii - ITALY (ポンペイ、イタリア)

1224-01.jpg
ジオベ神殿とベスビウス山 Tempio di Giove and Mt. Vesuvio

私のほかには数人が下車したが、ポンペイ遺跡って人気無いのかな...。プラットホームの東端のトイレへ。駅舎を出て、右(東)へ行くとすぐにポンペイ遺跡の入場口がある。数人の個人客がいるだけの閑散としている窓口で入場券を買う。10EUR。案外高いなぁ。韓国人大学生(?)のグループが改札口付近にたむろしている。遺跡の中へ。マリーナ通り (Via Marina) を北東へ。聖堂 (Basilica) と呼ばれている広場に出る。屋根が完全に消滅して外壁と内陣の柱が残っているだけ。残骸は処分されてしまったのだろうか...。フォロ (Foro) と呼ばれている広場へ。今にも雪が降り出しそうなどんよりした曇り空。北の方には雪をまとったベスビオ山 (Vesuvio) が寒々しそうに見えている。数人観光客が居るだけのだだっ広いフォロ(広場)を抜けてアボンダンザ通り (Via dell'Abbondanza)を下る。はるか向こうまで誰も居ない廃墟の道が続いている。現代風に付けられた番地表示が 11, 13, 15, ... と増えていくだけで、似たようなレンガ造りの廃墟の住宅跡が立ち並んでいる。紀元前後の街の遺跡だとは信じがたいほどキッチリした都市だ。イタリアの諸都市の路地裏は今でもこのような崩壊しかけの家々が立ち並んでいるし、中近東の片田舎ではこれ以上に荒れ果てた人の住む町もある。

1224-02.jpg
牧神の館 アトリウムに残るブロンズ像 Casa del Fauno

ずっと坂を下って行った南側には回廊に囲まれた大アリーナ (Grande Palestra)、小ぢんまりした円形競技場 (Anfiteatro)がある。これらの特別の建物を除いて、見所は一般住宅の廃墟が大半を占めるようだ。一般住宅といっても金持ちの豪邸らしく中庭に回廊や池を配している。とうとう雪が降り出した。ポンペイ旧市街中心のフォロの方へ戻る。団体ツアー客を数組見かける。この寒い気候の中、ツアーが主催されているとは...。一通り遺跡内を見て周り、これ以上寒風(吹雪)に晒されるのも辛いのでナポリに帰ることにする。日本人団体ツアーをフォロで1組、入場門のところで2組見かける。ロンプラの記述はものすごく大雑把(図書館で見た歩き方の記述はもう少し細かい)なので、ガイドの説明付きもいいかもしれない。なんと言っても、余りに広い旧市街なのでどこが見どころか分かりづらい。

ポンペイ・スカビ・ビラ・ミステリ駅へ戻る。切符 2.20EUR を買い構内のバールでパイのようなパンを1個 (1.20EUR)買い列車を待つ。10時37分発の列車は20分近く遅れてやってきた。列車は50%程度の乗車率だったが、途中から沢山の人が乗ってきて満員となる。チェロやバイオリンの大道芸人が乗り込んできてチップを集めていく。満員の列車内で迷惑なことだ...。

Napoli(Naples) - ITALY (ナポリ、イタリア)

11時35分ごろ、ナポリ・コレガメント・FS駅 (Napoli Collegamento FS) で下車。ほとんど全ての乗客がここで下車し、プラットホームから中央駅へ続く長い通路は大混雑。中央駅の切符売り場へ。相変わらず長蛇の列。20分ほど並んで順番が回ってくる。明後日のローマ行きの切符を買う。9時30分発のユーロスター EUROSTAR の2等車。イタリア鉄道新鋭車両の ETR500 であることの確認も忘れずにする。22.21EUR。駅構内のマクドナルドで昼食。ビッグマック+フレンチフライ 3.50EUR、紅茶 2.00EUR、サラダ(Vegetariana) 2.20EUR。

1224-04.jpg
クマーナ鉄道 コルソ V.E.駅 落書きだらけの電車
S.E.P.S.A. -Ferrovia Cumana Corso.V.E Stazione

駅前のガリバルディ広場 (Piazza Garibaldi) を少し歩いてみる。異様に黒人やアジア系が多く、道路上にビニールシートや段ボール箱を広げて物を売っている。広場から北へ伸びる道沿いの建物はかなりすさんだ雰囲気で、安宿が多いとロンプラには書かれているが近寄りがたい雰囲気もある。中央駅へ戻り地下通路のガリバルディ駅 (Napoli Piazza Garibaldi) へ。切符 0.70EUR を買い故障した自動改札を通り抜け、刻印機で切符の刻印をする。ちょうど列車がやってきた。行き先はよく分からないが、進行方向(西向き)はあっているようだ。(R7694列車 Napoli Campi Flegrei 経由 Pozzuoli Solfatara 行き) イタリア鉄道の ALe 724 型電車に "metronapoli" というロゴを入れただけの車両。他の都市のように「地下鉄が無いと格好がつかない」ために普通の鉄道路線の一部を「地下鉄という名前」にしただけのように感じる。Cavour, Montesanto, Amedeo の3駅に停車して地上駅のメルジェリーナ駅 (Napoli Mergellina) 着。12時56分。

地下鉄専用の駅の割りに豪華な造りの駅舎を出る。目指すユースホテル (Ostello Mergrllina) へはあらかじめ調べておいた地図に従って行く。実際は、線路を挟んだ駅舎の反対側にあった。プラットホームから建物が見えている。フロントへ行き、IBN で予約したとプリントアウトした確認票を見せる。部屋には入れないので、荷物は地下の倉庫に置くことが出来るそうだ。早速地下へ。照明のスイッチがどこにあるか分からず、かなり薄暗い階段を下りて倉庫へ。棚から何かが飛び出してくる。猫だ。どうも荷物置き場はネコのドミトリーになっているようだ。15時に部屋に入れるそうなので、それまで付近を見に行くこととする。

1224-03.jpg
メルジェリーナ港 Porto Mergellina

鉄道の高架をくぐってメルジェリーナ駅前へ。右(南)へ。5分ほど歩くと山側にピッツェリアやトラットリアが並んだ広場 (Piazza Sannazzaro) へ。夕食によさそうなので覚えておくこととする。その先はすぐに海。漁港・メルジェリーナ港 (Porto Mergellina) となっている。堤防の向こうには雲をまとったベスビオ山 (Vesuvio) が見えている。天気は急速に回復して、今朝までの悪天候がうそのように晴れ渡っている。(ただし、寒い) 港沿いの道 (Via Francesco Caracciolo) には水揚げした魚を売る露天が数店ある。エビ、イカ、タコ、アサリやシジミなどの馴染み深い魚介類を売っている。海沿いの道を Piazza della Repubblica まで行く。フランスやアメリカ領事館があるため、カラビニエリの大型バンが警戒に当たっている。山の方へ向かう。小さな道を行きつ戻りつ、坂道を登っていく。どこまで登っても街が続いている。小さな駅があった。クマーナ鉄道 コルソ V.E.駅 (S.E.P.S.A. -Ferrovia Cumana Corso.V.E Stazione)。駅舎に入ってみる。ナポリ中央駅へ行く路線では無いようだ。女性の駅員が駅舎内を掃除している。プラットホームへ出るとちょうど銀色の列車が滑り込んできた。地肌の銀色が分からないくらいに落書きされた列車。芸術的にさえ見える。さらに山の上を目指して歩くが、特に珍しいものがあるわけではない。15時30分頃、ユースホステルに戻る。フロントへ行くと、鍵は部屋に1本ずつで既に部屋は開いているそうだ。2階通路の一番奥にある125 号室へ。窓からはベスビオ山が見える。室内には誰も居ないが、既に3つのベッドが埋まっている。そこへ日本人らしき人が入ってきた。東京から来たシェフの K氏。イタリア北部から自転車で半島を縦断しているそうだ。彼によれば、この部屋にはもう一人日本人が居るらしい。しばらくするとその日本人も帰って来た。東京から来た電気関係のエンジニアらしい。K氏が地下のランドリーへ洗濯に行く。エンジニア氏はイタリア人の友人の家に招かれたので今夜は外泊するらしい。(荷物だけYHに残して)
溜まっていた切符やレシート類を整理して、残りの現金を確認する。その後、地下のランドリーを見に行く。明日は私も洗濯をしなければならないのでその下見も兼ねて...。

ランドリーにはK氏とアメリカ留学中の日本人女性、YHのスタッフの兄ちゃんが居た。2台あるうちの1台しか使えない上、洗濯から乾燥まで一通り行うのに1 時間30分くらい掛かる。えらくスローな洗濯機だ。K氏の洗濯が終了し、留学生氏が洗濯を終わるまで待って3人で夕食に出かけることとする。20時頃、外へ。適当なトラットリアを探すが見当たらない。昼過ぎに見つけたピッツェリアなどが集まる広場 (Piazza Sannazzaro) へ。かろうじて1軒だけオープンしている。入り口には "Buon Natale" (=Merry Christmas) と書かれているピッツェリア。中へ入る。沢山の客でにぎわっている。メニューを持ってきてもらうと、ピッツェリアなのにピザが載っていない。店員曰く、「祝日の特別メニューだ!」。ボンゴレ・ビアンコ (6.40EUR) とアサリの酒蒸し(1皿を3人で分ける)、ハウスワイン (0.75リットルで5.00EUR) 1人当たり合計14EUR。さすがクリスマス料金だけあって高いが、かなり美味しかった。